自責の沼から抜け出す方法

クレド8.人のせいにせず、常に自分ができること・できたことを考え、最善を尽くす。

組織はフラットであり、常に全メンバーが危機意識を持ち、自分にできること・できたことを考え、改善。自分に都合の悪いことが起きても、人のせいにせず、自分にも原因を求め、サービスの質を高めます。

はじめに

皆さんは『自責思考』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?この言葉はスポーツやビジネスの場でよく使われる言葉です。今回の記事は自責思考をまさに実践し始めた方に読んでもらいたい内容です。「自責思考とは言っても難しい…」、「理屈はわかるけどモヤッとする…」といった悩みを解決できるかと思います。

また、今回の記事は多くのステークホルダーが絡むビジネスの現場を想定しています。個人の範疇では勝手が異なります。

今回伝えたい内容は以下の通りです。

  • 自分の責任の範疇を正しく認識してこその『自責思考』。
  • 責任に権限が伴っているのかを考える。
  • 正しい『自責思考』は自分の権限を広げることにも繋がる。

自責思考とは

本文を始めて行く前に、一般的な『自責思考』の意味、用法と今回の記事における『自責思考』を比較していきます。

一般的な自責思考

その名の通り、自分に責任がある、と考える思考です。もう少し詳しく説明すると、起きた物事に対して責任を他の要因になすりつけるのではなく、自分に原因があると考えることです。

それではなぜこのビジネスの現場においてこの思考は重宝されるのでしょうか?その理由は、ビジネスマンに必要な仮説検証のサイクル、いわゆるPDCAサイクルを回す際に、自分事にするほうが改善の余地があるからです。しかし、あらゆる物事が自分の責任だと思いこんでしまう、いわば『自責思考の沼』に陥る可能性もあります。

今回主張する自責思考

今回私が主張する『自責思考』は、自分の権限範囲を理解し、その範疇が自分の責任だと認識する必要があるということです。A&PROにおいては責任と権限は相関するものだとみなしています。つまり、自分に責任があるとするならば自分に権限があることが最低条件です。反対に言えば、自分にそもそも権限がないことに気づかず、自責を続けることはとてもリスクがあります。

それでは以下で権限を伴わない度を越した自責思考がもたらす弊害について述べていきたいと思います。

自責思考の沼とは?徹底した自責がもたらす弊害

例えば、営業をしているAさん、Bさんと経理のCさん、それにクライアントDさんの4名を想像してください。AさんとBさんは共にCさんに対して、都度を報告、承認申請しなくてはなりません。ある時AさんとBさん共にクライアントとの交渉を失敗してしまいました。原因としては、費用申請などに時間がかかり、コミュニケーションが円滑に進まなかったことが挙げられます。

それではここから2つの『自責思考』を元に比較していきます。

自責思考の沼にはまったAさんの場合

Aさんは徹底的に原因を自分にあると考えています。自分のスケジューリング能力が低かったのではないか、稼働時間が少なかったのではないか、提案の仕方に問題があったのではないか、と理由は大小問わずいくらでも出てくるでしょう。もちろんこういった一つ一つの改善は成果に繋がるかもしれませんが、今回のケースでは効果的とは言えないかもしれません。

それでは何が問題だったのでしょうか?それは経理Cさんの存在です。

自分の権限を理解しているBさんの場合

Bさんは自分の行動を振り返った際、最も時間がかかってしまった工程が経理Cへの許可申請の業務と気づきました。そこで今回の反省を踏まえ、都度ではなく週次や月次での報告で済むような権限を申請することで、リアルタイムで顧客対応ができるようになりました。

AさんとBさんの違いは、自分以外のステークホルダーと向き合えているかです。Aさんは自責を徹底するあまり、最も大きな課題点に気付けませんでした。しかし、Bさんは自分を含む他者の責任・権限を理解しているからこそ、自分の取れる責任(権限)を増やす、という選択を取ることができました。

2つの例から伝えたいこと

今回紹介した例で伝えたいことは、以下の2点です。

  • 度を越した自責思考は視野を狭めるリスクが有る
  • 効果的な施策を打つためには今の自分の責任ではできないこともある。

自分の権限を伴わない範囲に責任を感じても、取れる対策は自分の権限でできる範囲に限られます。その結果、本来対応するべきボトルネック(今回であれば経理Cとのコミュニケーションのような)を見落とす可能性があります。

一方で、責任と権限が相関していることを理解していればどうでしょうか。自分の責任(権限)範囲でできることをまず行い、効果的な施策が打てなくなったら打てるだけの権限を取りに行くというステップを踏めるはずです。

現実的に考えればビジネスの場のようなステークホルダーが多い環境では自分以外の要因は多く存在しています。他者に自らの責任を押し付けることと自他の責任・権限の範囲を正しく理解することは根本的に違います。この違いを認識していれば現実的かつ効果的な『自責思考』に繋がるでしょう。

自らの経験を踏まえて

私は現在キャリア支援団体において、企業案件の訴求活動を行っています。私自身が度を越した自責思考をしていた際は数値が悪いのは自分のせい、メンバーが動かないのは自分のせい、就活生が案件に申し込まないのは自分のせい、と正直、自分の力でどうこうできることではないという思考とそれでも人のせいにしてはいけないという思考に苛まれていました。その結果として、何に手をつければ良いかわからないという思考停止状態にまでなってしまいました。

しかし、今回のように自分の持つ権限を考慮すると、そもそも自分の持っている権限の範疇を超えて悩んでいることに気づきました。私達には案件を獲得する権限はなく、上層部が取ってきた案件を周知し、訴求することが持っている権限でした。それに気づくことで、今の自分にやれる事とできない事が明確になりました。

最終的に自分たちにできる範疇の施策を回すことで、上層部に対しても自信を持って獲得案件に対する提案をすることができるようになりました。等身大の自分を理解することで次取るべき行動や権限の把握に繋がることを学びました。

さいごに

今回の記事では一般的な『自責思考』とは少し違った考え方を紹介しています。周囲から「人のせいにするな!何事も自分に責任があると考えろ!」と言われて、なにかピンと来ない人に読んでもらいたい内容です。

『今の』自分にできることを理解して、できないことは認めて権限を獲得しに行く、これが自責思考のあるべき姿なのではないでしょうか?

この記事の著者/編集者

信宗碧 早稲田大学 文学部 美術史コース  リーダーズカレッジ リーダー 

就職活動を通して就職後のキャリアを楽しみにしている学生が少ないことに課題感を覚え、大学生に向けたキャリア支援を行うNPO法人『エンカレッジ』に加入。
納得したキャリア選択のためには視野を広げることや自分の中のバイアスに向き合うことが重要だと考え、学生に考えるきっかけを提供できる企業案件の担当するセクションのリーダーを務める。

現在10人規模のメンバーのマネジメントと支部のブランドイメージ構築に向け、活動しています。

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