罰回避だけがモチベーションとならないために

今月の研修:リーダーシップパワー理論

はじめに

自分がやろうと思っていること、やらなければいけないことのうち、当初自分が思い描いた通りに熱心に取り組めていないものがあるという経験はないでしょうか。例えば、学期の初めに、この問題集を解ききろうと決めていても、学期の中頃にはやる気が続かなくなって断念してしまったり、週末に、来週はこの案件にかたをつけるぞと意気込んでいても、いざその週が始まると、何か理由をつけて期限を自分の中で伸ばしたりすることなどが、この例です。そのような人は、他人の決めた締め切りをモチベーションにするしか、物事をこなせないことが多いのではないでしょうか。

今月の研修テーマである、リーダーシップパワー理論は、人間的な成熟度の高さによって、影響を受けやすい力が変わる、というものです。そして、成熟度が低い人は、懲罰を与える力の影響を最も受けます。これは、向上心を常に維持できないことにより、モチベーションの維持を、罰を回避するという低いレベルの動機に頼らざるを得ないからです。

先ほど述べた、締め切りをモチベーションにする状況というのも、締め切りを過ぎてしまうことで生じるであろう罰から逃れたいという心理から生じます。この記事では、懲罰を与える人の影響をよく受ける人が、その状態から脱却するにはどうすればいいかを、私なりの考察を交えてお伝えしようと思います。

リーダーシップパワー理論

先ほども述べたように、リーダーシップパワー理論とは、成熟度の高さによって、影響を受けやすい人の種類が変わる、というものです。具体的には、成熟度が高いほど、専門性の力を持つ人>人間的魅力を持つ人>情報力を持つ人>社会的地位を持つ人>人脈力がある人>報酬を与えてくれる人>懲罰を与える人、からの影響を受けやすくなるとA&PROは考えます。つまり、成熟度が高い人ほど専門性の力を持つ人の影響を受けやすく、成熟度が低い人ほど懲罰の力を持つ人の影響を受けやすいということです。

ここで注意しておきたい点が2つあります。まず1つ目は、影響を与える側の人が、状況によって懲罰の力を用いて人を導くのは、必ずしも悪いわけではないという点です。例えば、何かを始めたての人や子供が、何もわからずに危険なことをしかけている場合、急いで止める必要があります。そして、そのような時には懲罰の力は大切になってきます。ですが、影響を受ける側の人がいつまでも懲罰の力に頼っているようでは、いずれ懲罰の力に依存する状態になりかねないので、影響を与える側の人は懲罰の力を必要以上に使い続けないよう注意が必要です。

そして2つ目は、分野ごとに自分がどのような人から影響を受けやすいかは変わりうるという点です。例えば、部活に関しては、情報力や専門性の力を有する人に影響を受けやすい一方で、勉強に関しては懲罰の力を持つ人の影響を受けやすい、ということも考えられます。

より高い成熟度に到達するには

時間が経つにつれていつの間にかやる気がなくなってしまう原因の1つに、自己目的化が起こってしまって、その目的に対して意義を感じられなくなっていることがあります。例えば、はじめは数学の力をつけるために問題集を200問解こうとしていたのに、気付いたら200問解くことがゴールになっていて、問題集を解くこと自体の意義が薄れてしまう、ということです。そのような状況に対しては、元々の目標を再認識することによって再び向上心が生まれ、専門性の力を持つ人の影響を受けるようになるでしょう。

また、目的の認識ができていないまま手段だけ提示されていて、その手段を実行することにやる気がわかないという場合は、目的を認識することでやる気がわくでしょう。例えば、素振りを200回やるまでは球を打ってはダメだと言われたとき、作業のように集中せず何も考えず取り組んではいけません。球を打った時にいいフォームで打って上達がはやくなるように、ひいてはもっと試合で勝てるように素振りをするのだという意識を持っていれば、「いいフォームを身に付ける」という目標を持ちながら集中して取り組めます。すると効果も上がる上、やっている本人自身がその時間や練習を有意義だと思えて一石二鳥です。

このように、目的を知ることで、その目的を達成しようという向上心が生じ、専門性の力に影響されるレベルまで成熟できると思います。

これから研修を受ける方々へ

私は、今回学んだリーダーシップパワー理論をもとに、懲罰を与える人の影響を受ける状態から脱するためには何をすればいいかを考えました。私の結論は、背景にある目的や目標を認識し、目的・目標をモチベーションと結びつける、ということです。物事に対してもっと上手くなりたいと思ったり、極めたいと思ったりする向上心により、より成熟度が高くなります。そして、懲罰の力ではなく、専門性の力などの影響を受けるようになります。周囲に懲罰を与える人から影響を受ける人がいた場合も同様に、背景にある理由などを説明することで、成熟度を上げることができると思います。

このように、リーダーシップパワー理論を単に学ぶだけでなく、日々に落とし込むことは重要です。皆さんも、何かうまくいかないなと思う時があったら、自分は今どの段階にいるのかを確認し、成熟度を高められるように行動していくことで解決を図ってみてください。この研修を通して、自分が何の力から影響を受けやすいか、じっくり考える機会が持てます。そしてそれは、自分の現状を客観的に確認することにとても役立ちます。ぜひ研修を受けて、そのことを体感してください。

研修で学んだこと

  • リーダーシップパワー理論
  • 分野ごとに、どの精神レベルかは異なる
  • 信頼残高

この記事の著者/編集者

福井 寛之 東京大学 前期教養学部  

最新記事・ニュース

more

「メラビアンの法則」や「真実の瞬間」と向合い、各メンバー自身がブランド形成の重要要素であることを自覚していきます。 「目配り」「気配り」「心配り」の各段階を理解し、「マナー」「サービス」「ホスピタリティ」「おもてなし」の違いについて研究。 「マニュアル」「サービス」を理解・実践するのは当然。 「ホスピタリティ」「おもてなし」を顧客・メンバーに提供したいリーダーのための研修です。

島元 和輝 荒 諒理 川瀬 響 3Picks

行き過ぎた完璧主義は仕事を停滞させるだけでなく、自分自身を苦しませてしまいます。本記事ではプロジェクトマネジメントを題材に、自分の良さをかき消さず、最大限発揮する仕事への取り組み方を考えます。完璧主義で悩んだことのある皆さんに是非ご覧になって欲しい記事です。

左貫菜々子 藤井裕己 谷 風花 大庭彩 4Picks

プロジェクトマネジメントを機能させる土台となるのが『理念のマネジメント』 プロのリーダーは、「権威のマネジメント」を避け、「理念のマネジメント」を構築し、維持し続ける。 「好き・嫌い」や「多数決」ではなく、説得力ある提案を互いに尊重する文化を構築したいリーダーのための研修です。

荒 諒理 木藤 大和 島元 和輝 川瀬 響 4Picks

復習回数を闇雲に増やしたり、ノートいっぱいに何度も書かせる記憶法は、社会に出てから通用しない。 多忙なリーダーは、重要事項を一発で覚える。 たとえそれができなくても、復習回数を最小限にし、効果的・効率的に記憶することが大切。

「やばい、キャパオーバーしていて仕事を回しきれていない・・・。」成果を生み出すためにリーダーを務め、多くの責任を引き受けたのはいいものの、こうした悩みを抱く方は少なくないと思います。本記事は、リーダーの方の中でも、「仕事を回しきれていない。」と実感している方、経験した方、キャパオーバー対策したい方に届けていくことを想定して進めていきます。キャパオーバーは解決できます!

そもそもプロジェクトとは何か。それを知ることによって、あなたが現在取り組んでいる活動をもっと豊かにすることができるはずです。プロジェクトの基本を学び、そのプロセスについて考えてみましょう。

大庭彩 上野美叡 2Picks

タスクには明確に優先順位が存在し、正しい優先順位でタスクに向き合うことが締め切りへの余裕につながります。緊急度と重要度のマトリックスを用いて改めてタスクへの優先順位をつけることを意識したいです。

大庭彩 1Picks

皆さんがリーダーを務める組織にはMVVやスローガンと言ったメンバー全員が認識している「共通目標」はありますか? そして、今その「共通目標」を何も見ずに口ずさむことができますか? もし、一度決めたことがある共通目標が形骸化してあまり浸透していない場合は私と同じ苦悩を経験するかもしれません。

大庭彩 1Picks