改革を起こすために知っておくべき2つのこと

今月の研修:社会人が持つべき習慣(私的成功)

「現状のままではうまくいかない」「どうにかしなければいけない」と思っていても、どのように行動していいかわからない人は多いでしょう。

私もその一人でした。しかし今回の研修を受けて、実際に行動を起こすようになりました。研修では、現状を変える方法として、パラダイムシフトとインサイド・アウトの2つを学びました。そしてこの2つを意識し実際に取り組んでいる活動例についても、今回の記事で紹介します。

以前の私と同じように、現状を変えたいけれど何をすべきかわからないと悩んでいる人にとって、この記事が何か行動を起こすきっかけになればと思います。

パラダイムシフト

パラダイムシフトとは、当然のことと考えられている認識や価値観など「ものの見方・考え方」を大きく変化させることです。大きな改革は、パラダイムシフトにより実現するといえるでしょう。

このことについて、下の図の説明から、順に説明していきます。

まず、このサイクルについて説明します。

関係者のニーズがあり、それに応える結果、その結果を生み出す行動、その行動を示すシステム(業務プロセス、規制・規則)、そのシステムを作るパラダイム(ものの見方・考え方)という順にサイクルがあります。

関係者のニーズと現在の結果にギャップがあるとき、ついつい私たちは、その現状をなんとかしようと、結果をもたらしている行動や、その行動のもととなるシステムに立ち返り、行動を強化したり、システムを変えたりしてしまいます。

しかし、効率的に、根本的に、現状を変えるには、このサイクルのスタート地点である、パラダイムにアプローチし、パラダイムシフトを起こす必要があるのです。パラダイムシフトを起こすことで、新たなシステム、それに準ずる新たな行動、新たな結果が生まれ、ニーズに応えることができるでしょう。

具体例を示します。天動説から地動説へのパラダイムシフトについて考えましょう。

まず、天動説は、地球を中心にその他の天体が周りを動いているという考え方です。
また地動説は、太陽を中心に地球などの惑星が回転しているという考え方です。

天体の動きを把握したい、矛盾なく説明したいというニーズが、当時の天文学者にはありましたが、研究を進めてもそのニーズを満たすことはできていませんでした。天動説のもとで、いくら計算をし直しても(行動の強化)、計算方法を変えても(システムの変更)、そもそもの前提が間違っていたので、ニーズにあった結果を出せずにいたのです。

ここでパラダイムシフトが必要になります。そもそもの前提を天動説ではなく地動説に変えるパラダイムシフトが起こりました。地動説のもと、計算方法を考え直し、天体の動きを計算した結果、恒星、惑星のそれぞれの異なる動きを、矛盾なく説明ができるようになりました。(また余談ですが、地動説を唱えたガリレオは、当時はおもちゃと考えられていた望遠鏡を天体観測に用いたというパラダイムシフトもありました。)

現状の問題を解決する改革を起こすには、パラダイムシフトが必要です。なにか現状に問題があるのならば、根本であるパラダイムに立ち返り、パラダイムシフトを起こすことを意識的に考えるのが良いでしょう。

インサイド・アウト

インサイド・アウトとは、状況を変えたいと思ったら、まずは自分たちから変えていくという考え方です。

改革を起こしたいと考えるならば、このインサイド・アウトの考え方で動くべきです。この方法が、実は効果的で効率的だからです。

このことについて、対義語のアウトサイド・インの考え方と比較して述べたいと思います。

まずはインサイド・アウト、アウトサイド・インの考え方を簡単に説明します。上の図を見てください。

インサイド・アウトとは、この図の内側から外側へ働きかける考え方です。つまり、個人がチームのメンバーに働きかけ(人間関係にアプローチ)、そのことでチーム全体(マネジメント)を変え、さらに外側の組織に影響を与えていくのです。

アウトサイド・インはその逆で、外側から内側へ働きかける考え方です。つまり、組織が、チームのマネジメントに指示を出し、チームのメンバーを変え、個人に影響を与えるということです。

cooperation

ここでまず、インサイド・アウトが効果的であるということを、アウトサイド・インと比較して示します。

そもそも、アウトサイド・インの考え方を持つ人は多いのではないでしょうか。現状に問題がある時、周りの人のせい、組織のせいにして、組織が変わらないと何もできない、どうしようもない、などと言ってしまう人は多いでしょう。そのような人が、組織から働きかけられたとして、個人の行動が変わるでしょうか。いざ組織が変わったときに、思うように動けるでしょうか。

インサイド・アウトでは、まずは自分が変わることでお手本を周りに示すことができ、さらにチームのメンバーに働きかけることで、成功例が自分だけでなくチームのメンバーでも見られるようになります。そしてチーム全体が、仕組みとしてその変化を取り入れマネジメントを変え、チームとして実践し成功していることを示し、最終的に組織に影響を与えます。

インサイド・アウトが効果的であるのは、このように、成功例を内側から重ねていくので、改革の内容にそもそもの問題点がない限りは、失敗することなく改革は進むという点です。

アウトサイド・インでは、改革の内容自体に問題がなくとも、組織が個人の現状を把握できておらず改革が滞ることや、組織が思うようにチームや個人が動かないということがあるのです。

cost-time-money

また効率的であることについても示したいと思います。

アウトサイド・インでは、先述のように改革がうまくいかないリスクがあるにも関わらず、スタート地点で組織が働きかけるときには、研修会を開くなど、費用、時間、労力などの資源がかかることがほとんどです。

それに対してインサイド・アウトでは、個人が働きかけるので、基本的にマイナスはなく0から始められ、少しずつでも改革は進み、成功例を重ねることができることから、コストパフォーマンスの点で、効率的だといえるでしょう。

私の活動

パラダイムシフトを歯科界に起こすことを目標に、歯科学生がインサイドアウトで動いていく、そんなプロジェクトの立ち上げに今取り組んでいます。

歯科医師には、患者さんに定期的に歯科医院に通ってほしいというニーズがあります。しかし現状では、「歯科医院に行きたくない」と考える人は多いでしょう。

歯科医師は、歯科医院に通う必要性を患者さんに伝えるべきだというパラダイムのもと動いています。具体的には、歯科医院に来ないでいることの悪影響(虫歯の進行、歯周病のリスク等)について話すことで、患者さんに、「そうならないように行かなければならない」と思わせるよう働きかけています。

それでも効果がないときは、より恐怖を煽る話(虫歯菌が脳に影響する、歯周病が認知症やがんの原因になりうる等)をすることや、話すだけでなくポスターでアピールするなど、行動やシステムに注目して動いているのではないでしょうか。

しかしこれでは、患者さんに、「行きたくないけど、行かなくてはいけないから」と通わせることしかできません。積極的に好んで歯科医院に来てくれる患者さんはいないでしょう。それどころか、あの先生は怖いといって、全く来なくなるという、逆効果に働くことも考えられます。実際にこのような様子を実習先で目の当たりにしました。

私の起こしたいパラダイムシフトは、そうではなく、患者さんには「歯科医院に行きたい」と思わせるべきだということです。必要性を訴え、恐怖を煽るのではなく、患者さんに「また来たい」と思わせるおもてなしができればよいという考え方です。北風と太陽の寓話をイメージしてもらえるとわかりやすいかと思います。(理想の歯科医院については以前この記事に書きました。:身につけるべき対応のレベルは?~歯科医院の対応を考える~)

dentist-and-children

これまでは、今は学生の身であるから、まだ行動を起こせないと考えていました。自分が歯科医院を開業するときに考えればよいとしていたのです。

しかしインサイド・アウトの考え方から、私たち学生から働きかけることができるのではと思うようになり、プロジェクトを立ち上げようと考えました。

具体的なプロジェクトの内容は、歯科医院を開業したいと考える学生をターゲットにしたもので、学生のうちから開業に向けて必要なことを学び準備する場を設け、さらにその学生が歯科医院にビジネス面での提案をする、そして学生がその活動を通し得た考えを発信するというプロジェクトです。

まずは開業を志す学生自身に働きかけ(開業に向けての学びの場)、その学生が歯科医院に働きかけ(ビジネスの面での提案)、さらに歯科界全体へ影響を与えよう(考えを発信)というように、インサイド・アウトの考え方を用いてこのプロジェクトを設計しました。

そして実際にメンバーを集め、開業を志す学生自身に働きかけることを、まずは今始めています。ビジネス基礎研修、セルフブランディング研修、Webマーケティングセミナーなど、大学では学ぶことのできないものを学ぶ機会を設け、それらを通し未来の歯科界への意識を高めることを目標に動いています。

これから研修を受ける方々へ

今回の研修では、社会人が持つべき習慣について学びました。

持つべきとされているのに、知らなかったこと、意識していなかったこと、習慣化できていなかったことが多々ありました。ボリュームのある内容でしたが、一つ一つ意識して生活を送り、日々訓練して習慣化していきたいと思います。

皆さんも、ぜひこの研修を通して、社会人が持つべき習慣を学んで日々訓練し、ワンランク上の社会人を目指しませんか?

研修で学んだこと

  • パラダイムシフト
  • 人はついつい行動を強化することや、システムを変えようとする動きをしてしまう
  • 行動の強化やシステムの変化に気を取られているうちはパラダイムに意識が向かない
  • 依存→自立・自律→相互協力・相乗効果
  • 依存している人がいる組織は強くならない
  • インサイド・アウト⇔アウトサイド・イン
  • 状況を変えるにはまず自分が変わりお手本を示すべき
  • 影響の輪・関心の輪
  • 主体的に動くには関心の輪が広くあることは前提で影響の輪を広げるべき
  • 知的創造と物的創造
  • 知的創造をきちんとしてから物的創造をするべき
  • マネジメントとリーダーシップ

この記事の著者/編集者

上野美叡   

歯科クリニック開業を目指す歯科大学生。
予防歯科の考え方を浸透させ、健康に長生きできる社会づくりをしたい。
学生のうちにできる準備はしたいと考えA&PROに参加。
歯科学生プロジェクトのリーダーを務める。

するとコメントすることができます。

新着コメント

最新記事・ニュース

more

そもそもプロジェクトとは何か。それを知ることによって、あなたが現在取り組んでいる活動をもっと豊かにすることができるはずです。プロジェクトの基本を学び、そのプロセスについて考えてみましょう。

大庭彩 上野美叡 2Picks

タスクには明確に優先順位が存在し、正しい優先順位でタスクに向き合うことが締め切りへの余裕につながります。緊急度と重要度のマトリックスを用いて改めてタスクへの優先順位をつけることを意識したいです。

大庭彩 1Picks

皆さんがリーダーを務める組織にはMVVやスローガンと言ったメンバー全員が認識している「共通目標」はありますか? そして、今その「共通目標」を何も見ずに口ずさむことができますか? もし、一度決めたことがある共通目標が形骸化してあまり浸透していない場合は私と同じ苦悩を経験するかもしれません。

大庭彩 1Picks

たとえ意見が対立しても、プロのコンサルタントやコーチは相手を導くことができる。 基礎1~3を通じて、科学的なメカニズムから築き上げた実践型コーチングについて、ロールプレイを中心に活用方法をトレーニングしていきます。 現場の活動と有機的に結びつける知恵と、今後のプロジェクトに活かす行動力。 これらを大切にするリーダーのための研修です。

たとえ意見が対立しても、プロのコンサルタントやコーチは相手を導くことができる。 基礎1と基礎2を通じて、科学的なメカニズムから築き上げた実践型コーチングについて、ロールプレイを中心に活用方法をトレーニングしていきます。 現場の活動と有機的に結びつける知恵と、今後のプロジェクトに活かす行動力。 これらを大切にするリーダーのための研修です。

「自分と仕事をしたいか」と思われているかどうかは他者の言動を大きく変化させます。相手方の時間を頂いているという認識があなたの評価を変えるでしょう。適切な準備を行うことで周囲と豊かな関係性を築きたい方に必見の記事です。

大庭彩 香山 渉 谷口 宗郁 3Picks

たとえ意見が対立しても、プロのコンサルタントやコーチは相手を導くことができる。 基礎1と基礎2を通じて、科学的なメカニズムから築き上げた実践型コーチングについて、ロールプレイを中心に活用方法をトレーニングしていきます。 現場の活動と有機的に結びつける知恵と、今後のプロジェクトに活かす行動力。 これらを大切にするリーダーのための研修です。

「周りの声を意識して思っていることを伝えられず、自分だけが辛い思いをしている...。」「それもあって、周りに対して愚痴が溜まっている...。」この悪循環を引き起こすコミュニケーションを、A&PROではPassive(受身的)なコミュニケーションと捉えます。そして悪循環を解決させるには、「Passive(受身的)」を「Assertive(自己主張的)」へ変容させていくことが重要です。

矢後慶樹 前田佳祐 大庭彩 3Picks