感謝を糧に、自他を豊かに

私たちが社会で生きていけるのは、周りの人・物事のおかげです。相手から感謝される人は自分自身が周りに感謝している人。すべてに感謝し、豊かな人間関係を構築し、社会貢献していきます。

クレド1.周囲の人、物事全てに感謝

はじめに

 「今ある環境に感謝し、感謝を周囲に伝え続ける人

 そんな人の元で活動したい、そんな人でありたいと思う方も多いのではないでしょうか。

 しかし、この「今ある環境に感謝し、感謝を周囲に伝え続ける」ことは大切だと分かっていても、今の当たり前に驕らずに、感謝を言語化し伝え続けていると、自信を持って言える人は案外少ないのではないでしょうか。

 私も実際、大事だと分かっていても、目の前のことに追われて今ある環境を見つめ直すことを後回しにしてしまう。いつも一緒に活動している仲間だからこそ、感謝を伝えなくても感謝は伝わっていると思いたくなってしまう。そんな風にしてしまい、後々反省することがあります。

 そんな大切だと思っていながらも、ついつい後回しにしてしまう感謝。だからこそ、この記事ではそんな感謝がもたらす価値・有用性を考察することで、読者の皆さんに感謝の意義を実感してもらいたいと思います。

周囲の人・物事に感謝出来た時、人は成長する

経験談:人生を変えた感謝への気づき

 実は、中学時代の私は、全く勉強しておらず補習常連組として、勉強も部活も様々なことに無気力な人間でした。そのため、周囲の先生からは「本田さん、課題やった?」と廊下ですれ違う度に聞かれ、苦手科目に関しては先生から”本田さん用”の特製のプリントを作っていただくほどでした。

 そんな無気力状態でありながら、中高一貫校なこともあり、先生方の手厚いサポートのお陰で何とか高校に進学しました。その時に、一緒に安堵して下さりながらも、私を本気で心配している先生の表情を見て、ふと

「自分が頑張らないのは、申し訳ないな」

と思ったのです。それは、私への心配で押しつぶされそうな先生の表情を見た時、普段は口酸っぱく勉強を促してくる先生方は、どうにかして私を勉強させようと、私のためを思って本気で向き合って応援してくださっているのだと気づいたからでした。つまり、時間はかかってしまいましたが、根気強く向き合ってくださる先生方に恵まれた今の環境が当たり前ではなく感謝すべき環境なのだと気がつくことが出来たのです。

 そして、その気づきは、私が無気力から脱却する大きなきっかけになりました。当たり前のことですが、今の自分は、自分だけで成立している訳ではなく、自身を支えてくれている周囲の人・物事に恵まれたからこそ、成り立っています。だからこそ、勝手に自己完結して自分の可能性を諦めることは、自分を支えてくれている人たちに申し訳ないと思えるようになりました。

 その後、人が変わったように勉強に取り組み、成績も学年下位20%から上位20%にまでどうにかして辿り着くことが出来たのは、確実にいつも背中を押してくださり、時に厳しい言葉をくださる、周囲の先生方への感謝の想いがあったからでした。

 その意味で、感謝は人を成長させるきっかけになる。そんな価値を秘めていると思うのです。

感謝に気づくには ー認識的想像力を駆使するー

 だからといって、今ある環境は当たり前に感じてしまって、感謝の想いを意識することは難しいと思う方もいるでしょう。そこでここからは、感謝に気づくための準備について考えてみたいと思います。

 先ほどの経験談で考えてみると、私が感謝に気づいたのは、私を本気で心配してくださっている先生の表情を見た時でした。私以上に私のことを心配しているような先生の表情から、どんな気持ちでどんな想いで、私に向き合ってくださっているんだろうと想いを巡らせたときに、いかに自分が支えてもらっているのかに気づきました。

 これは、一般化すると「認識的想像力」という言葉に言い換えられます。ただイマジネーションを働かせるだけの想像力ではなく、相手がどのような立場・心境・状態にあるかを慮って認識しようと努めて想像する力である「認識的想像力」が大切なのです。

 認識的想像力を駆使し、周囲の人、物事がどのような立場・心境・状態であるかを意識的に考えてみる。そのようにして、相手を認識しようという努力に挑戦してみると、意外と見えていなかった、自身が感謝すべきものが見えてくるのではないでしょうか。

感謝を体現し、自他を豊かに

 先ほどまでは、感謝が成長のきっかけになり得ること、そんな感謝にいかにして気づけるかという、個人の文脈での感謝の価値について紹介しました。そこで、ここからは組織やチームでの活動の中で、感謝の価値はいかなるものかという、組織の文脈で感謝の価値について考えてみたいと思います。

経験談:リーダーこそ感謝を糧にする

 私は現在、en-courage早稲田支部というキャリア支援団体で、コアサービスを担う部署責任者として活動しています。しかし、部署責任者を他の方から引き継ぎ、自身が責任者になってから日が浅い時期は、苦悩し責任者を辞めることも考えるほどでした。

 そんな私の悩みを聞いていた、部署のあるメンバーが会議中に5分欲しいと言って、ある発言をしてくれました。それは、他のメンバーたちに「部署の一員という自覚を持って主体的に動き、リーダーである私(本田)の負担を減らしてあげてほしい」というメッセージでした。

 それまでの私は、自分の今いる環境が良くないものだと決めつけ、部署や部署のメンバーから逃げたりマイナスに見えるものを遠ざけることばかり考えていました。しかし、そのメンバーの発言を聞いた時、実は今の環境は悪いものばかりではなく、メンバーに支えられている温かい環境だと気がついたのです。

 加えて、そもそも10数名メンバーの時間を頂き、責任を持って部署を率いるリーダーという立場で、活動させてもらっている環境自体にも感謝すべき要素が溢れているはずで、それを無下にしてはいけないと思うようになりました。

 それからは、部署のメンバーは勿論、自身を部署責任者として認めてくれるメンバーや、今の環境そものに感謝する気持ちを大切にするようにしました。そして、その感謝の気持ちを糧に、部署のメンバーの誰よりも本気で活動に向き合い続けました。目標を見失いそうになったり、メンバーとの向き合い方が分からなかったり、苦悩し立ち止まりかけたことも多々ありましたが、それでも感謝を糧に、恵まれた今の環境を誰よりも最大限活用し、今の一瞬一瞬を大切にするようにしたのです。

 すると、停滞していた私の部署は少しずつ動き始め、メンバー・組織の状態が良くなっていきました。今も壁にぶつかり悩むこともありますが、感謝を糧に今に全力で向き合うことそんな納得できる今に裏打ちされた「全幅の人生」を実現する糧になるのが、感謝なのではないでしょうか。

感謝で組織を支えるリーダーに

 その上で、リーダーにとって感謝は有用性が高いものですが、組織のメンバーにも感謝は価値あるものだと考えています。

 それも、既述の部署責任者としての活動を通して考えたことですが、メンバーの価値を最大化する鍵こそが感謝を伝えることだと思っています。

 例えば、大変な仕事を引き受けてくれてメンバーに対して感謝を伝える場合。

  1. 「大変な仕事を引き受けてくれてありがとう」
  2. 「普段から先回りしてスピード感を持って仕事を成し遂げてくれる信頼があるからこそ、任せられます。いつもありがとう」

 この2つでは、2つ目の方が伝えられた際に、嬉しく感じませんか?

 では、なぜ嬉しく感じるのか。それは、2つ目は「私にしか言えないあなただけに向けた感謝」だからです。普段から一緒に活動し、いつも見ている仲間だからこそかけられる言葉。そしてありきたりな言葉ではなく、その人にだけ向けられた言葉。そんな感謝はより相手に伝わるはずです。

 そして、そんな個別化された感謝は、メンバーにとっては他の誰でもない自分がそのチームに所属する意味づけにもなるのではないでしょうか。

 一人ひとりが組織にとってかけがえのない存在であることを、個別化した感謝を通して伝えることが出来た時、メンバーと豊かな人間関係を構築し、より価値を提供できる組織への進化する一途になるはずです。

 だからこそ特にリーダーは、個別化された感謝でメンバーがその組織にいる意味を裏付け、メンバー一人ひとりをかけがえのない存在として認識させることが大切なのです。

 そしていつかは、メンバー同士が互いに個別化した感謝を伝え合う組織を作っていくこと。そんな組織作りを目指して、私も日々奮闘していきたいと思います。

最後に

感謝が豊かさを生む

 ここまで、感謝が自他をいかに豊かにする、価値あるものなのかについてお話してきました。私の人生一つとっても、感謝は自身の人生を彩ってくれています。

 例えば、高校時代に学びに向き合うようになったきっかけに、先生方への感謝に対する気づきがありました。

 また今、私がen-courage早稲田支部での部署責任者としての活動している糧には、メンバーや顧客への感謝があります。加えて現在、A&PROで学び、研修の運営メンバーとして活動出来ているのは、森口さんをはじめとするA&PROの関係者の方々や、一緒に学び続けている運営メンバーへの感謝があるからこそです。

 また、このように今ある活動に全力で取り組みたいと思えるのは、いつも支えてくれる家族や友人を含めた、今まで支えてくださりお世話になった方への感謝の気持ちを、今一瞬一瞬を大切にすることで体現したいという想いです。感謝を大切に、感謝を伝えながら、自他に還元し、発展させていくことが重要です。

 そしてそれは、自他ともに「一人ひとりがかけがえのない存在」だという認識があるからこそです。一人ひとりを尊重し、自他を感謝で豊かにする。そんな周囲を受容し、尊重する気持ちを意識しながら、以下の記事のポイントを通して、自他を豊かにする自分らしい感謝の在り方を皆さんにも考えてみていただければと思います。

感謝を糧に自他を豊かにするためのポイント

 最後に、今回の記事のポイントを以下にまとめます。

  • 自分自身を豊かにする感謝
    • 感謝は人の成長のきっかけになる
    • 感謝に気づくには、「認識的想像力」が重要
  • 組織や周囲を豊かにする感謝
    • 感謝を糧に全力を尽くすことで、組織を支える
    • 個別化された感謝で、メンバー一人ひとりが組織にとってかけがえのない存在であることを伝える

この記事の著者/編集者

本田花   

早稲田大学文化構想学部卒。大学3年時までは、中高生の留学支援団体であるAFS日本協会神奈川支部の学生代表として、コロナ禍の組織再生に奮闘。大学4年時には、日本最大のキャリア支援団体en-courage早稲田支部において、面談部署の責任者としてキャリア面談サービスの設計・研修体制の改善に挑戦。
上記の経験における多くの人や価値観との出会いを糧に、社会人としては、総合コンサルティングファームにて「他者に還元出来る知見や経験に溢れた利他的なコンサルタントになる」ことを志している。

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 髙橋開

    早稲田大学大学生 2022年08月26日

    自分自身もエンカレッジで活動する中で感謝をするには、まず相手を深く知ることが必要だと感じており、それがまさしく本田さんが書かれていた『認識的想像力』だと思います。
    また、エンカレッジというボランティアで活動しているからこそ「感謝」の重要性及び有用性は他のコミュニティに比べて高いとこの記事を読んで感じました。まずは、自分が所属するチーム及び§から感謝の気持ちをお互いに体現し合う文化を作りたいと思います。

  • 香山 渉

    2022年08月27日

    本田さんの記事を記事を読んで、改めて"感謝"の持つ力と奥深さに気づきました。周囲の人たちへの思いを体現することに加え、成長のきっかけになる部分から、自身が変わっていくことの決意表明に近いものでもあると感じました。
    本田さんいつもありがとうございます。

  • 上原久実

    2023年03月17日

    本田さんの記事を拝読する中で、「個別化された感謝で、メンバー一人ひとりが組織にとってかけがえのない存在であることを伝える」といったところに、非常に深い気づきを得ました。
    特にエンカレッジの活動においては、自分の認識と相手の認識をすり合わせる中で、大ゴールまでの立ち位置を振り返りつつ、プロセスを称え合うという観点で非常に参考になりました。
    支部における感謝の文化だけでなく、賞賛の文化などにおいても還元していけたらと感じました。ありがとうございました。

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