リーダーの「キャパオーバー」を解決する方法とは?
2021.01.24
今月の研修:社会人として持つべき習慣(私的成功)
はじめに
「やばい、キャパオーバーしていて仕事を回しきれていない……。」
成果を生み出すためにリーダーを務め、多くの責任を引き受けたのはいいものの、こうした悩みを抱く方は少なくないと思います。
一度この状態になるとそれぞれの仕事に対して十分に思考・行動ができなくなり、本来の「成果を出す」という責任を果たせなくなっていきます。
言い換えると、キャパオーバーとは「責任範囲に関心を持っているが、十分に影響を与えられていない状態」です。これは、スティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』の言葉を使えば、関心の輪が大きすぎて影響の輪が追いついていない状態です。
(関心の輪・影響の輪の詳細について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。)
関心の輪と影響の輪はそれぞれ、物事に対しての関心の広さ、影響を及ぼせている範囲を意味します。
本記事は、リーダーの方の中でも、「仕事を回しきれていない」と実感している方、経験した方、キャパオーバー対策したい方に届けていくことを想定して進めていきます。最初に結論をお伝えしますが、キャパオーバーは解決できます。
それでは、文化祭の会場設営チームを題したストーリーを通じて、リーダー目線でキャパオーバー状態について考えていきましょう。
影響力を広げられないジレンマ
文化祭団体にて、会場設営チームのリーダー、ヤマザキがいます。ヤマザキは、サッカー部所属です。元々忙しい状況でしたが、①文化祭団体にリーダーシップを買われたことと②本人の意思の二点から、会場設営チームリーダーに抜擢されました。
初めは部活と会場設営チームのリーダーを両立していました。夜まで部活した後に、会議を開き、授業の合間を縫って準備をする、そんな生活です。しかし部活の方で大会が迫るにつれて、夜会議を開く時間が取れない、授業の合間も部活のミーティングがある、という状態になりました。結果として、ヤマザキは、チームについて考える時間も、行動する時間も失っていきました。
ヤマザキは、文化祭とサッカー部の両方で成果を出したいのに、出せていないもどかしさを感じています。
これは、関心の輪が広いにもかかわらず、影響の輪が追いついていない状態です。文化祭の会場設営チームに焦点を当て、関心の輪と影響の輪を描いてみましょう。
「登壇サークルから会場ニーズをヒアリングしたい」などの様々な関心がある一方で、影響をほとんど与えられておらず、推進できていない状態が見て取れます。
では、この「キャパオーバー」の状態をどのようにして改善すべきでしょうか。
「キャパオーバー」を解決する方法
ヤマザキの例のように、責任を全うしたいが、自己管理を徹底しても時間を確保するのが厳しい状態は往々にして起こります。この場合、解決には「権限委譲」が非常に有効です。
権限委譲は、「成果を出すための意思決定・行動を、別のメンバーに委ねること」を指します。リーダーは、メンバーに権限を委譲する一方で、任せたことに対して責任を持ち、権限行使による意思決定・行動を監督します。
(注釈:「責任」はメンバーに移りません。ポジションを譲るといった責任移譲もありますが、実際の場面では権限委譲が主なので本記事では省略します。)
文化祭の会場設営チームの例であれば、図の関心の輪にあったような、「登壇サークルから会場ニーズをヒアリングしたい」「本部と交渉して予算を増やしたい」をチーム内の適任メンバーに主体的に実行していく権限を付与します。その上で、リーダーヤマザキは、定例ミーティングの時間を最低限確保し、方向性のすり合わせや進捗確認をしていきます。
これにより、1人ではこれ以上広げられなかった影響の輪の大きさが、人数分だけ広がっていき、広い関心に対して十分な影響を与えられるようになります。
権限委譲の方法とは?
権限委譲の流れ
権限委譲のメリットをここまで考えてきました。ここから具体的な実施方法について話していきます。権限委譲は以下の手順で基本的に行います。
- 責任範囲を再度確認・文字で定義
- 権限として委譲できる責任箇所を選定
- 周囲のメンバーを分析し、適任メンバーを選定
- 期待とともに任せたい権限を伝える
- 進捗確認(適宜方向性を伝える)
特に重要なのが、4、5のフェーズです。
権限委譲には、必ず人が絡みます。任せたことにより生じる責任を全うすることで、任せた人が主体的に活躍するようになります。
権限委譲の実例
現在私は、所属するキャリア支援団体にてあるチームのリーダーを務め、そこで権限委譲を実施した経験があります。具体的には、チームが追っていた複数の数値のうち、一つの数値に係る権限をあるメンバーに委譲するというものでした。
そこで私は明確に、「数値目標達成のための戦略立案・実行・履行管理」を権限として伝え、さらに「ロジカルシンキングをさらに伸ばすことでよりなりたい自分に近づいてほしい」と、本人の課題感に絡めて期待を伝えました(フェーズ4)。
さらに施策の運用状況を毎週の定例MTG以外で個別チャットで連絡を取り、「進捗どうだろう?何かあれば相談乗ります」といったメッセージを送り、一人立ちできるようサポートしました(フェーズ5)。その結果、それまで毎月の施策運用は私主体だったところから、そのメンバー主体に大きく変わりました。
これによって私自身が割くべき時間数が大幅に減っただけでなく、一メンバーの主体性が上がったことでチーム全体の主体性向上にもつながりました。
権限委譲は、リーダーの負担を減らすだけでなく、チームの状態向上にも直接寄与します。
権限委譲=好循環の始まり
ここまで権限委譲すべき状況と、その方法について考えてきました。抽象化すると権限委譲は一見難しくないように見えますが、実際に実行するときは人が絡んでくるため、途中で行き詰まることが多くあります。私の場合もそうでした。
しかし、権限委譲しないことで本来の責任である「成果を出すこと」ができないだけでなく、自分が苦しむ、メンバーも不満を持つ、という三重苦に苦しむ可能性が大きくあります。逆に権限委譲はリーダーの負担を減らし、メンバーの主体性を向上させることで良いチームへと変化する好循環を生み出せます。
「やばい、キャパオーバーで仕事を回しきれていない……。」
もしあなたがこう感じているならば、権限委譲が必要なタイミングかもしれません。ここまでで考えてきた内容をぜひ生かしてください。
最後に
今回の記事の内容を要約します。
- 関心の輪が広くなるほど、影響の輪が追いつかない状態が発生する。(いわゆる「キャパオーバー」)
- 解決方法として、キャパシティ拡大、権限委譲、責任移譲の3つの選択肢がある。
- 権限委譲を実行する場合、ただ任せるだけでなく相手に期待を伝え、進捗確認することが重要。
リーダーになる人財はリーダーになる準備ができている人だと考えるA&PROでは、仲間とともに研修を通じてリーダーに求められる素養を学び、記事執筆を通じて学びの言語化・応用を実践しています。リーダーになる覚悟のある方の参加をお勧めします。
研修で学んだこと
- リーダーとして最終の成果に責任を持つことが大切。
- キャパシティには必ず限界がある。だからこそ、自分が成すべきことを見極め、必要に応じて権限委譲する。
- 依存したメンバーでは、強いチームを作ることはできない。
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