日常のコミュニケーションは未来への「投資」となる

今月の研修:社会人の持つべき習慣(前半)

はじめに

みなさんは、周りの人たちとどれぐらい「話していますか?

皆さんの頭の中には、「ああ、あの人と久しく話してないな…」という人もいるかと思います。と同時に、「連絡するのは暇な時でいいかな…」「ちょっと連絡するの面倒だしな…」と考えることもあるでしょう。

果たして、そのコミュニケーションは本当に「後回しにしていい」「面倒だ」で済ませていいものなのでしょうか。ただ意味もなく話したいというたぐいのものであれば、確かに「後回しにしていい」のかもしれません。しかし、緊急性に迫られていなくても「ひと手間」がのちのち大切になることもあるのです。

日常的なコミュニケーションを疎かにすると…

ここでの日常的なコミュニケーションとは、「何かの締め切りに追われて行われるものではないが、周囲との関係を築くため長期的に重要なやり取り」のことを指します。この習慣を疎かにしてしまった場合、どういった未来が待っているでしょうか?

日常的に話さない相手の状況は分かりづらいからこそ、何かが起きたときにまず「相手のことを知る」時間が必要になります。すると、実際の行動に移るのは遅くなってしまい、後手後手の対応となってしまいます。後手後手の対応はやがてその場しのぎの対応へと変わっていきます。

ドタバタしてしまった時こそ、人間はミスを起こしてしまいがちです。時間に追われることで、想定外の事態に振り回されてしまうのです。ミスが一度起きると、それをカバーしようとさらに焦りが生まれ、さらなるミスにつながることもあります。失敗は連鎖してしまうということです。失敗の連鎖によってイライラしてしまったり、他のことへのモチベーションが下がってしまうこともあります。

こうして疲弊した人間は、生産性のないことに時間を費やしてしまいます。すると時間的な余裕はさらに無くなってしまい、追い込まれることでさらに日常的なコミュニケーションを後回しにしてしまうのです。

日常的なコミュニケーションに時間をかけると…

所属するNPO団体が直面していた課題

そんな悪循環は、日常的なコミュニケーションを大切にすることによってどう変わるのでしょうか?所属するNPO団体での私の経験を使って説明していきます。

私の所属するNPO団体では、活動期間が原則一年間と決まっているのですが、その一年間を待つことなく離脱してしまうメンバーが続出していました。組織に入った当初の私は、「無給での活動だしそんな人がいても仕方ない」と考えていました。

しかし次第に、自分と仲が良いメンバーも相次いで離脱するようになっていました。私は、この離脱の真因が別にあると考えて、離脱した仲間達の声に耳を傾けました。その時共通して聞かれた言葉が、「普段の会話が少なくて、いざというとき頼れる人が組織の中に少ない」というものでした。

私はこの言葉に接して初めて、メンバーの離脱が日頃のコミュニケーション不足に由来していると気付きました。そして、メンバーの離脱という課題は「仕方ない」ものではなく、「解決しうる」ものであることに気付きました。

コミュニケーションの大切さに気付いたことで…

以降の私は、こだわりを持って周囲と向き合うようになりました。それぞれのメンバーに何か起きてから話しかけていた私が、気付いたタイミングでふと声をかけられるようになったのです。また、メンバー自身が考えていることを鋭く感じ取るため、メンバーの「やりたいこと」へまず着目して、それを基にタスクを渡すようになりました。

この変化に伴って、自他ともに想定外が大きく減りました。あらかじめメンバーと対話を重ね、その強み・弱みやモチベーションの源泉についても理解が進んでいたからこそ、「この人にはこういうことを任せよう」と事前に考えられるようになりました。何かタスクが発生したときも、当該メンバーへ一度確認を取るだけで納得してもらえるようになったのです。

「準備できている状態」を早めから作れていることによって、自らの想定範囲内で行動できるようになった実感を持っています。だからこそ、周囲とのコミュニケーション量は絶対的に増えたにもかかわらず、その負担感は自分の中で減っていったのです。

負担が減ったことで、「後輩たちへ団体の意志を継ぐ」というミッションを持った別のプロジェクトに関わる余裕も生まれました。このプロジェクト自体も長期的に大きな意味を持つと納得できるからこそ、やりがいを感じながら取り組むことができています。これもひとえに、日常的なコミュニケーションという「投資」のおかげです。

つまり、日常的なコミュニケーションを続けていると想定外の事態が減り、自分にかかる負担が軽くなることで、結果的に生まれた余裕を他の価値ある活動へと「投資」できるようになるのです。

おわりに

さて、日常的なコミュニケーションがいかに有効で、かつ重要かについて述べてきました。この記事を通して、少しでもその重要性を認識いただけると幸いです。

現代社会はとても便利で、SNSも用いながら簡単にコミュニケーションが取れてしまいます。一部の人はこの発展にあぐらをかき、「いつでも連絡が取れるから」と対話を軽視してしまうのかもしれません。しかし、ここまで読んでくださった皆さんであれば、日常的なコミュニケーションの大切さに気付いていらっしゃると思います。文明の利器を用いながら、忘れがち・滞りがちだった連絡をしてあげてください。豊かな未来を生み出すための第一歩目の「投資」としては、これ以上ない選択肢なのではないでしょうか。

これから研修を受ける方へ

今回の研修は、目の前の締め切りに追われる感覚に陥ってしまっている人にお勧めです。そんな人たちこそ、「何が本質的に重要なのか」を物差しにして知恵を使い、緊急のことでなくとも重要なら先んじて行動できるようになる、そんな研修だと考えています。

今回の研修で学んだ内容

  • 課題が生じたときはその原因を考え、見方を変えていくべきだということ
  • 自分に対して責任を持つことを第一歩に、その先の顧客やチームにまで責任を持った組織でなければならない
  • 自分の行動を変えることが、組織全体を変えるための第一歩である
  • 重要な成果は、知的創造と物的創造の両方によって成立する
  • 「緊急でなくても重要なこと」を重んじることで、生活は次第に豊かになっていく

この記事の著者/編集者

原駿介 早稲田大学 商学部  

エンカレッジ早稲田支部 CC副部署長

神奈川県川崎市出身。
積極的に行動できる性格と丁寧な対話力を活かし、これまで数多くリーダーポジションを経験。
高校の生徒会組織において代表の一人を務め、大学ではサークルとゼミにおいてそれぞれ副代表を務める。
現在、大学生のキャリアについて考えるNPO団体エンカレッジに所属し、1,2年生向けサービスを統括する副部署長を務めながら、後輩たちの育成を行うプロジェクトでも活躍。

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