プロジェクトの事前準備【施策決定までのプロセス】

プロジェクトマネジメント(基礎2

はじめに

今回はこれから新規のプロジェクトを始める、または始めた段階で困難に直面している方向けに、準備段階のリスクマネジメントについて記述したいと思います。

大前提、プロジェクトにおけるリスクは様々なものがあります。時間、コストなどがその例です。ただし、そのような問題はバッファ(余裕)を設けることで解決できます。

しかし、施策・ニーズの衝突の問題は解決が難しいです。また、準備をしておかないと行き当たりばったりなプロジェクトに陥ってしまいます。

今回はこの施策・ニーズの衝突のリスクマネジメントをテーマに記事を書きます。

私が考えるリスクマネジメントのフローは以下の通りです。

  1. ニーズを「理念」で整理
  2. 施策・ニーズをマトリックスにまとめ、障壁を確認
  3. 実行する施策を選択

以上のステップを各項目ごとに、私が行なっているエンカレッジでのプロジェクトを例に挙げて説明します。

(私はエンカレッジで長期インターン紹介のプロジェクトを行っています。自己紹介記事はこちら 『殻を破って新しい自分へ!』

1.ニーズを理念で整理

 プロジェクトの登場人物はサービスの対象となる人(俗に言う消費者)だけではありません。外部顧客・内部顧客という言葉がありますが、様々なステイクホルダーが存在します。また、そのステイクホルダーがそれぞれのニーズを持ってプロジェクトに携わっています。

 ステイクホルダーのニーズ同士の関係は非常に複雑かつカオスな状態と言えます。

 以下が自分のプロジェクトを例に挙げたニーズです。これではニーズ同士が衝突してしまい、中々方向性が定まりません。このままそれぞれのニーズに沿った施策を提案しても複雑で、どれを選べば効果的か、分からなくなってしまいます。

各種ステイクホルダーニーズ
顧客(エンター)優良な長期インターンの応募
 長期インターンを通した成長
協賛企業優秀な学生層の獲得
 経費の削減
長期pjチーム多種多様な案件の獲得
 申込者数の増加
チームメンバープロジェクトを通した成長
エンカレッジ組織全体)新規ユーザーの獲得
 リピーターの増加

こうした時、理念等を通して方向性の一致を図ることで複雑な状態を整理することができます。

ex)A&PRO 塾部門                                                   A&PROではこうした課題に対して「理念・クレド」を用いることで、様々なステイクホルダー(塾講師・塾生・塾経営者・教材の外注業者)のニーズを整理しています。

「エンターの体験向上」という価値観をエンカレッジの中(エンカレッジ・長期pjチーム)で統一します。すると、エンターのニーズを満たすことに目的が向きました。多種多様な案件の獲得はエンターのニーズを満たすために行なっていると考えることができます。この要領で価値観の統一により、ニーズとステイクホルダーが整理されていきます。

もちろん各ステイクホルダーのニーズを満たすことも重要ですが、「優先順位が高いもの」として一つのものを共有するのは大きな意味があります。今回は省略して以下の表にまとめました。

各種ステイクホルダーニーズ
顧客(エンター)優良な長期インターンの応募
長期インターンを通した成長
協賛企業優秀な学生層の獲得
 経費の削減
チームメンバープロジェクトを通した成長

2.施策・ニーズをマトリックスにまとめ、障壁を確認

さて、ステイクホルダーごとのニーズが整理できたところで、それぞれのニーズに対して施策を考えていきます。

施策×ニーズのコンフリクトを分析→改善

 以下の表のように、顧客のニーズに対応させて施策を考案しました。ニーズに対して施策が有効なものには○を、一方で衝突してしまうものには×と色付けをしました

施策×ニーズのマトリックスを見ると「FB制度の立ち上げ」と「企業側の経費を安く抑えたい」ニーズに衝突が起きていることが確認できました。企業にFB制度の導入をするには、時間と手間がかかってしまいます。これは当初の企業のニーズであった「経費の削減」と矛盾してしまいます。

この時取れる選択肢は2つあります。

  1. 施策を廃案する。
  2. 新しいアイデア(施策)でテコ入れし、衝突を解消する。

今回は②を選択し、「企業側にHP掲載料を無料にする代わりに、FB制度に協力してもらう」という施策を実行することで衝突を解消しました。

3.実行する施策を選択

 2の変更点をもとに、今回選択した施策は以下の4つです。

  1. リファラルを利用した案件の獲得
  2. 案件を無料掲載する代わりに、協賛企業にFB制度に協力してもらう。
  3. エンカレッジの利用者のみにサービスを提供
  4. チームメンバーに対して、プロジェクトごとに裁量権を持たせる。

施策とニーズの衝突を事前に確認することができたため、私のプロジェクトは社会人マネージャーとのミーティングの場面で、即座に2の提案を行うことができました。

このようにプロジェクトをスムーズに行う上で、準備は非常に大切です。今回のような施策・ニーズの整理を行うことは、このプロジェクトだけでなく、多方面で活かすことが出来ると思っています。

最後に

今回記事では、プロジェクトを始める際の、①ニーズの整理 ②施策とニーズのコンフリクトの解消 について書いてきました。準備段階でこれができると、プロジェクトを進める際の不確実性を少しでも減らすことにつなげることができます!

これから研修を受ける方へ

今回の研修では、前回に続いてプロジェクトマネジメントについて学びました。ご自身でプロジェクトを持っている方、これから始めたい方に刺さる研修だと思います。自分のプロジェクトを見つめ直す良いきっかけになります!

研修で学んだこと

  • 研修を受けて学んだこと
  • ニーズ調査
  • 外部顧客だけでなく内部顧客も視野に入れる。
  • 顧客ヒアリングのロードマップ
  • 誰に聞くか・誰が聞くかによって回答内容が変わる。
  • 顕在的なニーズだけでなく潜在的なニーズを見つめる(アンケートが最適解とは限らない。例塾のパーテーションと集中力)
  • 聞く側・聞かれる側両方に権限が必要
  • 施策同士のコンフリクト・施策とニーズのコンフリクトの考慮
  • あらかじめ考慮しなければ、行き当たりばったりのプロジェクトになってしまう)
  • プロジェクトのアウトプットイメージの活用

この記事の著者/編集者

小川勇 早稲田大学 政治経済学部  

サークルの後輩や同期のキャリアの関心度が低いことを課題に感じ、それを変えるべくキャリア支援NPO法人『エンカレッジ』に加入。現在は1・2年生に向けてオンラインイベントを通してキャリア支援を行なっている。加えて、長期インターンの分野で学生と企業のマッチング事業の立ち上げのリーダーとしても活動している。

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