「なんとなく居心地が悪い」組織はマネジメントによって作られる
2022.10.17
8月の研修:理念のマネジメント
はじめに
みなさんは、以下のような経験をしたことはありませんか。
- 部活動の部長をしているが、周囲の注目を集めやすいメンバーにばかり意見が集まり、なかなか部員の状況を掴めずもどかしい思いをする。
- 選抜チームに選出されるにはコーチと親しくならければ選ばれにくく、コーチに媚を売らなければいけないと感じる。
- 特定のメンバーの発言が「正しい」とされがちな雰囲気があり、それ以外のメンバーはその人と関係を構築・維持しなければ意見を通すことが難しい。
上記のような例で、「何かこの組織は動きにくい」と思いながらも、「仕方がない」と飲み込んでしまった経験を持つ方も多いと思います。
この違和感・動きづらさにはどのような理由が存在するのでしょうか。
この背景にあるものが、「権威のマネジメント」です。
二つのマネジメント方法を比較する
- 権威のマネジメント
- 理念のマネジメント
マネジメントには性質の異なる二つのマネジメントが存在します。
本記事ではこの二つのマネジメント方法に基づいて過去の経験を深掘りしていくため、まずは上記二つのマネジメントについてご説明します。
権威のマネジメント
権威のマネジメントとは、個人的な好き・嫌いや求心力のある・なしによって組織の意思が決定され、権威のある人物や気の合う人物に従う文化を持つ組織において行われているマネジメント手法です。
意思決定を左右しようとする人物は、担当者でもないのに「自分が相談に乗るよ。」と情報を集めたり、「困ったね、大変だね。」などと同調することによって自身への求心力を向上させます。
その結果、該当メンバーに情報が集まらなくなり、該当リーダーは動きが非常に取りにくくなります。
また、「〇〇が言っていることだからやろう」「〇〇の意見だから採用しない」といった判断基準が存在し、「生意気な人」「気が合わない人」は排除される傾向があるため、誠実に取り組むメンバーは疲弊します。
このような権威のマネジメントが行われる組織では、意思決定のスピード感など出だしの取り組みは早いですが、メンバーの誠実な努力や意志が尊重されないなど、メンバーが持続的に活動し、発展していく仕組みを整えることができません。
理念のマネジメント
一方、理念のマネジメントは、理念・使命・理論に基づいた人に従い、好き嫌いではなく議論や説得力がある意見によって意思決定がされるマネジメント手法です。
特定の個人への忠誠心よりも、プロジェクトのリーダーや筋の通った考え方が尊重され、本気でプロジェクトに向き合うメンバーが動きやすい風土となります。
相談を受けたメンバーは同情するのではなく、該当リーダーに対して直接関係を持てるように協力をします。
そのため、不安を抱えたメンバーは直接本来相談すべき該当リーダーに相談を行うようになり、プロジェクトリーダーとメンバーが建設的な行動を繰り返すことで本当のチームワークが生まれます。
このような理念のマネジメントが行われる組織では、重要な課題に対して組織・役割が機能するため、組織として持続的な発展が可能になります。
以上が権威のマネジメントと理念のマネジメントについてです。
上記の説明だけ読むと、「本当に権威のマネジメントは周囲の組織に存在しているのか?」「権威のマネジメントを行う人物はいるのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、「権威のマネジメント」は必ずと言ってよいほど、特に学生が所属している団体においては存在しています。実際に、私も権威のマネジメントを「してしまった」経験と、「された」経験があります。
過去の経験
権威のマネジメントを”してしまった”経験
私は、高校時代3年間女子バドミントン部に所属していました。強豪校ではなかったものの、3代で約50名のメンバーが所属し、週に6日の活動を行うなど、熱心に活動を行なっている部活動でした。
私は今振り返ると、所属していた女子バドミントン部にて権威のマネジメントをしてしまっていたと感じています。
当時、女子バドミントン部は大きく二つのグループに分かれていました。一つ目が、部長や副部長も含めレギュラーに入りやすいメンバー、またはレギュラーメンバーと仲が良いメンバーで構成されたグループ。
二つ目が、比較的初心者のメンバーが多く、活動に対してモチベーションを保ち切ることができていないメンバーで構成されたグループでした。
その中で私は、授業のクラス分けなど部活外での関係もあり、どちらのグループのメンバーとも仲が良かったため、相談しやすく、されやすい立場にありました。
この立場を活かし、「自分は部の調整をしなければいけない立場だ。」と感じていた私は、以下のような発言をしてしまうことがありました。
モチベーションを保ち切ることができないメンバーに対しては、
- 「いつでも相談に乗るよ」
- 「正直部活に行きたくない気持ちわかるよ、大変だよね。」
部長に対しては、
- 「モチベが高くないメンバーに対して参加を促すように声をかけておいたよ。」
- 「この体制に不満を持っているという声をよく聞くよ。」
と言った内容です。
モチベーションを保ち切ることができないメンバーに対して、本来リーダーではないにも関わらず情報を集めるような声かけをしたり、寄り添うように見せた同情をしてしまっていました。
部長に対しては直接情報が伝わるようにするのではなく、情報を自分の段階でとどめてしまったり、改善策の提案を含まずに不満の共有のみを行なっていました。
これらの行動は部長に直接情報が届かなくなり、建設的・誠実な相談がされる体制の構築を妨害することにつながります。そして、部長は動きが取りにくくなってしまうと考えられます。
権威のマネジメントを”された”経験
一方で、権威のマネジメントを”された”経験もあります。
私は高校時代、バドミントン部と同時期に約70人が所属する軽音楽団体のリーダーも務めていました。有志の団体であったため、資金の運用からライブの実施まで全てを学生のみで行っていました。私たちは2ヶ月に一度ライブを実施していましたが、ライブスタジオでライブを開催するためには毎回約20万円の資金が必要でした。そのため、毎月部費という形でメンバー全員から資金を回収していました。
この”運用資金”を巡って運営代の高校3年生と、所属する2年生間で意見の相違が起こり、ライブの開催が危ぶまれたことがあります。そして、開催が危うくなる直前まで、私たち運営代はその状況に気がつき、対策を打つことができていませんでした。その理由の一つとして、「権威のマネジメントの存在」があったと考えられます。
一部の後輩メンバーが「お金を出したくない」という理由から運営方法に対する不満や運営代個人に対する不満を持ち、他の後輩メンバーに対しても意見を募るような声かけをしてました。その行動により、運営の元には意見が集まらず、見えていないうちに一部の発信力がある後輩メンバーに声が集まる中で、”不満側”の力が強くなっていきました。
その結果、ライブ開催の直前まで運営資金が集まらず、ライブの開催が危ぶまれました。結局、その後輩メンバーに対して影響力の強い先輩に声を掛けてもらい、費用を集めることができましたが、一時団体の存続危機にまで追い込まれました。
権威のマネジメントが存在している組織では、その主体との関係構築にメンバーの労力が割かれます。そして、理念・理論ではなく権威・多数決・表面上の偏見が主張されます。その状態になってしまうと、リーダーは足を引っ張られているにも関わらず、そのメンバーに対して情報を求めざるを得なくなり、正常な決断ができなくなってしまいます。誠実に取り組むメンバーは疲弊し、組織を発展させることは不可能となります。
権威のマネジメントは身近に存在する
あなたがリーダーとして活動すると考えた時、理念のマネジメントが根付いている組織と権威のマネジメントが根付いている組織では、どちらの組織で活動していきたいでしょうか。
また、あなたがメンバーとして活動すると考えた時、理念のマネジメントを行う上司と、権威のマネジメントを行う上司、どちらについて行きたいでしょうか。
どちらのマネジメントが「正しい」ということはできませんが、私は理念のマネジメントが根付く組織に所属し、活動をして行きたいと思います。
しかし、権威のマネジメントを”してしまった”経験と”された”経験でも挙げたように、権威のマネジメントは多くの身近な組織に存在します。また、その組織に所属する人にとっては”当たり前の風土”と認識され、違和感すら持たれていない場合も多くあります。
みなさんも、これまでの経験を振り返ると、当時は気づいていなかった”権威のマネジメントの存在”を思い出す方もいるのではないでしょうか。
理念のマネジメントを組織に根付かせることは、マネジメントの主体者(=リーダー)のみの意識によって達成できるものではありません。
理念のマネジメントを組織の当たり前として根付かせ、継続させていくためにはメンバー一人一人が理念のマネジメントを理解し、行動に移していくことが重要になります。
理念のマネジメントの実践
では、理念のマネジメントを組織に根付かせるために実践できることはどのようなことがあるのか。
私は、以下の行動を実践したいと考えています。
- 組織内にて他の部署や立場に対する相談を自信が受けた際は、直接該当の役割を持つ人に相談するよう促す
- 提案を受け入れる際は、「〇〇の考えだから」ではなく、その提案を受け入れる根拠、理由を明確にメンバーに伝えるようにする
- 影響力や発信力を持つメンバーに対し、行動が自然と権威のマネジメントになってしまってはいないか確認する機会を設ける
- 噂話や根拠のない話によって人材を評価するのではなく、適切な根拠をもとに人材の評価を行う
理念のマネジメントの重要性を認識し、組織の未来を想像した上で実践するメンバーの存在があってこそ、組織には理念のマネジメントが根付きます。理念・使命・理論を判断基準とした行動を積み重ねることで、組織として発展し、誰もが居心地が良いと感じられる組織を生み出して行きましょう。
研修で学んだこと
- 権威のマネジメント
- 企業文化:権威のある人に従う。好きな人・気の合う人に従う
- 緊急時:プロジェクトリーダーよりも特定の個人への忠誠心が大切。平常時は組織・役割は機能するが、重要な課題が出てくると組織・役割は形骸化され、権威のある人・好きな人への忠誠心で物事が決まる。
- 実践者の傾向:担当者でもないのに情報を集めたり、不安を煽る、同情するなどして自身へに求心力UPを実施する。人を出しに使ったり理念・理論ではなく権威・多数決・表面上の偏見を主張する。
- 理念のマネジメント
- 企業文化:理念・使命・理論に基づいた人に従う。
- 緊急時:特定の個人への忠誠心よりも、プロジェクトリーダー、役割が大切。重要な課題が出てきた時ほど、組織・役割が機能してくる。
- 実践者の傾向:メンバーとリーダーが建設的に行動。勇気のないメンバーに同情するのではなく、勇気を持つために勉強・成長することを促す。該当プロジェクトリーダーが、不安を抱えたメンバーと直接関係を持てるように全力で協力。
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新着コメント
2022年10月28日
マネジメントと聞くと、「組織のトップがやるものだ、ただのメンバーの自分には関係ない」などと思いがちですが、そうでなくやはりメンバー1人1人に影響力があるのだと感じました。川村さんの、権威のマネジメントをしてしまっていた経験と似た経験をしたことが、私にもあります。リーダーでないからと影響力を考えず気軽に動いていたこと、当時を思い出すとぞっとしました。ですが今は、川村さんが具体例を挙げていたように、いちメンバーとしてでも、理念のマネジメントを実践することができるのだと、ワクワクした気持ちにもなりました。一緒にぜひ実践していきましょう!!