午前3:00の全力疾走

プロフィール

奨学生仲間とベトナムにて(写真右)

名前:久保井美愛
大学・学部:上智大学・外国語学部フランス語学科
研究:日仏の漫画におけるオノマトペ比較
部活:高校時代→生徒会会計(生徒数2,400人のマンモス校だったため、1,000万円以上の予算を管理)

趣味:読書(累計5,000冊以上)、音楽を聴くこと・歌うこと(ただし音痴)
アルバイト:新聞配達・集金、塾講師(最終的には王子・大塚・巣鴨・入谷・日暮里の5校舎で担当)

出身地:埼玉県上尾市(マスコットのアッピーくんは日本で初めて結婚したゆるキャラ。妻…まゆみちゃん〔福島県本宮市〕、娘…あゆみちゃん)
家族構成:3姉妹の長女(次女は看護師、三女は栄養士志望)
その他:卵・乳製品・グルテンフリーかつ無添加の食生活をしています◎

私の経験談

決意の朝、色のない街

「絶対に一人でやり抜く」

そんな強い想いを抱え、高校を卒業してすぐに家を出ました。大学に行く費用も生活費もすべて自分でやりくりすることにしたのです。そのために新聞奨学生として働きながら大学へ通う道を選びました。新聞奨学生制度とは、新聞配達や集金などの仕事をする代わりに、新聞販売店が学費を支払ってくれるというものです。貧困家庭かつ親との折り合いも悪かったため、中学生の頃から自立を目指していた私には打ってつけの制度でした。
そして高校卒業から3日後の3月18日。私は意気揚々として東京へやってきましたが、そこで厳しい現実を目の当たりにしたのです。

慣れない過酷な体力仕事、思うように上手くできない悔しさ、一人きりの心細さ……次々とぶつかる高い壁に、それまでの覚悟や認識の甘さを実感したのです。家を出た時は明るい未来を信じて疑いませんでした。しかし、現実を知るほどに塗りつぶされる幼い理想。あんなにも眩しく見えた世界は、いつの間にかモノクロの景色に変わっていました。

2016年3月25日 世界が崩れる音がした

新聞販売店の様子(翌日の朝刊に入れ込むチラシ)

そんな不安定な状態で過ごした一週間。本当につらかったのはここからでした。私に仕事を教え、目指すべき道を示してくれた前任者が卒業・就職のため、退店したのです。彼女もまた新聞奨学生として大学に通い、4年間立派に勤めあげた人でした。
誰も頼れる人がいない状況で出会った、自分と似た境遇でやり遂げた彼女。知らず知らずのうちに依存にも似た信頼を寄せていたのでしょう。彼女がいなくなったことで、私は本当に独りになってしまったと感じ、言いようのない不安に襲われました。

行き場のない感情が波のように押し寄せて滲む視界。泣いたのは実に10年ぶりでした。泣かないことが強いことだと思っていたのに。強く在りたいのに。そう思って何度こらえようとしても、こみ上げてくる涙が止まることはなく、その日は泣きながら帰路に就きました。この時初めて本当の自分を知り、己の弱さを認めることとなったのです。

肉体的にも精神的にも追い詰められた中、それでも何とかやり遂げられたのは「絶対に親元には帰らない」という意地にも似た強い意志と、新聞の仕事を教えてくれた前任者の言葉があったからです。彼女が退店する時にもらった言葉は今でも忘れられません。

「頑張っていれば必ず誰かが見ていてくれる。だから安心して頑張って」

この言葉をお守り代わりにして、とにかくひたすらに努力しました。朝刊の時間に寝坊して電話で叩き起こされたり、リスニングのテスト中に眠って赤点を取ったり、走りながら意識を飛ばして壁に頭をぶつけたり、大小さまざまなことがありましたが、そのたびにどうにか乗り越えてきました。こうして列挙してみると何だか寝てばかりですね(笑)笑い事ではない出来事もたくさんあるのですが、やりきった今となっては笑い話も同然です。

当時を振り返って笑えるのは、嬉しかったことや面白いエピソードの方が多いのも理由でしょう。原付に乗っているのに小中学生に間違えられたり、集金先でお菓子をたくさんもらったり、楽しい思い出もたくさんあります。お弁当を作ってくれたお客様や、会うたびにヤクルトをくれた配達先のマンションの守衛さん、毎月のようにごはんに誘ってくれた同期のベトナム人奨学生……。本当にいろいろな人に支えられてきました。前任者との別れの日にもらった言葉通りです。頑張りを見てくれる人、手を差し伸べてくれる人はたくさんいます。

夜明けの先に見えたもの

バイクも100㎏、新聞も100㎏

嬉しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、悔しかったこと。喜怒哀楽の色に満ちたあの日々があったからこそ世界が広がり、小さな自分を認めて本当の意味で成長できました。高校生の頃に描いていた理想とは違いますが、私は今の自分や生活を気に入っています。自分から目を逸らさずに向き合い、人に優しくできるようになったからです。それまでは何でも一人で抱え込もうとしていたので何事にも余裕がなく、余計に自分を追い詰めていたのだと思います。しかし、周囲に頼ることや肩の力を抜くことを覚えて余裕ができ、その分周りに目を向けられるようになりました。

そして新たに抱いた夢があります。それは、かつて私を支えてくれた人たちのように「誰かにとっての光」となることです。私はたくさんの素敵な出会いに恵まれて救われ、変わることができました。だからこそ、昔の私と同じように暗闇の中でもがいている人を照らせるような人間で在りたいと思っています。今は後輩をごはんに連れ出したり、行くあてのなかった友人を庇護したり、自分にできる範囲で少しずつ恩送りをしているところです。恩送りとは、読んで字のごとくある人から受けた恩を別の人に送ることを意味します。私がお世話になった人たちは、見返りを求めない人ばかりです。だから受けた恩は他の人たちに還元したいと思いました。そのためにあの時感じた気持ちと決意を胸に抱きしめて、今自分にできる最善を尽くしていきたいです。

私の夢

子どもの貧困が深刻化している昨今、子ども達の格差が広がりつつあります。約7人に1人の子どもが相対的貧困にあるにも関わらず、効果的な施策が取られていないのが現状です。私はこの問題を少しでも緩和するために、貧困家庭の親子にとってのセーフハウスを作りたいと考えています。自身も子どもの貧困層でしたが、運良くいろいろな助けや機会を得て今の状況があります。しかし、運や偶然などという曖昧なものに頼らなくても子ども達が選択肢を狭めることなくチャンスを掴めるような環境を整えたいのです。

また、ボランティアは即時的ではありますが依存性が高く、その場しのぎにしかならないため、ビジネスを絡めた根本的な解決を目指しています。そのために大学で児童福祉を学んだり、ビジネス化している社会貢献事業について調べたりしています。学外の起業スクールにも通いました。

この他に今できることとしては、人間的にもっと成長することだと考えています。たとえば部分的ではなく大局的な視野を持つことや、受容力を高めることなどが挙げられます。とはいえ、このようなことは大学では教えてくれませんし、自分だけではできることに限界があります。しかし、このように他では学べない多くのことを教わることのできる数少ない組織がA&PROです。この機会を存分に活かし、私の理想である「光」になれるよう、倦まず弛まず自分を磨いていきます。

この記事の著者/編集者

久保井美愛   

上智大学外国語学部卒。社会人として仕事に必要なノウハウや心構えを学ぶためにA&PROの研修に参加。大の読書家で、のべ5,000冊以上の本を読んできた本の虫。かつて「図書室の門番」という異名を付けられたことも(笑) 本から得た知識や自身のスキル・経験を活かして、皆さんに価値あるものをお届けします。

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