『押し売り業者』から『1番の相談相手』へ
2023.07.06
One to Oneマーケティングの本質
■今月の研修 サービス理論(基礎2)
企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。また顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。
wikipedia
上記は、日常生活で1度は聞いたことがあるであろう「マーケティング」という単語の説明文です。今回の研修では、このきわめて抽象的な概念に思えるマーケティングの中でも、One to Oneマーケティングという考え方を、日常の具体的な事例と関連付けながら深掘りました。
明確な「営業職」「マーケティング職」に就かれている方のみならず、無形サービスを扱うすべての社会人の方に向けた、問題提起を含んだ記事ですので、ぜひ最後までお読みください!
MassマーケティングとOne to Oneマーケティング
One to Oneマーケティングと対比されるものとして、あるサービスの市場内シェア(より多くの人にそのサービスを利用してもらうこと)を重視するMass マーケティングがあります。例えば、「世界人口の7割をiPhoneユーザーに!」といったところでしょうか。一方、One to Oneマーケティングの最上段の目的は、自社全体の顧客内シェアを拡大させることです。
では、顧客内シェアとは一体どのようなものなのか?次のカセットで考えていきます。
顧客内シェアとは?
一般的に想像される顧客内シェアは、自社のサービスを繰り返し、かつ幅広く利用してくれているか、の度合いではないでしょうか?先ほどの例で考えると、iPhoneを利用してはいるが、用途は通話のみ、という場合は顧客内シェアが低い状態であるといえます。反対に、通話のみならず、買い物や日々の体調・金銭管理等をiPhoneで行い、趣味の読書や映画鑑賞にiPadも利用している場合は、Apple社全体としての顧客内シェアが高い状態であると言えるでしょう。
しかし私は、顧客内シェアを、「サービス利用状況」と同義を捉えるだけでは不十分であると考えます。以下が、私が今回の研修を通じて得た、本記事前半のキーメッセージです。
「サービス利用状況」は、顧客内シェアを構成する1つの要素でしかない。
顧客内シェア=「顧客1人1人のお役に立てた総量」であり、顧客の役に立つことを追求し続けることが、One to Oneマーケティングの本質である。
先に断りを入れますが、この主張には、普遍的に通用する演繹的な根拠やロジックはありません。では、なぜそのような主張を敢えて記事で発信するのか?理由は、私自身が理想とするビジネスマン、もっと言うと1人の人間に近づくための心構えを、この主張は教えてくれている気がするからです。
このような伝え方をすると、単なる個人的な主張に思えるかもしれません。ですが、必ずや共感してくれる人がいる、そうした期待を持ちながらこの先の記事を書きましたので、ぜひ最後までお読みいただけたら嬉しいです。
「押し売り業者」から「相談相手」へ
顧客内シェアを分析する上での3本柱
- 利用期間が継続的か
- 利用範囲が多岐にわたるか
- 自社(のサービス)が、顧客の心の中で自然と想起されるかどうか
上記が、顧客内シェアの大小を判断する上で重要であると考える観点です。Apple社の例で考えれば、➀iPhoneを長期間愛用し、➁複数の端末・サービスを利用しながら、➂新機種・サービスを利用したいと思った時にApple社の製品を検討してみようと思う、といったところでしょうか。
そして顧客1人1人のお役に立てた総量を増やすことを考える際、特に3点目は、多くの人が見落としがちな観点なのではないでしょうか。
というのも、1.2点目については定量的なデータとしても容易に測定され、実際の売り上げ・成果としても分かりやすく目に見えます。一方3点目については、そもそも測定が難しく、なかなか直接的な評価には繋がらない要素です。
もちろん、収益に繋がる売り上げ・成果としての1.2点目は重要です。しかし3点目は、中長期的に効率的に成果を出すための、いわば「種蒔き」ができているかどうか、という意味でとても重要な観点だと考えます。どういうことなのか、以下でご説明します。
将来に向け、種を蒔いていく
いかに継続的かつ多岐にわたって自社のサービスを利用してもらうかを考えると、顧客に自社サービスを直接紹介することが、通常の行動でしょう。しかしこれだけでは、毎回企業側から顧客にアプローチする必要があり、よほどのマンパワーや広告チャネルがない限り、「コストを投下した分だけ売り上げも伸びる」タイプの成長には、限界があります。
一方、顧客が自然とリピートしたくなる。または、何か困った時に頼りたくなる。企業(のサービス)がそのような存在だとしたら、極端な言い方をすれば、営業・広報活動は不要でしょう。さらには、こうしたコスト削減のみならず、口コミ等により自然と第3者にも魅力が伝わることで、売り上げは時間が経つほどに増える、つまり指数関数的な伸びを見せるかもしれません。
その会話、きっかけは「顧客」「あなた」どちらから?
先述の両者の差は、コミュニケーションの発信源が企業と顧客どちらにあるかです。当然のことながら、最初から自社サービスに興味を持ち、利用を考えている顧客には、実際にサービスを購入していただける確率が高いでしょう。
企業側の人間としては、目の前のお客様とのコミュニケーションのきっかけがどちらにあるか、この点を考えることで、極端な言い方かもしれませんが、自分が「押し売り業者」なのか「相談相手」なのかがわかるはずです。コミュニケーションの矢印が「顧客→企業」となる理想の状態を目指しましょう。
お客様にとっての“1番”の相談相手であるために
長くなりましたので、簡潔にここまでの内容をまとめます。
- One to Oneマーケティングの本質は、顧客1人1人のお役に立つこと(=顧客内シェアの増加)
- 自然とリピートしたくなる、困った時に相談したくなる存在であることで、営業や広告に頼るよりも大きな成果が将来的に見込める
- 上記のような存在かどうかは、コミュニケーションの発信源によって判別がつく
それでは、具体的にどのような心構え・行動が必要なのでしょうか。私なりの答えが、以下の通りです。
お客様と将来的にWin-Winな関係になること信じ、圧倒的Giverであり続けよう
(⇔今を逃したら2度とチャンスはない、できるだけ高額なサービスを売ろう)
目の前のお客様が、自社のサービスを購入するかどうかは、企業側の要素だけに依存しているわけではありません。財政的・時期的要素など、企業側にはどうすることもできない要素がたくさんあります。まずはそうした当たり前を認識しましょう。
そして長期的視野を持って関係を続けていくことが大切です。仮に「今すぐ」目に見える契約に結び付かないとしても、そこで関係を終わらせてはいけません。何かしらお客様の“お役に立つ”情報をお届けしたり、お客様の現状を気にかけ必要であればさりげなく助言をしたり、企業側にできることはたくさんあります。
つまり先ほどお伝えした「圧倒的Giver」とは、単にこちらからモノ・情報を一方向的に渡すだけでなく、私たちは、いつでもお客様のお役に立つ準備ができています、というメッセージを行動で示し続けることなのです。これが記事中盤でお伝えした「種蒔き」そのものです。
私は4月から入社する会社で、企業の新卒採用や組織・人事制度設計全般をご支援する仕事に就きます。俗に言われる営業もします。だからこそ、「圧倒的Giver」となり、どこかのタイミングでお客様にとっての頼れる存在=「1番の相談相手」になる、そんな社会人を目指して日々仕事に取り組んでいきます。間違っても、単なる「株式会社○○の営業担当者」にはなりません。
これから研修を受ける人へ
A&PROでは常々、知識だけ・机上の空論にとどまらず、実践まで落とし込むことを大切にしています。今回の研修では、「マーケティング」という、よく聞くが体系的に学んだことのない言葉をテーマに学びを深めました。
これから社会人になり本格的にビジネスに携わる私にとっても、大切な心構えや、それを体現するための具体的な行動にまで落とし込めたことは、とても価値あることでした。
また今回学んだことは、ビジネスに限らず人間関係そのものにも当てはまる部分が多いと感じます。参加者によって得られる学びは様々な研修かと思いますので、ぜひ一度ご参加いただき、このように記事として発信・シェアしていただければと思います!
研修で学んだこと
- 顧客内シェアを向上させたかどうかの最上段の判断軸は、「顧客のお役に立てたかどうか?」
- 学習関係は、企業対顧客だけでなく、顧客対顧客の構造もあり得る
- カスタマイゼーションの本質は、相手に選択肢を与えること
- 顧客識別のフレームワーク RFM
- リーダーは、メンバーに対してOne to Oneマーケティングの考え方をもって接すると、より豊かなマネジメントができる
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新着コメント
2023年07月06日
「将来に向け、種を蒔いていく」という考え方の重要性を再確認しました。
営業や広告はサービスを利用してもらうための入口として、重要な役割を果たしますが、それだけに頼るのではなく、顧客が自然とリピートしたり頼りたくなるような存在・サービスであることが重要であると述べています。
このアプローチは、顧客との信頼を築き、持続的な成功を実現するために非常に重要であり、意識を持ち続ける必要があると学びました。