”Give”だけでなく”Take”も意識するコミュニケーション

今月の研修:社会人の持つべき習慣(後半)

はじめに

”Give and Take" "持ちつ持たれつ"

「お互いに利益を得よう」という意味の故事成語は、言語の壁を越えて存在します。一方で、自己犠牲によって相手へ貢献することが美徳とされることもあります。この相反する二つの主張は、よく人を苦しめています。

「こんなに尽くしているのに、相手から何も返ってこない」

果たしてこれは、相手のせいなのでしょうか?こうした悩みに対し、自分自身ができることはあるのでしょうか?私自身の実例を基に考えてみましょう。

今回例として取り上げるのは、大学生のキャリア支援を行うNPO団体にて、サービスユーザーと面談を実施している際の経験です。

”Give and Give"の落とし穴

団体では各メンバーが就活生25人ほどの担当となり、それぞれと継続的に面談を重ねています。「面談を通して就活生に貢献したい」という思いで団体に入るメンバーも多くいるため、面談へのモチベーションは比較的高い傾向にあります。私もその一人でした。

ただ、多くのユーザーを受け持って対話を重ねることの負担は、決して小さくありません。さらに、エントリーシートの添削や面接の練習も引き受けることがあるため、負担はさらに重くなっていきます。そして何より、自分たちの活動には給料が発生しません。

私はこの状況下で、「どうやったらユーザーへ貢献できるか」考え続けていました。リクエストがあれば、面接の練習も書類の添削も拒まず引き受けていました。しかし、周囲のためにやり続けていた業務は「自分ごと化」しづらくなり、だんだんタスク化していきました。

結果として私は、面談に対して自分なりの意義を見出せなくなりました。そして疲弊し、モチベーションが大きく低下してしまったのです。

私はこの事実から目を背けていましたが、面談サービスを受けたあるユーザーからの一言で目が覚めました。

「面談は、自分にとっては意義が大いにあると思えるんですけど、原さんにとってはどんな意義があるんですか?」

”Give and Take"を意識するようになって

私はこの一言をきっかけに、自分が「意義を見出せる」面談を意識し、行動を起こすようになりました。

行動⑴面接を「受ける側」になってみる

一つ目の行動として、自らの「面接力」を鍛えるため、回答者側の立場からユーザーと模擬面接を行いました。

私が団体に入ったのは昨年の2月であり、その時点ではまだ就活を継続していました。第一志望の選考も本格的に始まらない中、私は「面接力」を高めたいと思いながらも、話したい内容を試す機会に恵まれていませんでした。だからこそ、実践した面接を内省することで学びを”Take”しようと考えました。これは、面接での振る舞い方の「手本」を学び取りたいユーザーにとってもプラスとなっていたはずです。

例えば、あるユーザーと「逆面接」を実践したとき、相手が時折質問しにくそうな素振りを見せていたことに気づきました。そこで、面接の各回答において「どこをどう深堀りしてほしいのか」を再考し、その点を聞いてもらうためにあえて情報を一部隠す答え方を実践しました。すると、面接における想定外が減少し、結果的に自分の話したいことを「聞かせる」ことができるようになりました。

行動⑵ユーザーからのフィードバック

二つ目の行動として、自身のコミュニケーション力を鍛えるため、面談における良かった点と改善点を相手から聞き出しました。

「面談を通してコミュニケーション力を鍛えたい」という思いで団体に入った一方、これまではアンケート経由でしか面談を振り返ることができず、特にコミュニケーションに関する振り返りが不十分でした。だからこそ、自らもアドバイスを受ける立場となって学びを”Take”しようと考えました。これは、次回以降より良いサービスを受けたいエンターにとってもプラスとなっていたはずです。

例えばあるユーザーには、「もしこのサービスへお金を出すとしたらいくらまで出しますか?」と聞くことで、アンケートでは測れないリアルな感想を貰おうとしました。そこでの「3000円」という数字を聞いて、より高質なサービスを提供しようと考えました。

そのユーザーに改善点をヒアリングした結果、「抽象的なワードが多く、具体的なイメージをしづらかった」という改善点を貰いました。そこで、「一つアドバイスをするときには、必ず対応した具体例を一つ盛り込む」と決め、実践しました。すると、ユーザーからも「原さんの説明はイメージしやすい」と言ってもらえるようになりました。

現在について、未来について

私が団体に参加してから約一年が経ちます。周囲からの信頼を得たことで、団体の中でもトップクラスにユーザーとの面談を実施しているメンバーとなりました。もちろん、多く面談を重ねればその分スケジュールは埋まっていきます。

しかし、その忙しさを「嫌だな、逃げたいな」と捉えることは、逆に無くなりました。その理由は簡単で、相手にとってのプラスだけでなく、自分にとってのプラスも感じた上で面談ができるようになったからです。つまり、面談を通じて”Give"するだけでなく、”Take"することもできるようになったのです。

そしてこの経験からは、未来の私も学びを”Take"できるはずです。4月から勤務する金融機関では、法人営業の部署への配属も想定されます。この業務では顧客と継続的に関わるからこそ、ユーザーとの面談で磨いたコミュニケーションスキルは必ず生きると考えています。

おわりに

「相手のためになることをしよう」という考えは素敵なもので、誰しもが持つべきものです。一方で、その行動は自分のためにもなっている必要があると考えます。

例えば今回の例で、もし何かを”Take"できている実感がないまま突き進んでいたら、「自分ばっかり損をしている」という感覚はどんどん増していくでしょう。それはやがて、「周りも損すればいいのに」という考えを抱くことにもつながってくるのです。これが組織で起きると、組織全体が「腐ってしまう」ことにもつながりかねないのです。だからこそ、自分自身の「損している」という小さな不満を軽視するべきではありません。

皆さんにも、この記事を閉じた瞬間からできることが一つあります。それは、「今の行動が自分にとってどんな価値をもたらすか」について、一つ一つ振り返ることです。私もその対象の一人だからこそ、この記事を書き上げたらまず振り返ってみたいと思います。さあ、一歩目を踏み出しましょう。

これから研修を受ける方へ

今回の研修は、頑張っていることの意味を見失ってしまいがちな人におすすめです。行動一つ一つに際し、「他者にも自分にも有意義である」と実感してから動くことの大切さを学べる研修です。他者だけでなく、自分に対しても誠実であるべきであると学ぶことができます。

今回の研修で学んだ内容

  • 緊急でなくとも重要な「第二領域」を大切にするべき
  • 自分にとっても他者にとってもWinとなるような取り組みは大切で、リーダーこそここを習慣化すべきである
  • 自分だけ犠牲を払って頑張っている状態は危険で、周囲を引きずってやろうという状態に変容しうる
  • 聞くことには五つのレベルがあり、最上級である「共感による傾聴」を目指すべきである
  • A案とB案が対立した時には、妥協点を探るのではなく、互いにとっての「さらなるプラス」を目指すべきである
  • 自己の能力を伸ばすには、肉体、精神、社会・情緒、知性の四つを継続的に磨くべきである

この記事の著者/編集者

原駿介 早稲田大学 商学部  

エンカレッジ早稲田支部 CC副部署長

神奈川県川崎市出身。
積極的に行動できる性格と丁寧な対話力を活かし、これまで数多くリーダーポジションを経験。
高校の生徒会組織において代表の一人を務め、大学ではサークルとゼミにおいてそれぞれ副代表を務める。
現在、大学生のキャリアについて考えるNPO団体エンカレッジに所属し、1,2年生向けサービスを統括する副部署長を務めながら、後輩たちの育成を行うプロジェクトでも活躍。

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