相手のために「耳の痛い提案力」をつける
2022.12.29
今月の研修:アサーティブコミュニケーション
「相手のためを思って言ってるのに伝わらない…」
「そんなつもりじゃないのに誤解される…」
このように思ったことはありませんか?相手のためを思った言動も、誤解によって伝わらない場面があるでしょう。私自身、相手のために耳の痛いことを言える人を目指しており、伝え方に悩むことがあります。
そこで今回の記事では、アサーティブコミュニケーションの観点から、私が考える「耳の痛い提案力」について考えていきます。
相手のためを思うからこそ厳しい指摘をしたい、そんな方にぜひ読んでいただきたい内容です。
「耳の痛い提案力」の定義
私が考える「耳の痛い提案力」の定義とは、以下のようなものです。
耳の痛い提案力
=相手の立場や気持ちを考慮した上で真摯に指摘し、より良い提案を受け入れてもらう力
相手のためを思うならアサーティブであれ
このような「耳の痛い提案力」を発揮するためには、アサーティブコミュニケーションが有効です。まず、アサーティブコミュニケーションについて理解する上で知っておくべき、コミュニケーションの4タイプを紹介します。
aggressive(攻撃型)
判断材料もなく、説得力がないのに、一方的なコミュニケーションを行うタイプ。
passive(受身型)
遠慮して言い出せないタイプ。
passive(作為型)
遠回しや皮肉で伝える、または後で仕返しするタイプ。適切な目標自体が設定されず、チームの行動自体が後ろ向きになってしまいます。最も避けるべきコミュニケーションの形と言えるでしょう。
assertive
自分の要求や意見を、相手の権利を侵害することなく、誠実・率直・対等に実現するタイプ。
相手のためを思うからこそ、誠実・率直・対等に伝える。アサーティブコミュニケーションが「耳の痛い提案力」を発揮する鍵になるのです。
いざ実践!DESC法
アサーティブコミュニケーションを実践するためには、DESC法が有効です。
DESC法とは、以下のような伝え方の形です。
- Describe(事実を描写する)
- Express(感情を表現する)
- Specify(提案する)
- Consequences(結果を伝える)
まず初めに、状況を客観的に簡潔な言葉で伝えます。
次に、Iメッセージを活用して自分の感情を表現します。Iメッセージとは「私は」から始まる伝え方です。「私は〜だと感じた」と言う事実は否定できないため、相手に受け入れてもらいやすくなります。
そして、責任を持って、現実的かつ具体的な提案をします。自分と相手の主張が
違う場面も想定し、第2案・第3案を準備しておくとよいでしょう。
最後に、「助かる」「嬉しい」など、自分の提案を受け入れてもらえた場合の効果を端的に伝えます。
このような伝え方をすれば、アサーティブコミュニケーションを実現することができ「耳の痛い提案力」の発揮につながります。
相手のためを思っているつもりになっていた家庭教師での経験
ここでは、私が「耳の痛い提案力」という考えに至るきっかけとなった経験を紹介します。
私は大学1年生の時、中学1年生(以下Aくん)の家庭教師をしていました。Aくんは勉強が苦手で、志望校合格に向けて早い時期から対策したいという希望を持っていました。
指導を始めてすぐは意欲的に取り組んでいたAくんは、次第に宿題をやり残すようになっていきました。
当初、Aくんは優しく楽しくコミュニケーションを取りたいタイプだと考え、2度目までは「宿題の量が多かったかな?ここまでは絶対できるっていう量を一緒に決めよう」等の対応をしていました。
しかし、次の授業でもAくんは宿題をやってきませんでした。このままでは成績も伸びずAくんのためにならないと考えた私は、状況を確認した上で必要であれば厳しく指摘することにしました。
「なんで宿題をやってこなかったのかな?」
「…」
「部活が忙しかった?」
「…」
繰り返し質問を投げかけましたが、Aくんは黙って一点を見つめるばかり。
私は、「最近ずっと宿題をやってきてないよね。絶対やるって約束だったし、毎日30分やれば終わる量しか出してない。毎日30分やれないはずないよね?このままだとお金がもったいないから、家庭教師を雇うのは辞めた方がいいと思う」と伝えました。
すると、数日後に連絡があり、私がAくんの担当から外れることになりました。
今思えば、私はAくんと対等の立場で話そうとはしていませんでした。「これくらいやってきて当たり前」「どうせサボってるだけ」と決めつけてしまっていた部分もあったと思います。
Aくんのためを思っていたつもりが、アサーティブコミュニケーションからはかけ離れてしまっていたのです。最善の行動を取れなかったことに、今でも悔いが残っています。
成長を実感した塾講師の経験
上記の経験から私は、ただ厳しい指摘をすればいい訳ではない。相手に配慮した上での「耳の痛い提案力」が必要だと考えるようになりました。
そこで、今回の研修を受け、塾講師のアルバイトで耳の痛い提案をすることができた事例を紹介します。
先日、難関大学合格を目指す生徒(Bくん)が、英単語のテストで20問中10問しか正解できませんでした。受験が迫っていることや出題範囲を考えると、到底満足できる点数ではありません。
そこで、私は以下のような提案を行いました。
今回の単語テストは10点しか取れてないね。いつも頑張ってくれてるとは思うけど、受験のことを考えると、もっと取れないとまずいかな。ただ僕はBくんには合格してほしいと思っているから、単語学習の取り組み方を見直そう。今は通学中の電車で勉強してるって言ってたけど、授業と授業の合間も単語学習に使えないかな?難しかったら、寝る直前に10分だけ時間を作るのはどうだろう。忙しいとは思うけど、合格するために時間を割いてくれたら嬉しいな。
DESCを色分けしてみると以下のようになります。
今回の単語テストは10点しか取れてないね。いつも頑張ってくれてるとは思うけど、受験のことを考えると、もっと取れないとまずいかな。ただ僕はBくんには合格してほしいと思っているから、単語学習の取り組み方を見直そう。今は通学中の電車で勉強してるって言ってたけど、授業と授業の合間も単語学習に使えないかな?難しかったら、寝る直前に10分だけ時間を作るのはどうだろう。忙しいとは思うけど、合格するために時間を割いてくれたら嬉しいな。
DESC法を意識して伝えたことで、それ以降Bくんは満点に近い点数を取るようになりました。
相手のためを思い、耳の痛いことも言うことのできる人を目指し、今後も「耳の痛い提案力」を磨き続けていきたいと思います。
これから研修を受ける方へ
本研修は、自身のコミュニケーションのクセを理解し、アサーティブな人に近づくきっかけになります。自分も相手も大切にし、建設的なコミュニケーションを実践したい人にはぜひ受けていただきたい研修です。
研修で学んだこと
- アサーティブコミュニケーション
- コミュニケーションのタイプ
- assertive
- aggressive
- passive(受身型)
- passive(作為型)
- 4つの柱
- 7つの基本姿勢
- DESC法
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