備えあれば憂いなく、憂いなければ道は拓く

今月の研修:サービス理論(基礎1)

はじめに

「大事な時にビビる癖あるよね。」

私は22年間、こう言われてきました。そして、その言葉を言い返すことはできませんでした。なぜならその通りだったからです。

皆さんの中にも、大事な時に迷いが出てしまうと感じる人は少なくないはずです。特にリーダーのポジションにいると、この迷いはより致命的になり得ます。自分自身の迷いが伝播して、チーム全体の迷いにも繋がってしまうからです。今回の記事は、リーダーとして羽ばたくであろう皆さんが、迷いを振り切って力強く一歩を踏み出すことを目標としています。

リーダーならではのサービス

リーダーであることは、それ自体が周囲に対してプラスの価値にも、マイナスの価値にもなります。つまり、リーダーそのものが形のない「サービス」なのです。

無形のサービスだからこその特徴はいくつか存在しますが、今回着目したいのはその「非分離性」です。具体的には、「生産者」が何かの価値を生産するタイミングと、「消費者」がその価値を消費するタイミングが同時だということです。これは即ち、「生産」後の品質管理ができないことを指します。

ではどうすれば価値を相手に届けることができるのか。その唯一解こそ「備え」だと考えます。ただなんとなく備えるのではなく、当たり前を疑うほど備えることだと定義します。

「なんとなく」と「当たり前」の境界線は、その人の内面に存在します。「よし、準備は万全だろう」と思い込んだ時点で、その準備は「なんとなく」なのかもしれません。

私なりに備えたこと、その結果

私の経験、その背景

私が準備の大切さに改めて気づいたのは、このA&PROの場所でオフラインのイベントを開催させていただいた時です。

「大学生の未来をサポートしたい」という共通の想いを胸に、私が所属していたNPO団体"en-courage"とA&PROがコラボレーションし、私が橋渡し役となって就活生向けのイベントを設計していきました。団体ではオンラインでのイベントが主流だった中、オフラインでのイベント開催そのものが挑戦でした。

元々このイベントを設計したのも、既存のイベントの「当たり前」への疑問意識からでした。団体ではイベントがパッケージ化され、プログラムも均一化されていました。その「当たり前」は、多くの就活生に価値を届けるために合理的ではあったものの、より一人一人へ焦点を当てた価値提供がしたかった私は、より細部にこだわったイベント準備を徹底しようと考えました。

私がこだわったこと

このイベントにおいて私達が特に「備えた」ことは、主に2つ挙げられます。

一つ目は参加候補者への声掛けについて、「誰に声をかけるか」まで決めてから実施したことです。

従来の団体のイベントでは、とにかく多くの人に参加してほしいという観点から、対象者全員に声をかけていました。一方今回は、「参加者一人一人に価値を感じてもらう」ことが大目標でした。だからこそ、メンバーが「この人なら価値を感じてくれそう」と思える人を選ぶ「ひと手間」を加え、その候補者のみに個別で声掛けを実施しました。オフラインで人数を絞る必要があるからこそ、より求める人へクリティカルな価値を届けるために、必要な準備でした。

二つ目はイベントの内容について、タイムスケジュールを一分単位で設定したことです。

従来の団体のイベントは1時間が一般的でしたが、項目をいくつか設定するだけで、時間についてそれ以上用意をしていませんでした。一方今回は、「参加者一人一人に価値を感じてもらう」ことが大目標でした。だからこそ、参加者がどう受け取るかを想定しながら、計30以上のプログラムで「どう参加者に問いかけるか」まで想定する「ひと手間」を加え、リハーサルも行いました。どんな人がいても価値を提供できる設計にするために、必要な準備でした。

結果と気付き

イベントは大成功に終わりました。アンケートの数値という表面的な結果だけが根拠ではありません。参加者から次々と、「次のイベントはどんなものか」「個別に書類選考の添削や模擬面接をやってほしい」と声を貰えたのです。「もっとサービスを受けたい」と自発的に思ってもらえること、それが無形サービスにおける真の満足度だと私は捉えています。

成功の本質的な要因は、もちろん「備え」です。不安や迷いを消してしまうほど拘って「備える」ことは、サービスそのものの道を拓きました。して、「大学生の未来をサポートしたい」というビジョンの実現にもつながったのです。

補足するならば、周囲への感謝も欠かすことはできません。この取り組みは一人では到底不可能でした。運営メンバーには改めて感謝したいと同時に、入念な「備え」には多くの人の協力が必要になってくることを実感しました。周囲と手を取り合うことで初めて「備える」ことができることに、改めて気付くことができました。

おわりに~心配性の貴方に向けて~

今回の私のエピソードは、誰にでも適用しうるのではないでしょうか。学生生活でも就職活動でもビジネスでも、「一段先の備え」は人を前進させるはずです。

そして「備え」は、不安を感じる人こそ徹底すべきです。大事な時に湧きあがっていた迷いは、嫌なぐらいのしつこい準備で晴れてしまうこともあります。今までやっていた「当たり前」の準備を見直し、「もう一歩先まで」準備することは、悩みを晴らすときのカギとなり得ます。

何を隠そう、私自身が後ろ向きになりがちな人でした。そして先述したように、「備える」ことでこの不安を解消でき、成果にもつながった経験を経て、自信を身に着けました。皆さんも成功体験を積みながら、一歩ずつ前進していきましょう。

備えがあれば憂いはありません!さらに、憂いがなければ道は拓くことができます!

これから研修を受ける方へ

「周囲へ確かな価値を発揮できる」人になるために。サービス理論の学びを通じ、無形だからこそ品質にこだわり抜くこと、どんなことが起きても最高のサービスを提供するための「準備」を怠らないことの大切さを強固に学べる、そんな研修です。

今回の研修で学んだ内容

  • 無形サービスは生産と消費が同時だからこそ、事前に品質を管理する必要性が高まる
  • 無形サービスは提供者や時間、場所によって質が大きく変わる
  • 無形サービスのキャパシティには限界がある
  • リーダーという存在そのものが「無形サービス」で、上記の特徴を持つ
  • サービスの品質はあらゆる決定要因により変動するからこそ、まずはその要因をチェックすることが肝要である
  • One to Oneマーケティングでは顧客の状況に応じて、適切な「差別化」が有効である
  • 無形サービスは「モジュール化」が有効で、部品を「あとは組み合わせるだけ」にしておくと、顧客に合わせた設計ができる

この記事の著者/編集者

原駿介 早稲田大学 商学部  

エンカレッジ早稲田支部 CC副部署長

神奈川県川崎市出身。
積極的に行動できる性格と丁寧な対話力を活かし、これまで数多くリーダーポジションを経験。
高校の生徒会組織において代表の一人を務め、大学ではサークルとゼミにおいてそれぞれ副代表を務める。
現在、大学生のキャリアについて考えるNPO団体エンカレッジに所属し、1,2年生向けサービスを統括する副部署長を務めながら、後輩たちの育成を行うプロジェクトでも活躍。

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 大庭彩

    2023年11月09日

    “「よし、準備は万全だろう」と思い込んだ時点で、その準備は「なんとなく」なのかもしれません。”


    大丈夫だろう、と思い臨んだものと
    不安だから準備しておこう、と思い臨んだものとでは
    後者の方がよい結果につながるという体験。

    私自身も経験しており、納得しました。
    準備の重要性は理解しているつもりでしたが
    その質の違いは“不安”と大きく関係している可能性があること。
    大切な学びとなり、今後の活動に活かせそうです。

    貴重な価値提供をありがとうございます*

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