もう忘れさせない!生徒に英単語を覚えてもらう方法

今月の研修:記憶のメカニズム

はじめに

私は個別指導塾のアルバイトで主に英語を教えています。英語を教える上で、単語学習に取り組んでもらうことが重要になります。単語が分からなければ、英文は記号の羅列と変わらないからです。しかし、暗記が苦手で単語学習の成果が出ない生徒も多くいます。

そこで今回の記事では、記憶のメカニズムを踏まえて私自身の英語指導を振り返り、単語を覚えてもらうための工夫と今後改善すべき点について考えてみました。

塾講師に限らず誰かに何かを教えて導く立場にある人は、この機会に自身の取り組みを振り返ってみてはいかがでしょうか?

記憶のメカニズム

感覚記憶から短期記憶、そして長期記憶へ

感覚記憶とは、最も保持期間が短い記憶です。各感覚器官に特有に存在し、瞬間的に保持されます。外界から入力された刺激情報は、まず感覚記憶として保持されます。例えば、ただ眺めているだけの映像は感覚記憶にあたります。

短期記憶は、保持期間が短く、一度に保持される情報の容量の大きさに限界がある記憶です。感覚記憶の中から、注意を向けられた情報だけが短期記憶として保持されます。例えば、電話をかけるために一時的に覚えた電話番号は短期記憶にあたります。

長期記憶は、保持期間が長い記憶です。短期記憶の中から、脳に特に重要と判断された情報だけが長期記憶として保持されます。例えば、自宅の住所などです。

「忘却曲線」と「記憶の固定化」

出典:https://oreno-zyuken.com/technique/ebinguhausu/

一度記憶した情報は、復習しなければ徐々に忘れてしまいます。そして、記憶し直すために必要な労力は時間が経つと共に増えていきます。上の図では、時間経過と節約率の関係が示されています。節約率とは、記憶を再度定着させる際に、最初に情報を記憶した時の何%の労力が必要かを表すものです。

一方で、こまめに復習することで記憶は忘れにくくなります。復習を繰り返して記憶を強く定着させることを「記憶の固定化」と言います。

塾講師の取り組みを振り返って

上記した記憶のメカニズムを踏まえて私の取り組みを振り返ると、理に適っていた部分と改善すべき部分がありました。

私が英語指導で工夫していた点は以下の3つです。

  • 五感を用いたインプット
  • 24時間以内の復習
  • 確認テスト

単語を覚えてもらう際には、まず音読しながら指で書く真似をさせることで、聴覚・触覚・視覚を駆使して暗記させていました。

単語を目にするだけでは感覚記憶に留まり、すぐに忘れてしまいます。「五感を用いたインプット」は、五感を駆使して刺激情報を増やし、感覚記憶を短期記憶へと変化させることに役立っていました。

また、24時間以内に復習させた上で、1週間後の次回授業で「確認テスト」を行っていました。どちらも復習が目的であり、労力を節約しつつ記憶の固定化につながっていました。

一方で、2〜4日後の復習が仕組み化されていなかったことが分かりました。これまでは「毎日寝る前に復習してね」など生徒任せになっており、実際に取り組んだか確認することができていませんでした。

そこで、記憶のメカニズムを踏まえて復習の意義を伝えた上で、以下の2点を実施することが有効だと考えました。

  • 模擬確認テストの配布
  • 自習日の設定

まず模擬確認テストを次回授業時に提出させることで、生徒が復習に取り組んだかを講師側が把握することができます。また、点数が出るため生徒が自身の学習状況を把握するとともに、モチベーションを維持することにもつながります。

さらに、自習日を設定することで安定して復習の機会を作ることができます。忙しさや気分に左右されないよう、講師側が生徒のサポートをしてあげることが重要です。

今後の生徒指導では、より効果的な記憶学習ができるよう、復習を仕組み化していきたいと思います。

おわりに

この研修を受けて、まだまだ指導の質を向上させる余地があると改めて実感しました。記憶のメカニズムを踏まえて私自身の指導を振り返ると、理に適っていない部分・より工夫できる部分が残っていました。生徒に対して少しでも多くの価値を提供できるように、日々指導内容を向上させていきたいと思います。

これから研修を受ける方へ

本研修では、記憶のメカニズムについて理論的に学ぶことができます。また、効率的に記憶する方法を理解することにもつながります。学生も社会人も覚えなければならないことは尽きないため、全ての人にお勧めできる内容です。

研修で学んだこと

  • 感覚記憶
  • 短期記憶
  • 長期記憶
  • エピソード記憶
  • 意味記憶
  • 手続記憶
  • 忘却曲線

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