自己流を脱却し、共創による品質高いサービスを創り出す

9.最後まで成し遂げる

中途半端な仕事を拒み、期待以上の成果を上げ、信頼を積み重ねます。自己流に固執せず、業務プロセス・報連相・守破離を積極的に取り入れ、堅実・大胆にプロジェクトを成し遂げます。

組織を動かすことを目的に「自己流の脱却」を

 理論や蓄積されたノウハウ、他者の意見を取り入れず、自分のこれまでの経験や能力に頼りすぎて、失敗した経験はないでしょうか。

 長い時間をかけて創り上げた成果物も結果に結びつかなければ意味がありません。

 しかし、自己流から抜け出すことは想像以上に難しく勇気がいることです。そこでこの記事では自己流に固執していた私が、自己流を脱却しようと決意した経験と、脱却する際に意識したことをお伝えします。自己流を脱却し、周囲を巻き込みながら組織の成果に貢献したい方にお薦めの記事です。

自己流の主語は「私」

本記事ではまず自己流の方が陥る問題など簡単に記載した後、私自身が10人以上のメンバーで構成されたプロジェクトを自己流で進めた結果生じた課題をお話します。その後、経験から得た学びや自己流にならないための工夫をお伝えします。ぜひ最後まで御覧ください。

「私が分かりやすい」が招く大きな間違い

「自己流に陥ったことに気付かず、自分のやりやすい形で物事を進めすぎたあまり、顧客や組織にとって迷惑をかけてしまった経験はありませんか?」

 私は、自己流で創り上げた資料などを読みにくいと言われ、あまり運用させず悔しい思いをした経験が何度かあります。

 自己流に固執する際に自分が主語になってしまうことがあります。例えば、自分にとって見やすいか、理解しやすいか、使いやすいかなどです。そして自分にとって使いやすいものが他者にとっても使いやすいものだと強く思いこんでしまうこともあるでしょう。

 しかし、そんな時こそ落ち着いて考えてもらいたいです。あなたが作成した成果物は顧客や上司や部下など、他者のためにあるものがほとんどでしょう。あなたが作成した成果物を評価するのは自分以外の方なのです。故に、あなたが取り組む目前の仕事の先には、それを待つ相手がいることを忘れてはなりません。

自分が満足するものが相手にとっても良いとは限らない。
主語を「相手」にし、相手が満足するものを創り上げること、相手の期待を超えることが大切

「私だけが創れる」が招いた大きな間違い

 先程、成果物を作成する上で相手のことを考える重要性をお伝えしました。加えて、作成する過程で「目標や目的など、成果物の根幹を他者と共創すること」が非常に重要だと考えます。この過程を取り入れるかによって、周囲の方の知恵を活かした品質高い成果物を創り上げられるかが決まると思うからです。ここからは私の過去の経験をお伝えしながら話を進めます。

「私」しか分からず、「私しか」動けない

 現在私はエンカレッジ早稲田支部10期の支部長として活動しています。活動の引退時期は2月中旬で、引き継ぎ対象となる11期を10月から採用し、1月には11期のみで組織を運営できるように育成をします。私は主に採用された11期への基礎インプット及び部署への適切な配属、11期の組織目標や組織構造の策定等の統括として全体的に11期をサポートしています。

 8月後半くらいから、統括として本プロジェクトに関する目標や大体の計画を1人で立て、9月中旬にはそれを成し遂げるための組織図を創り、徐々にプロジェクトメンバーを巻き込んでいきました。

 当時の組織状態や自分自身が多くの判断材料を有していることから、「私のみで進めたほうが組織のためになる」と考え、自分の力でプロジェクトを進めていきました。しかし、この進め方により問題は生じます。

 この経験で私は、プロジェクトメンバーと創り上げた目標や計画が個人で創り上げたものと内容が変わらずとも、中長期的な視点を持つと初期から必要な人財を巻き込み、共に創り上げる過程が重要であると気付きました。

 当初、計画通りに進んでいたプロジェクトでしたがいつしか、徐々にメンバーとのすれ違いが生じていました。具体的には以下のような組織状態でした。

プロジェクトの全体像を理解している方が少なく、仮説のない質問が自分に集中する。また、全体設計や計画の段階で行われた意思決定の背景が分からないため、終えた議論が再発したり、言われたことをやるだけという状態になっている。

プロジェクトの根幹から共に創り上げる

 この時に私は自身が自己流でプロジェクトを進めていたことに気付きました。目標や目的など、本プロジェクトの根幹となる部分をメンバーと共に試行錯誤し、共に意思決定や方針を創り上げることで防げる問題でした。自身への奢りから戦略策定や意思決定を勝手に行い、かつそれを周囲に理解してもらうことを優先しており、組織として成果を創るための過程を軽視していたことに気付きました。メンバーの視点に立つと「プロジェクトの根幹には携わらせてもらえないけれど、指示は飛んでくる」つまらない状態だったと思います。メンバーの主体性を欠く、この自己流の取り組みを捨て、メンバーとプロジェクトを共創できるように私自身、挑戦をしてみました。

メンバーの主体性を醸成し、「誰もが動きたい」状態に

 自己流で創り上げた全体像や計画に関する背景や課題意識をプロジェクトメンバーに対して伝えきり、その上でメンバーからのFBやメンバーの次世代に対する思いを聞き入れる合宿を行いました。

 自分を理解してもらうのではなく、相手を理解することを大切に議論を交わした合宿は非常に貴重な機会になりました。組織全体を見ていた私と比較して現場の貴重な意見もあり、説得力のある意見を採用していきました。その過程でメンバーのプロジェクトに対する思いが醸成され、また同じ目的や目標を持ち、共に支え合うチームになりました。次第に部署の垣根を超えた連携や、早稲田支部以外の別大学の支部の見本とされる資料が創り上げられました。

 決定権限を有する支部長という立場の私ですが、改めて周囲の方の力があるからこそ様々なことを成し遂げられることを痛感しました。

小手先ではなく、プロジェクトの根幹を共に創り上げたメンバーの主体性や高い理解度により、質の高いサービスが創り上げられる。組織や他者の巻き込み方も「自分にとって」ではなく、「相手にとって」適切であるかが大切。

自己流を脱却し、組織の力を生かしたリーダーシップ

 約10人の幹部陣と協力しながら100人を超える組織を運営していますが、このような経験を経て現在大切にしていることがあります。

自己満足ではなく、組織や顧客を満たすパフォーマンスを

 1点目は自己流のゴールを自己満足にしないことです。自己流で何かを進める際に、本来の目的を見失っていることが多々あると思います。

 例えば、大学受験において受験に合格することがゴールにも関わらず、適切な参考資料を選ばず勉強量を増やすことで「頑張っている自分」に満足しているなどはよくあることではないでしょうか。

 様々な経験やノウハウを踏まえて創り出された自己流がゴールを達成する上で最短ルートであれば良いとは思いますが、自己満足な状態ではゴールにたどり着くことはないと思います。自分の活動の先に相手がいることを意識した取り組みが必要になります。

共に創り上げるために「余地」を残すこと

 2点目は成果物を幹部陣に提示する際に改善の余地を残すことです。明確な目的や目標、ビジョンとそれを成し遂げるために必要な論点を私が提示し、具体的な計画や実現方法は幹部と協力しながら組み立てています。

 自己流で創り出す成果は自身の想像の範疇のものであり、限界がありますが、優秀な幹部陣の説得力のある意見を採用することで成果は向上します。

 議論の効率の観点から目的や目標の根幹から共に創り上げることは難しいですが、改善の余地(プロジェクトに対して貢献出来ること)を残すことで、プロジェクトへの主体的な協力を促し、組織を巻き込んでいきます。これにより、プロジェクトを成功に導くために必要な関係者が常に危機意識と当事者意識を持ち、人のせいにせず、自ら行動する組織を創り上げられるでしょう。

最後に

  • まず、自分自身が組織や顧客への貢献など目的を忘れないこと
  • 成果物だけではなく意思決定や報連相の仕方から自己流を拒み、常に危機意識と当事者意識を持てるプロジェクトチームを共創すること

上記の2点を意識することで、質の高いサービスの実現できると思います。

 成果を提供する相手、成果を共に創り出すメンバーの双方の視点を大切にすることで「努力したけど結果が伴わないこと」、「協力者がおらず机上の空論であるプロジェクト」はなくなるでしょう。

 自己流に固執し、相手に理解されることを待つのではなく、相手を積極的に理解することで皆さんが素晴らしい価値を周囲の方に提供できることを応援しています。

プロジェクトは成果を共に創り出すメンバーと、成果を待つ顧客がいてこそ成り立つ。自己流に固執することなく周囲と共創できる体制を創り上げることでプロジェクトの成果は向上する。

この記事の著者/編集者

須賀渉大   

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。大学3年時までは海外インターンシップ事業の運営、国内外ボランティア、教育系の長期インターンなど様々な活動に尽力。大学4年時には日本最大のキャリア支援団体の早稲田支部長として100人を超える仲間と、事業・組織共に持続的な成長を遂げる団体の基盤創りに挑戦。ボランティアで深刻な社会課題を目の当たりにした経験から「日本を課題解決先進国にしたい」と考えている。社会人では金融とデジタルの分野で専門性を磨き、将来は社会的価値と企業的価値を両立した事業、組織創りに携わり、社会問題の解決及び日本の変革への貢献を志す。

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新着コメント

  • 香山 渉

    2023年01月29日

    自己流から抜け出し、本来の目的に立ち返ることの大切さを学んだと同時に、その難しさを推し量ることができました。
    今11期が立ち上げを遂行できているのは、須賀さんの努力の積み重ねと、かけてきた時間があるからこそのものだと強く感じました。改めてありがとうございます。

  • 上野美叡

    2023年02月24日

    “メンバーの視点に立つと「プロジェクトの根幹には携わらせてもらえないけれど、指示は飛んでくる」つまらない状態だったと思います。”メンバーのことを本当に考えると、自己流でやるのは間違っているということが、よくわかる言葉でした。「メンバーに面倒をかけないように」「スムーズに物事が進むように」と考えて、自己流に進めてしまうことは、あるあるな気がします。しかし、メンバーに主体的に動いてもらいたいと考えたら、メンバーと共創することが大切だと改めて考えました。

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