グラフや表を正しく読み取ろう!資料型小論文のポイント【小論面接】
2021.08.01
学習塾ヘウレーカ・小論文面接講座担当の遠藤です。
医学部を受験する生徒向けに、小論文と面接についての記事を毎月連載しています。ご参考いただけると嬉しいです。
※掲載している内容は小論文・面接の基礎知識です。これをもとに自身でアウトプットし、添削を受けて修正することで、スキルを向上させましょう。
小論文の問題形式は大分すると「テーマ型」「課題文型」「資料型」の3種類あり、前回は「課題文型」について、前々回は「テーマ型」について解説しました。
今回は「資料型」について、その特徴や解き方をご紹介します。
「資料型」とは?
「資料型」とは、与えられた図表・グラフ等の資料を活用しながら書く小論文です。
設問で求められることは、主に以下の2つです。
- 資料の読み取り
- 資料から読み取れることを基にした意見論述
ここからは、資料の読み取り方と、それを解答に反映するときに気をつけるべきことに焦点を当ててお伝えします。
※記事中で掲載している資料は全て架空のデータを用いて作成されています。
資料を正しく理解する
まずは、資料を正しく理解することから始めましょう。ここで誤ると、的外れな読み取りになってしまいます。
以下の説明文とグラフを見てみてください。
【グラフ1】
ジニ係数は、0から1の間の値を取ります。0に近いほど所得格差が小さく、1に近いほど所得格差は大きいことを意味します。下記のグラフ1は、A国のジニ係数の推移を示しています。
【グラフ2】
ジニ係数が高い順に並べた国別ランキングにおける、B国の順位の推移を示しています。
グラフ1では、縦軸(=ジニ係数)の値が大きいほど所得格差が大きいことになります。よって、A国の所得格差は年々小さくなっていると言えます。
一方でグラフ2では、縦軸(=ランキング順位)の値が大きいほど、世界規模でみると比較的所得格差が小さいことになります。よって、B国の所得格差は年々他国よりも大きくなっていると言えます。
このように、何を示したデータなのかによって、値の増減が意味することは全く異なるのです。
したがって資料を参照するときには、何を示すデータなのかということを正しく理解することから始めましょう。
データの特徴をつかむ
次に、資料から読み取れるデータの特徴を掴みましょう。
全体的な傾向や目立った増減に着目することで、その情報が意味することを把握しやすくなります。
そして、その特徴が過不足なく解答に含まれるようにします。
解答に全く反映されていない特徴や、詳しく書きすぎている特徴が無いようにしましょう。
そして、データから読み取れる情報を記述する時には、「グラフより」「表によると」といったように、どの資料から読み取ったことなのかを明記してください。
《グラフ例》
【グラフ3】
グラフ3によると、Cだけは男性よりも女性の値が高く、その他全ての項目では女性よりも男性の値が高い。
【グラフ4】
グラフ4によると、1999年までは一貫して増加傾向にあったが、1999年を境に減少傾向へと転じた。
事実と意見を混同しない
資料の読み取りを行う際に注意が必要なのは、事実と意見の混同です。
例えば、以下のような表を想定してみましよう。
【表1】
高校生が読書にかける時間の平均(1日あたり)
この場合、「全く読書をしていない高校生が多い」という解答はあまり適切ではありません。なぜなら、多い・少ないというのは主観的意見だからです。
適切な書き方は、「高校生の半数以上が全く読書をしていない」です。
ただし、他の数値と比較して「〇〇よりも多い」とするのであれば、事実として認められます。
また、次の2つの場合では、事実と意見の区別において特に注意が必要です。
1. 相関関係と因果関係
相関関係が読み取れるからといって、因果関係も事実として読み取れるとは限りません。
具体例として、以下のようなグラフが提示されたとしましょう。
【グラフ5】
横軸は世帯年収(万円)、縦軸は2型糖尿病の発症率(%)を示しています。
このグラフ5からは、世帯年収が低いほど2型糖尿病の発症率が高い、という相関関係があることはわかります。
しかし、世帯年収の低さが2型糖尿病を発症しやすくしている、という因果関係があるかどうかは読み取れません。
この因果関係を事実としてではなく推察として述べる分には構いませんが、あくまで推察であることを明示する必要があります。
2. 複数資料の関連付け
複数資料が提示される問題では、それらを関連付ける際に、事実と意見を混同しないように気をつけましょう。
例えば、下記2つのグラフをご覧ください。
【グラフ6】
X国における小学生の朝食頻度と学力調査の点数(2010年5月)
【グラフ7】
X国の小学生における、朝食を「毎日食べる」もしくは「ほとんど毎日食べる」と答えた人の割合(2000年~2016年)
グラフ6からは、X国の小学生は朝食頻度が高いほど学力が高いことがわかります。グラフ7からは、X国の小学生の朝食頻度は年々低下していることがわかります。
ここまでは事実ですが、これらを関連付けても「学力が年々低下している」かどうかはわかりません。
よって、「朝食頻度の低下は、小学生の学力低下に繋がる可能性があると考えられる」のように、推察として書く必要があります。
このように、資料から読み取れる事実なのか、それともその事実をふまえた意見や推察なのか、はっきりと区別して述べるようにしましょう。
資料の情報を意見論述と組み合わせる
資料から情報を読み取れたら、それをもとに意見を論述します。
最も典型的な構成は、以下の通りです。
- 資料から読み取れる情報から問題点を見つけ出す
- 解決策を提示する
先程のグラフ6、7の事例でいえば、
- 問題点:朝食頻度の低下は、小学生の学力低下に繋がる可能性があると考えられる
- 解決策:児童に朝食を摂らせるよう、学校で保護者向けの取り組みを行う
となります。
《解答例》
グラフ6、7から、小学生の朝食頻度の低下は、学力低下に繋がる可能性があると考えられる。それを防ぐために、児童に朝食を摂らせるよう、学校で保護者向けの取り組みを行うことが有効であると私は考える。
問題提起と解決策の提示については、次回以降の記事で改めて詳しくご紹介する予定です。
資料の正しい理解が鍵
以上が、「資料型」小論文の特徴と書き方についての解説でした。
最も重要なことは、資料を正しく理解し読み取ることです。
扱ったことのない数値や、大規模な社会問題を取り上げたデータなど、慣れない複雑な資料が提示されるかもしれません。
それでも、焦って答えを書き出そうとせずに、一つ一つ資料を読み解くことから行いましょう。
これさえできれば、あとはテーマ型や課題文型のノウハウを用いながら、小論文を仕上げることができるはずです。
※記事中で掲載している資料は全て架空のデータを用いて作成されています。
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新着コメント
2021年09月15日
遠藤先生の小論文講座。
大学生や社会人にとっても、役立つ内容です。
2021年10月29日
正しく資料を読み取ること、特徴をつかみ必要な情報を見極めること、事実と意見を分けて思考すること、現在の情報が溢れる時代において、どれも重要で必要な力だと思います。グラフの例がとても分かりやすく、記事を読んで頭が整理されました!