相手の話、どれだけ聴いていますか?
2021.01.28
今月の研修:社会人が持つべき習慣(公的成功)
自分を理解してくれない人には心を開けない
相手と思いを通わせられない。自分が思っていることが伝わらない。
そんな時はありませんか?
それは、自分が思っていることを「伝えよう、伝えよう」として自分の思いを言語化し、相手に押し付けているからかもしれません。
しかし、一番重要なのは自分の話をするのではなく「まず相手を理解すること」です。
今回は、相手を理解するための方法として、相手の話を「聴く」ということについて深堀っていきます。
お互いを信頼し合えるようになる聴き方
相手の話を聴くためには、「共感による傾聴」をしていく必要があります。
そして、「共感による傾聴」は、以下の2つのステップに分けることができます。
- 相手が話す言葉を繰り返すこと
- 相手の状況を自分の言葉に置き換え、気持ちを代弁すること
自分はこれくらいできている、と感じるでしょうか?
しかし、一見簡単そうに思えるこの行為も、最初から完璧には実行できません。
聴き続けることは想像以上に難しい
一番の落とし穴は、「気持ちのベクトルを自分に向けてしまう」ことです。
相手の話を聴いている時、人は得てしてとっさにアドバイスをしたり自分の気持ちを伝えたりしてしまいます。
しかし、「共感」をもって相手の話を受け入れる体勢を持っていないと、相手は「自分の話を伝えたいだけなんだ」と取り込まれているように感じてしまいます。
その共感を示し体現するために、「共感による傾聴」の2つのステップが大切なのです。
自分はできていると思っていた
私自身にも、話を聴いているようで自分の気持ちに意識が向いてしまっていた経験があります。
私は学生団体のリーダーとしてメンバーマネジメントをしていたのですが、その際に活動を辞めたいと言ってきたメンバーがいました。
そのメンバーの事情や思いを聴き、一番お互いにとって良い選択肢を取れれば良いと頭では考えていたのですが、実際はその子に「辞めて欲しくない」と心で感じてしまっていました。
相手の気持ちを聴いているようで、気持ちのベクトルは自分に向いていたのです。そのため、相手にも、「自分のことを考えているというより何か狙っているようなコミュニケーションに思える」と言われてしまいました。
聴こう聴こうと思っていても自分の思いに気持ちが向いてしまうと、それは相手に伝わるものです。
ではこの場合、どのように相手の話を聴けば良かったのでしょうか?
具体的な会話内容から振り返ってみたいと思います。
本当に「聴く」ために
私が実際に失敗してしまった聴き方は以下の通りです。話していたメンバーをAさんとします。
Aさん「活動続けるのもう難しいかもしれない……」
私「そうなんだ……そう思う理由は何なんだろう?」
Aさん「他にやりたいことがたくさんあって時間が取れないんだよね」
私「そうなんだ、元々活動を始めようと思った理由は何だったの?」
Aさん「人脈を広げたりいろんな人の価値観を知りたいと思った。でもそれって活動にフルコミットしないと得られないものだし、物理的に時間が取れないとなると厳しくて……」
私「なるほどね。でもAさんの都合がつく時間に合わせて遊びとか企画することもできるかも!」
Aさん「でも今月ほぼ東京にいないんだよね……」
私「そうなのか……そうしたらオンラインでも仲良くなれるようなコンテンツ考えてみることもできるよ。全体的にまだコミュニケーション量が足りない気もするよね。」
Aさん「そうだね‥でも他にも理由があって……」
私は「共感による傾聴」ができているでしょうか?
一見話を聞いているようで、どうしたら課題が解決できるのかに話が移行してしまっています。活動が相手のモチベーションに叶うようになんとか導いているようです。これでは、自分のことを理解してくれていると感じられないのも仕方がないと思います。今後の解決策を考えるにはまだ早かったのです。
では、どうしたら良かったのでしょうか?先ほどの会話を改善してみましょう。
Aさん「活動続けるのもう難しいかもしれない……」
私「そっか……ちょっともう続けられないかもなって思ってるんだね」
Aさん「そうなんだよね、もともと人脈を広げたりいろんな人の価値観を知りたいと思ってたんだけど、物理的に時間が取れないとなると厳しくて……」
私「なるほどね。そもそもの目的が叶いそうになくてモチベーションが下がってるんだね。」
Aさん「そう。人脈は人脈でも信頼が生まれるような関係性が欲しかった。けど、それってそれ相当のコミットと会う機会が必要だよね。残念だけど、今あまり帰属意識を感じられてなくて……」
私「そっか。ただ知り合えるとかではなくてもっとしっかりコミュニケーションが取りたかったんだね。それができていない今の状況に対してもなんとなくやるせなさを感じてるんだね。」
Aさん「そうなんだよね‥実は他にも思ってることがあって……」
いかがでしょうか?
- 相手が話す言葉を繰り返すこと
- 相手の状況を自分の言葉に置き換え、気持ちを代弁すること
この2つのステップを踏むことができて初めて、相手との信頼関係を築いた上で最良の選択肢に向かうことができます。
自分を脇に置いて真摯に相手の気持ちに耳を傾け続けることは想像以上に難しいものです。
自分の考えや判断は一切片隅においてただただ相手の言葉を受け取り、相手は何を考えているのか、求めているのかに寄り添う。
それを強く意識した上で、「共感による傾聴」をしていきましょう。
最後に
この記事を通して、以下の3つのことを学んできました。
- 相手をまず理解すると、自分の考えも伝わるようになる
- 相手を理解するには「共感による傾聴」が必要
- 「共感による傾聴」とは、自分ではなく相手の気持ちにベクトルを向け相手の言葉を代弁すること
事例にもあった通り、「共感による傾聴」は非常に難しいものです。実践し振り返り、トライアンドエラーを繰り返しながら相手との信頼関係を築いていきましょう。
これから研修を受ける方々へ
今回の研修では『7つの習慣』(著:スティーブン・R・コヴィー)を基に、A&PROでの「社会人が持つべき習慣」が取り扱われました。
そしてその中の、第五の習慣である「理解してから理解される」という観点を取り上げました。
相手に自分の気持ちを理解してもらい行動に移してもらうためには、ただ伝え方を工夫するだけでなく、そもそもの相手の話を聴く姿勢を見つめ直す必要がある、ということに私は初めて気がつきました。
「共感による傾聴」はやろうと思ってすぐにできるようになるものではないと思います。この心がけを常日頃から習慣化させ、意識せずとも相手を受け入れられるように一緒に取り組んでいきましょう。
研修で学んだこと
本記事では触れなかった研修全体での重要な気づきについてこちらで紹介します。
- 計画的にコントロールできる「第二領域」の仕事を増やしていくことで、仕事に追われることに効力感を抱く「緊急中毒」から抜け出せる
- 誠実な関係性は、「win-win(相乗効果)」と「No-Deal(合意の上で関わらない)」
- 常日頃から「刃を研ぐ」ように自分を磨いていく必要がある
大庭彩