勘違いしていませんか?仕事で失敗しがちな上司と部下の報連相
2021.05.31
今月の研修:報告・連絡・相談
今や社会人に必須のスキルとされている報連相。その重要性は誰もが知るところですが、時が経つにつれて報告・連絡・相談の目的や意図が本来のものから逸れてしまい、意味を勘違いしている社会人が増えてきました。
あなたはこの緩やかな変化に気づいていますか?
気づかないまま放置してしまうと、思わぬ失敗を引き起こしてしまうかもしれません……。この記事では報連相の正しい意味と活用方法について分かりやすくご紹介します。
企業で起こりがちな間違った報連相

まず、報連相に対する認識を確認しておきましょう。
報連相とは「報告・連絡・相談」のことを意味しており、社内のコミュニケーションを活性化させ、円滑に仕事を行うために重要なことです。これは周知の事実であり、報連相の本質と言えるでしょう。
問題は報連相を過剰に行わせる企業があること、報連相が上から下への押し付けになりがちなことです。私が勤めている会社で実際に起きた例をもとに詳しく見ていきましょう。
例1.過剰な報連相の強要
- 業務内容を分刻みで日報に記録
- 業務ごとにどれくらいの時間をかけて行ったかリソース管理表に記録
- 午前中に行った業務と午後に行う業務についてグループ内で報告
- 上司への昼礼終了の報告
いずれも毎日行っており、1ヶ月で約2時間半もの時間を報告のためだけに割いていました。社員100人分を合算すると250時間。これだけ時間を割けば成果に表れるかといえばそうではないでしょう。重複している内容も多いうえに細かいため、上手く活用できるわけがありません。そもそも報告させることが目的になってしまったのが一番の問題です。上司は報告を受けることで部下の仕事内容を把握・管理したつもりになっており、本当に必要なコミュニケーションが減ってしまいました。
例2.部下から上司への一方通行な報連相
- 上司が何をしているかの報告がなく業務内容が不透明
- 連絡がいつも突然で業務を中断せざるを得ない
- 相談を飛ばした決定通知
多くの企業でよく陥りがちなのが、上司から部下に対する報連相ができていないことです。報連相は部下から上司にするものと思い込んでいる方が多いのではないでしょうか。
上司の業務内容が分からなければ、部下は仕事に対して不信感を持ちやすくなります。部下の都合を考えずに連絡をすることで、本来やるべき業務に支障が出たこともありました。また、新規プロジェクトの導入や社内ルールの変更について部下の意見を汲み取ることなく「明日からこれでお願いします」と通達しても、なかなか受け入れられないのが実情です。

今回、研修を受けながら自分自身や関わるプロジェクト、自社の課題について考えたことで上記のように問題点を洗い出すことができました。もっとも、今は既に改善されていることもあります。たとえば例1で引き合いに出した業務日報とリソース管理表については新たなITツールを導入して一元化しました。それまでと比べて簡単に記録・確認・管理できるようになりました。
ですがまだ課題は残っているので、これを機に社内の報連相をあるべき姿に正していけるよう、積極的に働きかけたいと思います。
本来の報連相とは
研修の中で一番大きな気づきだったのが、報連相があって初めてマネジメントできるということでした。よくよく考えてみれば当たり前のことなのですが、報連相の本質が育成であるということに今さらながら気づいたのです。
研修後、改めて報連相についてしっかり考えたいと思い、手に取ったのが『ほうれんそうが会社を強くする―報告・連絡・相談の経営学(増補新版)』でした。「報連相」という呼び名を発案し、活用方法を世に広めた第一人者・山崎富治さんの著書です。

この本には報連相を考案した経緯が綴られています。それによると経営者として「多くの知識を集めて社員の力を合わせること」、「下からの意見を吸い上げること」、「社員が働きやすい環境を作ること」を考えた結果、報連相経営に行き着いたそうです。
つまり、報連相とは上司に判断材料を提供するために部下から情報伝達することではなく、上下はもちろん左右にも情報を伝達しやすい環境を整えるための手段ということ。報連相がつつがなく行えるような職場環境を作ることで、社員や会社の成長を図るためのものなのです。
同書では「報連相の仕方」ではなく、「報連相の育て方」に焦点が当てられています。報連相はもともと育てるものとして考えられました。本来の意図を意識したうえでビジネスの場に役立てていきたいですね。
報連相を育てるには

正しく報連相を活用するにはどうしたら良いのか、ここまでお読みいただいたあなたには既にいくつか案が浮かんでいるのではないでしょうか。
私もこれまで学んだことをもとに考えを出しました。リーダーズカレッジ(A&PROのリーダー育成部門)内では周囲をまとめる立場にあるので、ここでは上司側の視点からできることを3つご紹介します。
①部下の様子を観察し、情報を引き出す
相手の主体性を尊重することも大事ですが、それと放任を履き違えてはいけません。上司には部下の状況を把握し、必要に応じてサポートをするという責任があります。ですから部下の動向に気を配り、適宜話しかけたり質問を投げかけたりすることが重要です。
②判断力と決断力を及ぼす範囲を定める

A&PROでは、報告は決断(行動)を伴う行為であり、相談はより良い判断をするための行為であると考えています。連絡は、然るべきところで既に決断や判断がなされているので、そのどちらにも該当しません。
まずはこのことを意識したうえで、報連相を受ける体制を整える必要があります。そうでなければ部下を育てる対応ができないからです。
正しく報連相に対応できる状態でなければ、部下から深く考えず安直に「どうしたら良いですか?」と相談を受けた時、部下に考えさせることなく本人が判断すべきことまで奪って判断しかねません。その相談内容は解決しますが、部下は自分で判断できない指示待ち人間になってしまいます。
人材育成を目的にするならば、報連相を受けた時に適切な助言や手助け、権限移譲などができるよう準備しておくことが大切です。
③部下に対する報連相を怠らない
「自分の業務内容を伝えても分からないから」、「部下には関係ないから」と報連相を怠ってはいけません。部下に対して自ら積極的に報連相をすることで、全員が報連相しやすい環境を作ることができます。また、部下と良好な関係を築くのにも役立つでしょう。
報連相に限ったことではありませんが、まずは自分が一番のお手本になり、あるべき姿を示すことが人材育成には欠かせません。
これから研修を受ける方々へ

今回は報連相が持つ本来の意味や活用方法についてお伝えしてきました。報連相の重要性に気づいていただけたことと思います。
このように、A&PROの研修では普段見落としがちなことにこそ目を向け、本質を捉え直すことができます。また、自身の抱える課題を浮き彫りにし、正しい向き合い方を掘り下げていけるのも特徴です。
「頑張っているのになぜか上手くいかない」という方にこそ、より多くの価値を提供できるでしょう。あなたと共に知恵を出し合える日を楽しみにしています。
研修で学んだこと
- 報連相が無ければマネジメントできない
- 報連相は上司と部下がお互いに活用すべきこと
- リスクヘッジが可能なうちに報連相をする
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