相手で心を満たし、付加価値を創造する
2022.11.27
はじめに
9月の研修:マナー研修
「自分に余裕がなく、相手に価値提供しきれなかった」
皆さんはこのように、相手に価値提供したいという思いはあるものの、自分に余裕がなく納得した価値提供ができなかった経験はありませんか。
私はあります。例えば、飲食店のホームスタッフとしてアルバイトしているとき、忙しさの余り接客から笑顔が消えてしまったり、必要最低限のサービスに終始してしまったこともありました。
ですが、いざ自分がお客様側だったとしたら、忙しさは理解できたとしても、期待以上の接客価値や、もう一度その店に行くほどの接客価値は感じないでしょう。
そこで、この記事では「自分でいっぱいいっぱいな状態」から「相手に付加価値を提供できる状態」になるための方法を、研修で学んだ顧客応対のメカニズムを基にお話ししたいと思います。
「相手に付加価値を提供できる人になりたい」と少しでも思っている方にはぜひ読んでいただきたいです。
感動を生む顧客応対を
ここからは、顧客応対のメカニズムについてお話ししたいと思うのですが、皆さんは今まで「素敵な顧客応対を"されて"感動した経験」はありますか。
例えば、"神対応"で有名なディズニー。キャストさんに写真撮影をお願いしたら、夜で周囲が暗かったため、スマートフォンのライトでミッキーの形の”即興照明”を作って下さりました。閉園時間間近で少しお忙しそうにしていたのにも関わらず、自分たちでは思いつかなかった素敵な写真と思い出をくださり、感動した記憶があります。
このように、相手に感動を与えるような付加価値溢れる顧客応対は、思い返してみると身近にあるのではないでしょうか。
1. マナー
そこで、ここからは、皆さんも一度は行ったことがあるであろう、イタリアンレストランの顧客応対を想定し、顧客応対のメカニズムを説明します。ぜひ身近な経験や視点で、自分の経験も思い出しながら読んでみてください。
ではまず、イタリアンレストランに行ったとき、顧客応対において不可欠だと思う最低限の店員さんの振る舞いを考えてみましょう。
例えば…
- 挨拶:「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」など
- 挨拶を全くしてくれない飲食店は中々見かけないですよね。当たり前のことかもしれませんが、挨拶がなかったら、マイナスの感情を抱く方が多いのではないでしょうか。
- 清潔感ある振る舞い
- 清潔ではない状態として、店員さんが髪や顔を触った手で料理を配膳していたり、今の時代だとマスクを外していたりしたら、不快に感じる方が多いと思います。清潔感があることは必須でしょう。
このように、どこのどんな飲食店であるかは関係なく、人として好ましい言動・相手に不快感を与えない行儀作法のことを「マナー」と言います。
このように定義づけると、相手に不快を与えない当たり前の行儀作法である「マナー」を守れているかという問いが、顧客応対の基礎の基礎を見直すために重要だと考えられます。
2. サービス
それでは次に、イタリアンレストランにおいて「マナー」の次に、求めたくなる接客やその振る舞いについて考えてみましょう。
例えば…
- メニュー説明
- メニューを読むだけで分かる場合でも、メニューの概要や読み方を説明してくれると助かりますよね。飲食店によっては、メニュー説明が業務として必須になっていることも多いと思います。
- パスタを食べやすいようにフォークだけでなくスプーンがついている
- フォークは必ず必要ですが、スプーンもついていると嬉しい方もいるのではないでしょうか、ちなみに本場ではパスタのみならず、リゾットもフォークだけで食べるそうなので、こちらも飲食店ごとの方針に左右されそうですね。
これらの例を踏まえると、「マナー」の次に大切なのは、個々人の裁量に関わらず、組織(飲食店)として「いつでも、どこでも、誰にでも」価値提供可能である、すなわち「サービス」だと考えられます。
そして皆さんお気づきかもしれませんが、「マナー」はどこの飲食店でも同様に守られていることが大半ですが、「サービス」は飲食店の一つひとつによって異なるものです。 個々の業務方針や”マニュアル”で規定可能な、属人的でない顧客応対こそが「サービス」であり、その意味でマニュアルを理解し徹底出来ているかという観点は自身の顧客応対を見直す際にも役立つと思います。
3. ホスピタリティ・おもてなし
相手を不快にさせない「マナー」も、いつでも、どこでも、誰にでも提供される「サービス」も徹底されている。でもそれ以上に価値があり感動が伴う接客を受けたことがある方もいるのではないでしょうか。
そこでここからは、「マナー」「サービス」の先にあるイタリアンレストランにおける接客について考えてみましょう。
例えば…
- 状況に応じた対応
- 手が汚れやすいピザを注文したら、余分におしぼりを渡してくれる。白い服を着ていたら紙ナプキンを用意してくれる。いつも必要ではないけれど、その状況においては有難い対応に小さな感動や気遣いを感じた経験がある方もいらっしゃると思います。
- 「いつもの」がすぐ出てくる
- 顔なじみで何度も通っているお店。そんなお店で、以前の注文内容を踏まえて自分の好みに合わせた料理を提案してもらったら、嬉しく感じる人は沢山いるでしょう。今だけでなく、今までにも心配りをしてくれていることは、感動ある顧客応対に繋がるはずです。
これらの例から、「マナー」「サービス」の先にあるのは、「この時、この場、この人だけ」に提供される属人的かつ個別化された価値提供であると考えられるのではないでしょうか。
その上で、「この時、この場、この人だけ」の顧客応対の中にも違いがあると思います。それは、目の前に相手がいないときや、今までの相手との記憶にも心配りをしているかどうかです。
そして、この違いを考慮し…
相手がいるとき中心の「この時、この場、この人だけ」の顧客応対を「ホスピタリティ」
相手がいないときも相手を想い続ける「この時、この場、この人だけ」の顧客応対を「おもてなし」
と研修内では定義付けていました。
これらを踏まえると、「この時、この場、この人だけ」の顧客対応を心掛け、更に相手がいない場合もそんな顧客対応の在り方を模索することが、顧客に感動を届けることの大きな一歩になるのではないでしょうか。
「〇〇さんがいいんです」と言われる人に
実は、先ほどの「マナー」「サービス」「ホスピタリティ」「おもてなし」のメカニズムの説明に、イタリアンレストランの事例を用いたのは、大学1年生から現在に至るまで約3年半、私自身がイタリアンレストランでアルバイトしているからでした。
そこでここからは、今度は自身が価値を提供”する”側として、「ホスピタリティ」や「おもてなし」を実現するために必要なことについて、実例を交えながらお話ししたいと思います。
ロールモデルから顧客応対を学ぶ
私がアルバイトしているイタリアレストランには、「〇〇さんは今日はいないの?」とよくお客様に聞かれるホールスタッフの先輩がいらっしゃいます。
その方は、いつもお客様目線で丁寧にそして楽しそうに接客されているのが私から見ても印象的で、「私もこんな接客ができたらな」といつも思わされます。
私もその場では感謝されたり、「素敵な気遣いをありがとう」とお客様に言っていただけるときもあります。ですが、お客様に「〇〇さんがいい」とバイネームで呼ばれるまでの、お客様にファンになってもらえるような接客は中々難しいと未だに感じています。
そして、私のように、バイネームで呼ばれるほどの顧客応対をしたいけれど、そのためにどうすればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。そこで、バイネームを実現する顧客応対はいかにして生まれているのかを、私もこれを機に改めて考えてみました。
すると、ロールモデルとなるその先輩スタッフには以下の2つの特徴がありました。
- マニュアルや当たり前の業務を誰よりも大切にし、誠実に徹底していること
- お客様とのやり取りを自ら楽しみ、お客様の喜ぶことは何かを常に考えて準備し続けていること
1. マニュアルや当たり前の業務を誰よりも大切にし、誠実に徹底していること
これは、日々の積み重ねと言い換えられます。どんなに忙しい中でも、当たり前を徹底しきってこその、付加価値が提供できることを常に意識し、実行する気概が重要です。
また、これらは先ほどの「マナー」「サービス」を守るために必要なことでもあります。まずは日々、誠実に当たり前を徹底し「マナー」「サービス」の実践を前提とすることが、重要なのです。
2.お客様とのやり取りを自ら楽しみ、お客様の喜ぶことは何かを常に考えて準備し続けていること
これは、お客様の喜びを自身の喜びとして捉え、「相手で心を満たす」思考転換とも言い換えられます。マニュアルや当たり前を超えて、一人の人として自分ができる最高の顧客応対を提供するプロ意識にもなり得るでしょう。
そして、この「相手で心を満たすこと」こそが、属人的かつ個別化された顧客応対である「ホスピタリティ」や「おもてなし」の実現に繋がるのではないでしょうか。
「相手で心を満たす」には
先ほどは、「ホスピタリティ」「おもてなし」を実現するには、マニュアルや当たり前を日々誠実に徹底することを前提にした上で、「相手で心を満たすこと」が重要というお話をしました。
そして、私がロールモデルである先輩に近づくために必要なことは、当たり前を徹底した上で、重要で潜在的な当たり前に気づくための経験やトレーニングであると考えているため、日々精進したいと考えています。
ですが、当たり前を日々誠実に取り組むことだけでは、「相手で心を満たすこと」が出来ない場合もあると思います。それは、冒頭でお話しした通り、「相手で心を満たすこと」が重要だと思っていても、自分に余裕がない「自分でいっぱいいっぱいな状態」である場合なのではないかと考えています。
そこで最後に、「相手で心を満たすこと」を実現するために、自他にどのように向き合うべきかについてお話しします。
「相手で心を満たす」状態に変われた経験
イタリアンレストランでのアルバイトでは、「相手で心を満たすこと」に至らない点もまだまだ多いと私自身も感じていますが、アルバイトの他で私にとって「相手で心を満たすこと」ができた経験があります。
それは、キャリア支援を行う面談サービスにおける経験です。
私はen-courage早稲田支部という、早稲田大学の就活生をキャリア面談などを通して支援するNPO法人の運営として活動しています。その中で、現在23名の就活生のキャリア面談を担当し、日々面談を通して、彼らのキャリアを支援しています。
そして、このキャリア面談は2月から行っているのですが、5・6月頃に「自分でいっぱいいっぱいな状態」に陥り、上手く面談出来ている実感が得られない時期がありました。そのきっかけは、キャリア面談を運営・管轄する部署の責任者に就任したことでした。
当時は自覚はありませんでしたが、今思うと、早稲田大学の何千人もの就活生のキャリア面談を運営・管轄するという責任感から「責任者である自分が『一番、面談が上手くいなくてなならない』」という使命感を持っていました。
そうすると、少しでも面談内容が納得できなかったり、思ったようにいかないと、より自分を追い込んでしまい、自ら「自分でいっぱいいっぱいな状態」になってしまっていました。
そんな状態のとき、ある就活生の子と面接対策を目的に面談を行いました。私は、「面談をするからには、面接を通過する確信が持てるくらいの状態で面談を終えてほしい」という使命感に燃えていました。
ですが、その面談では、面接で聞かれるであろう想定質問の対策をしているうちに、「目の前の面接対策よりも、土台となる自己分析の方が実は今やるべきなのではないか」という話になり、急遽、自己分析をメインに、その就活生の方の価値観やそのキーワードを引き出すことに努めました。そして、その就活生の方は大変満足して面談を終えて、面接対策は面談内の自己分析を基に自分で行ってくれたこともあり、見事選考を通過してくれました。
そして、この面談は少しずつ私の「自分でいっぱいいっぱいな状態」になる原因となっていた”思い込み”を壊すきっかけになりました。最初に想定した通りにいかずとも、相手に価値を提供できる場合はあるということ。そもそも、面談が上手いかどうかよりも、「この時、この場、この人だけ」の私にしかできない面談をやりきるために徹底的に準備し、そのために日々学び続けることの方が重要だと気づいたのです。
自他をありのままで受け入れる
責任感や「こうありたい、こうあってほしい」という強い想いや、相手のためを思う気持ちが、逆に「自分でいっぱいいっぱいな状態」を招いてしまうことは誰しもあると思います。
ですがそんな時こそ、飾らないありのままの自分を受け入れてあげてほしいです。相手に価値を提供できることは勿論、できないことも、受け入れる謙虚さと自分に対する寛容さが、「相手を心で満たすこと」に必要な心の器を作るはずです。
そして、相手のありのままを受け入れることも大切です。自身の想いやステレオタイプを押し付けずに、相手をありのまま受け入れることで、相手の潜在的なニーズを汲み取ることができる「相手に付加価値を提供できる状態」につながるでしょう。
このような自他をありのままで受け入れることの大切さを知ってからは、「責任者である自分が『一番、面談が上手くいなくてなならない』」という使命感にかられなくなりました。また、担当している就活生とのやり取りを自ら楽しみ、彼らに貢献できることは何かを常に考えて準備し学び続けることも楽しめるようになりました。
面談が周囲と比較して上手いかどうかにとらわれず、今は「誰よりも面談を楽しみ、担当している就活生のことで心を満たしている人」でありたいと心の底から思っています。
つまり
自他のありのままを受け入れることは、「相手で心を満たす」ことを自ら楽しむための自身の心の器を作り出す
のだと考えていますし、私自身も自他のありのままを受け入れる寛容さを持つ人財になれるよう、今後も自他へのまなざしを常に見直し続けたいと思います。
研修で学んだこと
- 挨拶は互いの準備を確認する場
- 第一印象は6秒で決まる
- 顧客に接する瞬間は、組織のブランドを背負っている
- 真実の瞬間(15秒)が顧客の満足度を左右する
- ホスピタリティとおもてなしを分けるのは、顧客の情報を知り、今だけではなく顧客のその先まで想像した価値提供ができるかどうか(潜在ニーズへのアプローチ)
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