「やりっぱなし」を脱却し、未来に繋がる組織へ

9.最後まで成し遂げる

中途半端な仕事を拒み、期待以上の成果を上げ、信頼を積み重ねます。
自己流に固執せず、業務プロセス・報連相・守破離を積極的に取り入れ、堅実・大胆にプロジェクトを成し遂げます。

はじめに

 この記事は

「最後までプロジェクトをやり切りたい」
「自分たちの成果や経験を組織に還元したい」

 このように、自分たちの成果に最後まで貪欲であり続けたい方。その成果を誰かの役に立てたい方。
そんな想いを持つ方に贈る記事です。気持ちはあるけれど失速しがちな方も、メンバーの失速に悩むリーダーも、誰かのために最後までやりきりたいという想いが少しでもあれば、ぜひお読みください。

 筆者も失速してしまった経験があるからこそ、失速せずにプロジェクトを最後まで成し遂げるために”大事な3か条”をお伝えします。

0. なぜ失速してしまうのか?

 では、ここからはまず、失速してしまいやすいタイミングを分析し、なぜ失速してしまうかを考えてみましょう。

 前提として、プロジェクトには、進めるにあたり以下の5つの重要なプロセスがあります。
 (参考:プロジェクトマネジメントに関する記事:https://apro-c.co.jp/2022-0903-honda/)

  1. プロジェクトの目標を決めるとき。(目的・目標を設定する)
  2. 計画を立てたとき。(計画を策定する)
  3. 目標に向かって頑張っているとき。(実行する)
  4. 目標を達成したとき。(測定する)
  5. なぜ目標達成できたか考えるとき。(分析し、計画を改善する)

 皆さんはこの5つのプロセスの中で、どこで失速しやすいですか。

 私は、今までの経験上、最後の4・5番の目標達成後に失速してしまう方が多いのではないかと考えています。

 目標を達成したり、ひと段落ついたときこそ、安心感や達成感で気が抜けてしまって、どうしても終わった気になり、失速やすいのです。

 しかし、これらの5つのプロセスを見ていただいて分かる通り、プロジェクトには目標達成後も歩むべきプロセスがあり、目標達成をすることがプロジェクトの終わりを指すとは限らないでしょう。

 そこで、主にプロジェクトにおいて目標達成後という場面を想定し、失速せずにプロジェクトを最後まで成し遂げるために、重要なことは何かを考えていきます。

1.最後まで成し遂げることは、単なる綺麗ごとではない

 とは言いつつも、目標達成をした後も、最後まで成し遂げる。

 頭では大事だと思っていても、綺麗ごとに聞こえてしまい、腑に落ちない方もいるのではないでしょうか。 

 そこでまずは、個人の視点で目標達成後も最後まで成し遂げる意義について考えてみたいと思います。

最後まで成し遂げてこそ、成長できる

 想像してみてください。

 なぜ目標達成出来たかが分からないプロジェクト。

 そんなプロジェクト経験は自信に繋がるのでしょうか。プロジェクトを終えた瞬間は達成感で自信があっても、時間が経つと実はたまたま上手くいっただけではないかと心配になったりしませんか。上手くいった気はするけれど、そのプロジェクトを通して得た経験や学びを明確に自覚することが出来ないと大変勿体ないのではないでしょうか。

 私も初めてリーダーを務めたプロジェクトは、周囲からの評価も良く上手くいった実感はありながらも、なぜ上手くいったのかを考えずに終えてしまいました。すると自信が持てないまま、次のプロジェクトでも周囲から期待されることがプレッシャーに感じてしまい、苦悩した経験があります。

 このように、最後まで成し遂げずに失速してしまうと、成長するチャンスを知らぬ間に逃してしまうかもしれません。

 しかし、逆説的に考えると、目標達成後も最後まで成し遂げ、成功要因と課題分析を自分自身にも行うことが出来たら、全てのプロジェクト経験が血肉となり、様々な経験を大きな成長機会に変えられる人になれるはずです。

 このように、最後まで成し遂げたからこそ得られる、成長機会を想像し、組織に対しても自分に対しても常に誠実に努力し続けること。それが、まず個人として最後まで成し遂げる一つの原動力になるのではないでしょうか。 つまり

最後まで成し遂げてこそ得られる、成長機会を想像する

ことが重要なのです。

2. 今に感謝し、目標の先を思い描く

起こりうる意識に向き合う

 個人の成長機会としても、最後まで成し遂げたいと思えたとしましょう。

 しかし、それでもこんな意識が頭をよぎったりしませんか。

 「目標達成したからもういいじゃないですか。頑張ったんだから休ませてくださいよ」

 逆に、自分自身が最後まで成し遂げたいと思っていても、目標達成後にプロジェクトが失速するとき、こんな意識やメンバーの言葉がきっかけになったりするのではないでしょうか。

 私も恥かしながら、最後まで成し遂げようとするリーダーに対して、このように思っていた時期がありました。目標達成の安堵感に浸っている状態で、視野が狭くなり、頑張ったのにこれ以上求められても…と思ってしまっていました。

 ですが、このような意識自体は起こりうるものですし、この意識に対して、なぜ目標達成後も頑張る必要性があるのかを答えることが、重要なのではないでしょうか。

当たり前を見直してみる

 上記の目標達成後も頑張り続けることに疑問を抱く声に対して、糸口になるのは、当たり前を見直すことだと思います。

 案外忘れてしまいがちですが、所属しているプロジェクト自体が、きっと今までの沢山のプロジェクトやそこに携わった人達の経験や学びといった資産の上で成り立っているはずです。

 そんな、自分のプロジェクトだけでなく経験や学びという資産を、組織や他のプロジェクトに還元してくれた存在に感謝と尊敬の想いを持つ。

 このように、まずは今の当たり前の環境に感謝と尊敬を大切にすることで、目標達成後も、プロジェクトで得られた経験や学びという資産を可視化し、伝えていく準備をしていく必要性を実感できるようになるのではないでしょうか。

目標の先にあるもの

 今ある環境に感謝と尊敬の想いを持ち、経験と学びという資産を還元するために最後まで成し遂げる意識を醸成する。

 これは重要でありながら、実践で意識しやすい言葉にし、意識を共有することも大切です。例えば…

 「プロジェクトの目標は○○だけど、目標達成した後も未来のプロジェクトの支えになれるよう、目標測定と分析までが私たちの責任だよ」

 といった形で、目標達成を前提に、最後まで成し遂げることをミッションとして設定することで、目標の先にあるものを互いに意識することが出来ます。つまり

今への感謝を糧に、目標達成を前提に、最後まで成し遂げることをミッションとして設定する

ことが重要なのです。

3. やりっぱなしを防ぐ仕組みを構築する

失速はやりっぱなしを意味する

 ここまで、失速せずに最後まで成し遂げることの意義についてお話してきましたが、逆に失速してしまった場合、どのようなリスクがあるのか。そんな組織の視点で、最後まで成し遂げる意味を考えていこうと思います。

 私はそのリスクは一言で表すと「やりっぱなし状態」に陥ることだと思います。

 実は世の中には、最後に失速し、「やりっぱなし状態」になっていることはたくさんあります。

 例えば、私はイベント事業の評価分析に長期インターンで携わっているのですが、多くの企業が、イベントは成功したと記載していました。しかし、長期的にどのような成果に繋がったのかの測定や、なぜ成功したのかは分析はされずに、中途半端に終わっています。そして、この状態では、次の事業戦略を練るための十分な判断材料が整理されておらず、プロジェクトの価値は半減しまうのです。

 このように客観的に実績やその要因を分析し、プロジェクトを評価しようとする視点に立ってみると、目標達成後の失速こそ、中途半端な「やりっぱなし状態」を生んでいることが見えてくるのではないでしょうか。

やりっぱなしを仕組みで防ぐ

 そこで、この「やりっぱなし状態」を防ぐために、私は仕組みを構築すること、やりっぱなし状態を防ぐ箱を用意することが重要だと考えます。

 多くの「やりっぱなし状態」の要因は、中途半端な状態になっていることへの自覚のなさです。

 私は現在、en-courageというキャリア支援団体の部署責任者で引き継ぎ業務を行っていますが、初めは目に見えやすい成果のみを記録していましたし、それ対して危機感はありませんでした。しかし、それでは次の代の戦略策定の判断材料として不足していることに、後輩たちが入ってきてからやっと痛感したのです。

 その反省を基に以下の施策評価の仕組みを構築しました。

 この仕組みでは、①成果を長期的に測定する、②成功要因・課題分析を行う、の2点がポイントになります。目標達成に向けて頑張っている瞬間では目を向けにくい項目を可視化することで、「やりっぱなし状態」を防ぐ。すなわち

「やりっぱなし状態」の傾向を分析し、それを防ぐ仕組みを自ら構築する

ことが大切なのです。

最後に

 失速せずにプロジェクトを最後まで成し遂げるために”大事な3か条”を以下にまとめます。

  1. 最後まで成し遂げてこそ得られる、成長機会を想像する
  2. 今への感謝を糧に、目標達成を前提に、最後まで成し遂げることをミッションとして設定する
  3. 「やりっぱなし状態」の傾向を分析し、それを防ぐ仕組みを自ら構築す

 最後まで成し遂げることで、個人としては勿論、今への感謝を糧に、誠実に組織の進化を牽引できる存在に。リーダーであるかないかに関わらず、常にそんな人財になれるよう、今もこれからもプロジェクトの最後の瞬間まで全力で取り組み続けたいと思います。

この記事の著者/編集者

本田花   

早稲田大学文化構想学部卒。大学3年時までは、中高生の留学支援団体であるAFS日本協会神奈川支部の学生代表として、コロナ禍の組織再生に奮闘。大学4年時には、日本最大のキャリア支援団体en-courage早稲田支部において、面談部署の責任者としてキャリア面談サービスの設計・研修体制の改善に挑戦。
上記の経験における多くの人や価値観との出会いを糧に、社会人としては、総合コンサルティングファームにて「他者に還元出来る知見や経験に溢れた利他的なコンサルタントになる」ことを志している。

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 上野美叡

    2023年02月24日

    「最後まで成し遂げる」ということは、目標達成で終わりとするのなく、そのあとの目標測定と分析までだということが、まず、はっとさせられました。「目標達成したからもういいじゃないですか。頑張ったんだから休ませてくださいよ」まさに、試験後などは同じように思っていました。しかし今後の学習のためにも、目標測定と分析まで行うことの大切さを、改めて考えました。

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