真実の瞬間。お客様は「いま、ここ」のひとりだ!

今月の研修:マナー研修

読者の皆さんは、ほんのわずかな時間の接客やサービスでお店や企業を好きになった、感動したという経験があるでしょうか?
好きになった、感動したとしたらそれはなぜでしょうか?
すてきな笑顔で挨拶をしてくれた。自分の好みや状況を把握したうえでサービスを提供してくれた。さまざまな理由があると思います。
反対に「もうこんな店には来ない!」と思ったこともあるかもしれません。
自分がサービスを提供する側だったら、そうした経験からどうしたら顧客に好きになってもらうことができ、どうしたら顧客に感動を生むことができると言えるでしょうか?

顧客対応の構造と実践

今回の研修では顧客対応について学びました。その基本を確認したうえで先述の問いを考えたいと思います。

A&PROでは顧客への対応はマナー、サービス、ホスピタリティ、おもてなしの4種類から成ると考えています。

  • マナー:人に不快感を与えない、好ましい言動の作法。
  • サービス:支払われる対価に相当する奉仕。再現性がある。
  • ホスピタリティ:行うことに対して対価を求めない。顧客への労り。
  • おもてなし:顧客がいない時にも思いを馳せ、相当する行動をとる。

これらがモラルを基盤にしてピラミッド構造を成しているのです。

A&PROにおける顧客への対応の構造

これら顧客対応が最も重視される「真実の瞬間」という言葉についても学びました。1980年代にスカンジナビア航空の再建に取り組んだ当時の社長兼CEOヤン・カールソンが出版した書籍の中で注目された考え方です。簡単に言えば「お客様は、その企業に接する瞬間(ほんの短時間)で、その企業のサービス全体に対する良し悪しを評価する」という考え方です。

先述の問いに戻りましょう。ほんの短時間でどんな接客を受けた場合にお店や企業を好きになるか?感動するか?
研修の中でもこの問いについて考え、メンバーと意見を交換し、その中で私は一つの答えに気づきました。それは、接客やサービスに感動するのは自分をone of themではなく「いま、ここ」のひとりとして扱ってもらえたときなのではないかということです。

あるメンバーは成人式に関する問い合わせを役所に電話した際、第一に「成人、おめでとうございます!」と言ってもらえて感動したと言い、あるメンバーは病院の医者に自分と全く目を合わせず診察されがっかりしたと言いました。この違いは顧客が具体的なひとり(「いま、ここ」のひとり)として扱われたか、抽象的なひとり(one of them)として扱われたかの違いであると思います。そして先ほどの4種類の顧客対応と照らし合わせて考えると、役所の方はホスピタリティを持って接したのに対し、医者はマナーがなっていなかったのでしょう。

これらの経験から考えると自分が接客、サービスをするときも同様に、顧客を「いま、ここ」のひとりとしてホスピタリティやおもてなしを持って接するのが良いと言えるでしょう。かつて私はとある居酒屋のホールで働いていました。そこはホスピテリティとおもてなしに溢れた居酒屋でした。常連さんの当日予約が入ったとき、女将が「あのお客さんたちはこの席が好きだからここを確保しよう」と言ったり、隣に店を構える居酒屋が禁煙のため、屋外で喫煙している隣の店のお客さんたちに対し、大将が灰皿を手渡したり。学生時代に、顧客のことを本心から思いホスピタリティやおもてなしを実践する姿勢を学べたことを喜ばしく思います。これから、そして社会人になってもこの姿勢を続けていきます。

このように述べていくと、ホスピタリティやおもてなしこそ重要だと考えてしまいそうですが、マナーやサービスも同じかそれ以上に重要であることを忘れてはいけません
実際、先述の女将と大将は3秒に1回は必ずホールに目を向け、どの店にも負けない元気な挨拶をしていましたし、どれだけ忙しくても1時間ごとのトイレ清掃を欠かしませんでした。
先ほど顧客への対応はピラミッド構造を成していると述べました。ホスピタリティやおもてなしに目を向けるばかりでマナーやサービスが蔑ろにされていては、このピラミッドは崩壊します。マナーやサービスがなっておらず、挨拶ができなかったりあたふたしたりしていては、その間に「真実の瞬間」が過ぎ去ってしまい、顧客の企業全体に対するイメージは決まってしまいます。再現性のあるマナー、サービスを徹底したうえでホスピテリティ、おもてなしの実践に取り組むのが良いと考えます。

これから研修を受ける方々へ

顧客への対応を先述のようにピラミッド構造として示しましたが、実際の区別はこれほど明確ではなく、目配り・気配り・心配りとも絡み合い、より複雑なものです。研修ではこれらを紐解き、基本的なマナーや身だしなみについても学ぶため、今後どうするかを考えることができます。また、自分が客であるときにサービスしてくれる側の良いところを盗もうという意識も養われることでしょう。

研修で学んだこと

  • 挨拶の基本
  • 身だしなみの基本
  • 真実の瞬間
  • 顧客対応の種類と構造

この記事の著者/編集者

藤原穫   

秋田県出身。高校時代は強豪校でバドミントンをしていました。大学に入ってからは民族舞踊に励み、修士2年になった現在は薬物動態の研究をしています。趣味は旅行。死ぬまでにすべての温泉地を回りたいと思っています。これまで複数の組織で培ってきたリーダーシップに磨きをかけるべく、A&PROでの研修に励んでいます。

最新記事・ニュース

more

「メラビアンの法則」や「真実の瞬間」と向合い、各メンバー自身がブランド形成の重要要素であることを自覚していきます。 「目配り」「気配り」「心配り」の各段階を理解し、「マナー」「サービス」「ホスピタリティ」「おもてなし」の違いについて研究。 「マニュアル」「サービス」を理解・実践するのは当然。 「ホスピタリティ」「おもてなし」を顧客・メンバーに提供したいリーダーのための研修です。

島元 和輝 荒 諒理 川瀬 響 3Picks

行き過ぎた完璧主義は仕事を停滞させるだけでなく、自分自身を苦しませてしまいます。本記事ではプロジェクトマネジメントを題材に、自分の良さをかき消さず、最大限発揮する仕事への取り組み方を考えます。完璧主義で悩んだことのある皆さんに是非ご覧になって欲しい記事です。

大庭彩 左貫菜々子 藤井裕己 谷 風花 4Picks

プロジェクトマネジメントを機能させる土台となるのが『理念のマネジメント』 プロのリーダーは、「権威のマネジメント」を避け、「理念のマネジメント」を構築し、維持し続ける。 「好き・嫌い」や「多数決」ではなく、説得力ある提案を互いに尊重する文化を構築したいリーダーのための研修です。

荒 諒理 木藤 大和 島元 和輝 川瀬 響 4Picks

復習回数を闇雲に増やしたり、ノートいっぱいに何度も書かせる記憶法は、社会に出てから通用しない。 多忙なリーダーは、重要事項を一発で覚える。 たとえそれができなくても、復習回数を最小限にし、効果的・効率的に記憶することが大切。

「やばい、キャパオーバーしていて仕事を回しきれていない・・・。」成果を生み出すためにリーダーを務め、多くの責任を引き受けたのはいいものの、こうした悩みを抱く方は少なくないと思います。本記事は、リーダーの方の中でも、「仕事を回しきれていない。」と実感している方、経験した方、キャパオーバー対策したい方に届けていくことを想定して進めていきます。キャパオーバーは解決できます!

そもそもプロジェクトとは何か。それを知ることによって、あなたが現在取り組んでいる活動をもっと豊かにすることができるはずです。プロジェクトの基本を学び、そのプロセスについて考えてみましょう。

大庭彩 上野美叡 2Picks

タスクには明確に優先順位が存在し、正しい優先順位でタスクに向き合うことが締め切りへの余裕につながります。緊急度と重要度のマトリックスを用いて改めてタスクへの優先順位をつけることを意識したいです。

大庭彩 1Picks

皆さんがリーダーを務める組織にはMVVやスローガンと言ったメンバー全員が認識している「共通目標」はありますか? そして、今その「共通目標」を何も見ずに口ずさむことができますか? もし、一度決めたことがある共通目標が形骸化してあまり浸透していない場合は私と同じ苦悩を経験するかもしれません。

大庭彩 1Picks

たとえ意見が対立しても、プロのコンサルタントやコーチは相手を導くことができる。 基礎1~3を通じて、科学的なメカニズムから築き上げた実践型コーチングについて、ロールプレイを中心に活用方法をトレーニングしていきます。 現場の活動と有機的に結びつける知恵と、今後のプロジェクトに活かす行動力。 これらを大切にするリーダーのための研修です。