学生団体での記事執筆活動から振り返るサービスへの信頼

今月の研修:サービス理論(基礎1)

今回の研修では、無形サービスの特徴と、サービス品質を決定する主要な要因について学びました。この記事では、私が約1年間エンカレッジというキャリア支援の学生団体で担当してきた記事執筆を中心とした活動について振り返ります。

エンカレッジにおける大学1、2年生向けサービスの中での記事の役割と必要とされる視点を通して、有形サービスによって無形サービスの弱みをカバーすることについてお伝えしていきます。

無形サービスの特徴と、事前の計画

研修では特に、無形サービスの特徴とサービス品質の主要な要因について焦点を当てました。無形サービスの特徴としては以下の4点があげられます。

  • 無形性:サービスが目に見えないこと
  • 非分離性:サービスの生産と消費が同時であること
  • 変動性(多様性):サービスが提供者や時間により変化すること
  • 即時性(消滅性):サービスの在庫を持てないこと

塾での授業を例に取ります。授業は文房具のように目に見える商品ではありません(無形性)。また、授業というサービスは講師が話す瞬間に生産され、その場で生徒が聞くことで消費されます(非分離性)。このような授業の詳細な中身は提供者である講師ごとに異なりますし(変動性)、シャープペンの替え芯を買うように在庫を持つことはできません(即時性)。

無形サービスは以上のような特徴を持つ一方で、これらが課題を生むこともあります。上の例であれば、授業は即時性を持つため、ある講師の授業を受けたい生徒が多くても教室に収まりきらない人数の生徒が授業を受けることはできません。

しかし、このような課題へはサービスの一部を有形化する、または提供者ごとの品質差を減らす底上げを徹底するなどの対策ができます。上の例であれば人気のある講師の授業を録画して配信することが考えられます。一方で、この場合生徒からの質問にその場で答えることはできません。どの部分を有形にしてどの部分を無形にするかによりサービスの特徴も変化します。

また、サービス品質の決定要因にも以下のような主要な要素があります。

  • 信頼性:約束通りのサービス提供をしてくれるという信頼
  • 反応性:積極的・迅速に対応し、潜在的なニーズにアプローチできること
  • 確信性:専門知識や礼儀などで、サービスの質を確信してもらえること
  • 共感性:顧客の課題に共感して一緒に解決しようとする姿勢
  • コミュニケーション:顧客に対して正確にそしてわかりやすく伝えること
  • 安全性:サービスが安全であること
  • 物的要素:サービスのクオリティが設備など形にも表れていること

面談サービスに対する記事の役割

私は1年間、エンカレッジにおいて記事執筆を行ってきました。大学1、2年生向けに、就職活動や学生生活に関する記事をインタビューなどの形式も交えて執筆しています。

エンカレッジが一番の強みとするサービスは面談だといえます。就職活動を経験した大学4年生が、後輩と1対1で面談し、学生生活をどのように送るかについてや1、2年生の段階から就職活動のためにできることなどについて相談に乗ります。コロナ禍においてサークル内での縦の繋がりが弱まりがちな状況では、特にこのように学生生活や進路について相談できる同じ大学の先輩の存在は貴重だといえます。

しかしながら利用者の立場に立つと、いきなり面談を申し込むというのは少々ハードルが高い行動となる場合もあります。面談を勧める際には先輩が後輩にチャットを介してサービスを紹介することが多いのですが、初めての面談について、チャット上の文章と申し込み用のページだけでは伝わりきらない内容もあるでしょう。この際、面談の具体的な内容についての公式な情報を十分に提示できることが望ましいです。

また、エンカレッジは就活支援を中心に活動してきたことから、大学1、 2年生に対しては就活生に対してよりも認知度が低いです。そのため、そもそもエンカレッジやエンカレッジを運営する先輩が信頼できると感じてもらうことが重要です。

そこで、後輩に十分な判断材料を提供するため、私の所属するセクションではHPでの記事投稿とTwitterでの投稿を行ってきました。例えば、様々な先輩がインタビュー記事に登場して自身の就活やサークルでの経験を伝えたり、時にはエンカレッジを過去に運営されていた社会人の方へのインタビューも公開したりしています。

つまり、面談というサービスの持つ無形性の持つ課題を、面談に関する情報や、面談を担当する先輩による記事を投稿することによりカバーし、信頼性・安全性を高めています

記事に求められるコミュニケーション・反応性・物的要素

運用していたHP

記事が面談への接続という役割を果たしつつも、後輩からすれば面談も記事もエンカレッジという一つのサービスとして後輩に認知されます。記事を執筆するにあたっては次のようなサービス品質の観点を意識してきました。

1つ目がコミュニケーションです。文字媒体ではありますが、情報を伝えるという観点では記事も一種のコミュニケーションです。サービス品質を決定する要因についてでもお伝えしましたが、正確な情報をわかりやすく伝えることが重要です。そうでなければ、読者は面談の申込みを検討するどころか、その記事を読むのを途中でやめてしまうでしょう。

2つ目が反応性です。潜在的に行動を起こそうとしている後輩に対し、目の前の知りたい情報だけでなく、さらに学生生活や就職活動について考え、行動してもらえるように有益な情報を提供することが先輩のできることです。

3つ目が物的要素です。記事やHP全体のレイアウトの見やすさも読者に与える物的要素のイメージとして重要な側面です。HPは後輩がエンカレッジに関して触れる最初の場所となることも想定されるため、HPが見づらければ、そのイメージがサービス全体に付いてしまいかねません。

今後の活動における反応性

上記の点について、研修を通して以下のような改善案を考えることができました。

まずコミュニケーションについて。就活においては「24卒(2024年に大学を卒業する学生のこと)」、「ガクチカ(学生時代に力を入れたことに関するエピソード)」などといった用語が登場します。このような用語についての表記ルールを設定するか説明ページを設けるといった対策をすることで、より読みやすい記事を提供できます。

そして反応性について。読者を育てる、面談を利用してもらうという目標を考えると、読者には就活やエンカレッジのサービスについての興味・関心の度合いをいくつかの段階に分けて想定することができます。記事の想定する読者がその段階のうちどの部分であるか詳細に決めておくことでより次の行動につながるような記事を執筆することや、段階別に連載化して無形サービスである面談の課題とする即時性をカバーすることができるでしょう。

研修を通して、無形サービスである面談の弱みを有形サービスである記事がどのように補強すべきか明確にすることができました。今後自分が携わるサービスにおいても、どの特徴が強みになっていて弱みはどのようにカバーすべきかといった視点を意識していきます。

これから研修を受ける方々へ

A&PROでは毎月の研修において、自分の携わっているプロジェクトで活用できる知識を得たり、それを題材にメンバーと話し合うことで新たなアイデア・視点を得たりすることができます。あなたは今携わっているプロジェクトの目的や課題などを、初めて聞く相手にも明確に伝えられますか。プロジェクトについて議論してさらに改善したいという方にA&PROの研修はおすすめです。

研修で学んだこと

  • 無形サービスの特徴
  • サービス品質の主要な決定要因
  • One to oneマーケティング

この記事の著者/編集者

田村稔行 早稲田大学 基幹理工学部 情報通信学科  

高校時代から英語の部活、サークルでの活動を続けており、大学では理工学部生向け英語サークルの代表を務めました。
更に、大学1、2年生がキャリアついて考える機会を提供すべく、大学生向け就活支援の学生団体「エンカレッジ」で活動。記事執筆やSNSの運用を行っています。

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