完璧主義から最善主義へ "完璧主義なリーダーに贈るプロジェクトマネジメントの心持ち”

7月の研修:PJマネジメント(基礎1)

はじめに

 プロジェクトマネジメントは完璧主義ではなく、最善主義で行うべき

プロジェクトの本質を学んだ私はこのように考えます。

完璧主義の私はこれまで自らプロジェクトを立ち上げる際、完璧な計画を徹底的に準備して自信満々にメンバーに「この方針でいけば問題ない!」と伝えていました

一方で、恥ずかしながら計画がうまくいくことはほぼ有りませんでした。期限遅延・プロジェクトメンバーの活動停止・求められていた成果物とのズレなど、当初予定していなかった多くの問題が気付いたら発生していることも沢山ありました。

プロジェクトマネジメントに関するフレームや重要項目は世の中に沢山公開されています。しかし、実際のところ多くのナレッジを完璧に模倣してもプロジェクトマネジメントに苦しむ人は多いでしょう。フレームや重要項目ももちろん大事ですが、それだけでは上手くいかないからです。

本記事では”完璧主義なリーダーに贈るプロジェクトマネジメントの心持ち”というテーマで、プロジェクトリーダーが持つべき考え方をお伝えします。プロジェクトマネジメントで上手くいかないことが多い完璧主義寄りのリーダーに必見の記事です。

完璧主義のプロジェクトリーダーが陥りがちなミス

完璧でない状態を許せない完璧主義者

非常にストイックで細かい彼らには仕事のクオリティが高い・ミスをしにくいなどという良い一面があります。本来これらの強みはプロジェクトマネジメントにおいて大きな価値を発揮すると思われます。しかし、完璧主義が行き過ぎてしまうとこれらの強みをかき消してしまい、プロジェクトの目的・目標達成を困難にしてしまいます

本章では完璧主義のプロジェクトリーダーが陥りがちなミスを挙げます。皆さんも自分が当てはまっていないか確認してみてください。

①プロジェクト開始前にタスクや期日の全てを明確に出来るという妄想

物事を始める前に完璧な計画を立てなければ気が済まない...

そんな方もいるのではないでしょうか。

失敗したくない、周囲に優秀に思われたいという気持ちが強い方に多い考え方ではないでしょうか。用意周到に準備をすることは良いことです。ただ、この考え方では自分・周囲が納得するような計画立てに時間を使いすぎることで、実行や改善が甘く、目標未達などの問題をもたらします。また、完璧にこなせる自信がつかないとプロジェクトをそもそも始動しないこともあるでしょう。1人で入念に計画を立てようとする余り、周囲との認識合わせや巻き込みに多くの時間を要してしまうこともあります。

②計画通り完璧にプロジェクトが進むという妄想

プロジェクトは計画通りに進んで当たり前、最初の計画が全てである...

そんな方もいるのではないでしょうか。

事前に想定されうるリスクに対して対応することはプロジェクトを成功に導きます。一方で想定外の課題は生じないという考え方を強く持っている方は危険です。完璧な計画に執着する余り、柔軟な対応力・修正力に欠けます。失敗や想定外の問題を毛嫌いし、計画通りに進めることを優先してこれらに誠実に向き合わずに表面的な解決をしてしまうことはないでしょうか。そうすることでプロジェクトが本来達成すべき目的から徐々にズレていってしまいます。

また、生じた課題を1人で解決しようとしてしまう責任感の強い方もいるでしょう。そんな方はステークホルダーに迷惑をかけてしまう可能性が高いです。課題を全体に共有しない、1人で長時間考えすぎて対応が遅れるなど、周囲が動きにくくなる行動をしてしまうからです。

完璧主義な考え方はプロジェクトの成功に貢献することもあるが、過度な完璧主義はプロジェクトの進行を妨げてしまう可能性がある。

いくつか例を挙げてみましたがいかかでしょうか。過去の苦い経験を思い出した方もいるのではないでしょうか。私もこれまでプロジェクトマネジメントで何度も失敗を繰り返してきた1人ですので、非常に反省点があります。

次章ではプロジェクトの本質について学びます。なぜ上手くいかなかったかを分析し、より良いプロジェクトリーダーを目指していきましょう!

プロジェクトの本質を学び、上手くいかないことを受け入れる

①プロジェクトは独自性のある仕事

プロジェクトとは独自性のある仕事です。分かりやすくお伝えすると、プロジェクトを立ち上げて完遂するということは、今までにない新しい価値を生み出すということです。新規事業の立ち上げや新規サービスの展開などを思い浮かべてください。一方で従来と同じ価値を生み出す型にはまった独自性のない生産活動はプロジェクトではなく定常業務などと定義されます。

②プロジェクト業務は不確実性が伴うことが当然である

今までにない新しい価値を生み出す挑戦をすることがプロジェクト業務です。新規事業立ち上げや新規サービスの展開を確実に実現する方法は誰にも分かりません。そんな未知の領域に挑戦して、攻略する仕事です。そう考えると、不明瞭な点や予測できないことがあって当然ではないでしょうか。プロジェクト業務は不確実性が伴うことが当然であり、不確実性があることを恐れる必要はないのです。

プロジェクトは新しい価値を創出するからこそ、不確実性が伴うことは当然である。

プロジェクトマネジメントは完璧主義ではなく、最善主義で挑め

最善主義。特定の条件下やある制約の中で最大限の結果を創出するために出来る最善の努力を行うということです。

「全ての事象に対して完璧の状態を求める」完璧主義

「特定の条件下やある制約の中で最大限の結果を創出するために出来る最善の努力を行う」最善主義

当然、双方に良さがあります。しかしながら、プロジェクトの本質を踏まえると最善主義の考え方の方が効率的・効果的に仕事を進められるかもしれません。以下はプロジェクトにおいて完璧主義者と最善主義の行動の違いを書いてみた表です。

完璧主義者最善主義者
計画時完璧な計画が出来上がるまで行動しない開始時に決定すべき事項(目的・目標等)を整理
決定できない事項(詳細な成果物等)はリスクを洗い出し、最小化を狙う
問題発生時計画通りに進めることが最優先
表面的な解決策を打ち出す
問題が生じたことを誠実に受け止める
目標達成のために根本的な解決策を打ち出す
問題発生時完璧な状態が崩れることを恐れ、1人で問題を抱え込む互いの状況や課題を見える化
目標達成できるように周囲と適切な報連相を行う
通常時全ての仕事を同じ優先順位で完璧にこなそうとする目標達成のために適切な優先順位付けを行い、取り組むべき内容に全力で集中

表を見てみると、完璧主義者のリーダーは【計画通りに上手くいっているか】が気になっています。想定外のリスクや問題の不確実性は彼らの敵であり、不確実性のコントロールに苦戦をするでしょう。

最善主義者のリーダーは【計画通りに上手くいっているかを確認し、それを踏まえて何が出来るかを思考できるか】を考えています。不確実性を抑える努力をしながらも、一定の不確実性を受け入れ最善の対応を試みています。不確実をコントロールしているともいえるでしょう。

プロジェクトは不確実性が極めて高い仕事です。プロジェクト業務には不確実性が伴い、完璧でない現実が起こりうることを理解しましょう。完璧に上手くいくことに越したことはありませんが、大切なのは上手くいかなかったときに目標達成のために必要な対応を取り続けられるかだと思います。

「特定の条件下やある制約の中で最大限の結果を創出するために出来る最善の努力を行う」ことで不確実性に左右されず、不確実性をコントロールする。

プロジェクトリーダーの真の仕事とは

世の中にある理論だけでは必ずしも成功に導けないプロジェクトマネジメント。プロジェクトの成功にはサービスの品質、プロジェクトチームの組織状態、競合優位性、メンバー育成...など様々な要因があるでしょう。

では、プロジェクトの最終的なゴールを何でしょうか。
新規サービスの立案、既存サービスの改善、組織改革...など世の中に色んなプロジェクトが存在します。プロジェクトを通して、どんな価値を周囲や社会に届けるかを皆さんも考えるのではないでしょうか。
つまり、プロジェクトの先には顧客が存在します

故にプロジェクトリーダーの仕事は最善の努力を行い、顧客に最高のサービスを届けることです。

プロジェクトが完璧に上手くいっているかに一喜一憂する必要はありません。大切なことはプロジェクト成功のために何が出来るかを思考・改善し続けられるかです。その一環として、不確実性をコントロールするための計画立てやリスクヘッジ等が上げられますが、他にも多くの工夫が出来ると思います。是非様々な工夫をしてみてください!

最後に

あなたは、

何のために仕事をしますか? 
何のためにプロジェクトを進めますか?

このように聞くと大抵の人は「顧客のため」と答えるでしょう。

一方で実際のところ、プロジェクトマネジメントに限らず仕事をする上で、失敗したくない・周りから凄いと思われたいなどという気持ちが勝り、自分の納得感や自己保身など【自分を主語】にした仕事の進め方を無意識にしているかもしれません。

ですが、プロジェクトのゴールは顧客でしょう。【プロジェクトの成功を主語に】プロジェクトに向き合い、様々な取り組みを行う中で、皆さんが真の仕事である最善の努力を行い、顧客に最高のサービスを届けることを達成できることを心から祈っております。

最後まで読んで頂きありがとうございました。最後に本記事のまとめを記載しておきます。振り返りに使ってみてください。

プロジェクトマネジメントは完璧主義ではなく、最善主義で行うべき
・完璧主義な考え方はプロジェクトの成功に貢献することもあるが、過度な完璧主義はプロジェクトの進行を妨げてしまう可能性がある。
・プロジェクトは新しい価値を創出するからこそ、不確実性が伴うことは当然である。
・「特定の条件下やある制約の中で最大限の結果を創出するために出来る最善の努力を行う」ことで不確実性に左右されず、不確実性をコントロールする。

この記事の著者/編集者

須賀渉大   

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。大学3年時までは海外インターンシップ事業の運営、国内外ボランティア、教育系の長期インターンなど様々な活動に尽力。大学4年時には日本最大のキャリア支援団体の早稲田支部長として100人を超える仲間と、事業・組織共に持続的な成長を遂げる団体の基盤創りに挑戦。ボランティアで深刻な社会課題を目の当たりにした経験から「日本を課題解決先進国にしたい」と考えている。社会人では金融とデジタルの分野で専門性を磨き、将来は社会的価値と企業的価値を両立した事業、組織創りに携わり、社会問題の解決及び日本の変革への貢献を志す。

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 左貫菜々子

    早稲田大学 2022年10月20日

    須賀さんとの1on1で、「私は完璧主義になってしまう」と弱音を吐露したときに、スッと送ってくださったこのコラム。
    今の私の状況下に最適なコラムでした。
    私が理想とする考え方が言語化され、まさに今の私にとって修得すべきスキルであり、真の教科書です。
    「プロジェクトの成功」を目的と捉え、「最善主義」で、柔軟に変化、発生した問題を真摯に受け止め、目標達成のために適切な優先順位付けを行うことを心がけで、リーダーとしてプロジェクト成功に導きたいと思います。
    素敵なコラムをありがとうございました。

  • 藤井裕己

    2022年09月30日

    自分自身の経験を振り返ったとき、プロジェクトが上手くいかない時は確かに完璧主義だったように思います。

    プロジェクトにおいては計画通りに進めることではなく、顧客に最高のサービスを届けることが重要である。

    上記の考え方を常に意識し、その時々で最善の努力をしていきたいと思いました。

  • 谷 風花

    2022年09月23日

    これまでマネジメントをする中で、自分の理想状態と周囲の現実とのギャップに悩むことが何度もありました。しかし、この記事を読んで、「完璧主義」から「最善主義」に切り替え、状況に対応して思考し続けることが、リーダーとして大切なことであると認識を改めることができました。今後は不確実性を想定した上で目標を設計し、臨機応変に更新し続ける存在でありたいです。

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