取引しない、という選択

今月の研修:社会人の持つべき習慣(基礎2)

外部のパートナーと連携する機会がある時、自分たちと相手の関係性には注意が必要です。

相手との関係性を無理に構築したあまり、どちらかが得をしたり、損をしたりした経験は皆さんも一度はありませんか?

今回の記事では、そのような一方的な関係性になった際に取るべき、No-Dealな関係性の重要性について紹介してきます。

今回伝えたい内容

  • Win-WinかNo-Dealの関係性を選択する。
  • Win-Loseな関係性は短期的には得でも、結果的に損するリスクがある。
  • 今価値があるかではなく、これから価値を作っていけるかが重要

理想的な関係構築

理想的な関係性は2つしかない

私はWin-WinNo-Dealの2つの関係性が本来あるべき関係だと考えています。

まず最も理想的なのは、Win-Winな関係性です。Win-Winな関係性というのはお互いに利益があり、お互いのリソースを使ったさらなる価値創出が可能な関係性だからです。基本的に誰かと取引をしたり、やり取りをしたりする時はどちらかに損益が偏っていないか、という点だけは必ず注意する必要があります。

Win-Winな関係性の例として、別々の鉄道会社の直通運転の例を挙げてみましょう。
本来別の会社で持っている路線を繋げて一度の乗車で行ける範囲を拡張することで、鉄道会社にとっては離れた地域の乗客の獲得にも繋がりますし、乗客にとっても乗り換えの手間もなく電車を活用することができます。この例からわかるように、Win-Winな関係性の魅力というのは、双方の利益とリソースで新たな価値が生まれることにあります。

それでは、その次に重要なのはどのような関係性でしょうか?
それが今回メインで紹介するNo-Dealな関係性です。

採用の場において

Win-WinがだめならNo-Deal、つまり取引しないという選択が次に正しいと伝えましたが、ここに疑問を抱く方もいるのではないでしょうか?
次に挙げる具体例から、どうして一方的な関係は築くべきではないのかをお伝えします。

フェアな情報提供ができずミスマッチ

どの組織にもメンバーと組織のミスマッチにより辞めていってしまうリスクは存在していると思います。私の所属しているキャリア支援団体でも本来採用したメンバーの1/3程度のメンバーが辞めてしまっているという事例が発生していました。その一つの原因としてあったのが採用後のギャップです。

辞めた人の中には「採用の面談の時はここまで忙しいと思っていなかった」「採用が決まった後にどんどんやることが増えてきた」という理由で辞めていく人が一定数いました。これはもちろん採用する自分たちとして説明する準備を怠っていた可能性もありますが、目標人数まで人を採用しなければという数に追われる意識もあったかもしれません。

私も一時期、相手にマイナス印象を持たれやすい稼働時間や業務量に関しての言及は避け、魅力の面を多く伝えるようにしていました。しかし、入ってからのギャップに苦しみメンバーが減っていくという結果になりました。

その結果、本来いるはずだった2/3の人員しか定着しなかったことでサービスの範囲にも一定の影響が出るようになります。

この話を整理すると、

我々=メンバーを増やした。目標に近づいた。=Win
採用された側=聞いていた話と違った。やりたいことができず時間を有意義に使えなかった。=Lose

という考え方になると思います。

しかし、最終的な結果をみれば、

我々=本来のメンバー数が確保できず、計画にずれが生じる。採用コストが無駄になる=Lose
採用された側=一度入った組織を辞めることになり、時間も労力も無駄に=Lose

とのように、関わった双方にデメリットが多く残った状態になってしまいました。

フェアなコミュニケーションがWin-Winの鍵

しかし、このようなミスマッチはついつい起きてしまうものです。それはこちらに落ち度がなくてもついその場の流れで決めてしまうこともあるでしょう。そこで私はいつも採用面談をする際に相手に伝える言葉があります。

それは「今からジョインしたら卒業までに最低でも週10時間、少なくとも年で500時間くらい使うことになると思うけど、この組織に時間を投資する価値は感じられる?単純計算しても50万くらいの価値はあるけど」という質問です。

つまり、短期的な損得ではなく長期的に価値を見いだせるか、シナジーを生めるかという点にこそ注意を向けるべきなのです。

この質問を相手に投げかけるようになってから、一度考えさせてほしいとの返答をもらうことも増えました。
もちろんそれをすることで採用に繋がらないケースも多くあります。これはまさに、No-Dealです。

しかし、結果的にみれば相手にとっては他に時間を使うべきことが見えてきた状態ではありますし、我々にとってもその採用枠や時間を他の人にかけることができます。つまり結果的に見れば、No-Dealという選択肢は双方にとってWin-Winであるとも考えられます。

これから研修を受ける方々へ

今回の研修は働く上での様々な場面で応用が効く内容です。それは今回紹介したような採用の場だけでなく、顧客との折衝の場でもそうでしょう。顧客とのコミュニケーションにも常に人件費がかかり続けます。そのように考えると契約に繋がらない関係性を続けるのもお互い損をする関係性になってしまいます。

人と関係性を作っていくことで社会が回っていると考えれば、その関係性は何が理想で、その理想的な関係性を作り、保つにはどうすれば良いのか、その方法が学べる研修です。

今回の研修で学んだこと

  • 第4の習慣:Win-Winを考える
  • 第5の習慣:理解してから理解される
  • 第6の習慣:相乗効果を発揮する
  • 第7の習慣:刃を研ぐ
  • No-Dealの関係性

この記事の著者/編集者

信宗碧 早稲田大学 文学部 美術史コース  リーダーズカレッジ リーダー 

就職活動を通して就職後のキャリアを楽しみにしている学生が少ないことに課題感を覚え、大学生に向けたキャリア支援を行うNPO法人『エンカレッジ』に加入。
納得したキャリア選択のためには視野を広げることや自分の中のバイアスに向き合うことが重要だと考え、学生に考えるきっかけを提供できる企業案件の担当するセクションのリーダーを務める。

現在10人規模のメンバーのマネジメントと支部のブランドイメージ構築に向け、活動しています。

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