1つ1つの発言に「狙い」はあるか?
2021.01.26
今月の研修:アサーティブコミュニケーション
無意識に、感情的なコミュニケーションを取ってしまった経験
読者の皆さんは、話し合いで意見が対立した際、感情的になって、相手の意見に耳を傾けることができなかった経験はないでしょうか?
特に、自分自身の考えや経験に自信があったり、自分なりのポリシー(信念)があったりする人に、こうした経験は多いのではないかと思います。
今回の研修では、アサーティブコミュニケーションというテーマのもと、自分と相手、双方の権利・意見を大事にして建設的に話し合いを進めるための方法を学びました。何かを話し合う際、その場その場の思い付きで、特に狙いを持たずに発言してしまうことがあるな、という方には特におすすめです!!
大学1年生まで、自身の意見を積極的に発信することが苦手だった私は、以前同様の研修を受講した際、まさしくpassiveな状態であったことを痛感し、自身の発言や行動を見直すきっかけとなりました。
そして今回改めて研修を受講した中で得た気づきが、assertiveであろうと意識するあまり、知らず知らずのうちにaggressiveな状態に陥っていた瞬間もあった、ということです。以下は、大学3年の終盤から加わった学生団体での経験談です。
「定例MTGの議事録が毎回直前にならないと共有されない」という現状に対して、私は課題を感じていました。そこで私は、このことを議事録作成担当者に対して相談し、次回からはMTG前日の○○時までに共有する、という合意を取りました。しかし改善は見られず......以下は当日のやり取りです。
私:今日の議事録共有が遅れたことについてはどう考えている?
相手:悪かった、次からしっかりやるよ
私:先週も同じことを言っていたよね、直すつもりあるの?
相手:うるさいな!やるって言ってるんだからいいだろ!
当時の私の気持ちを振り返ると、以下のような具合です。
- 約束を守っていない、かつそのことを深刻に捉えていない相手に非がある
- そもそも議事録は事前に共有するに越したことはない
- 周囲のメンバーも、私と同じように思っているはずだ
直後別のメンバーから、「萩原が言っていることは分かるし、正しいと思う。けれど今回の相手がどう考えているかはまた別の話でもある」という趣旨のアドバイスを受けました。当時の私は、その場で一定度の理解は示しつつも、では自身のコミュニケーションをどう改善させていくべきか、までは考えることができていませんでした。
一方改めて振り返ると、私は完全にaggressiveな状態にいたのだと感じます。相手が考えていること自体を理解・尊重しようという姿勢に欠けていました。本記事の後半では、aggressiveな状態に陥っている際の兆候や、assertiveな状態へと改善するための具体的な意識づけについて、2つの『棲み分け』をもとに記載していきます。
「事実」と「推測や感情」
まず一つ目が、「事実」と「推測や感情」の棲み分けです。先ほどの経験の中で私は、状況として相手が期限内の議事録共有を怠ったこと(=事実)と、その事実を相手は深刻に捉えていない、またそんな相手を、私を含めた周囲は良く思っていないのではないか(=推測や感情)という2つを明確に区別せず、一気に相手に伝えました。相手の受け取り方次第では、すべてが事実のように聞こえ、決めつけや否定をされた、と捉えられても仕方ない言い方でした。「事実は○○だ」「私は△△と考えている」この使い分けができていない場合は、aggressiveな状態に陥っている可能性のあるサインだと言えるでしょう。
「わたし」と「あなた」
そしてもう一つが、「わたし」と「あなた」の棲み分けです。これも先ほどの経験をもとに考えます。私は、私が当然と考えることを、相手や周囲の第3者も含め同じように当然と考えている、もしくは仮にそうでなくても、私が説明すれば伝わる、と考えてしまっていました。具体的には、議事録は事前に共有すべきものである、相手に完全に非がある、といったことに対してです。相手の意見を理解する時間と自分の意見を伝える時間、これらを意識的に分けることができていない場合も、先ほど同様aggressiveな状態に陥っている可能性のあるサインと言えるでしょう。
「棲み分け」を実践したコミュニケーション
ここまでお伝えしてきたことを踏まえ、私は当時のことを改めて振り返り、以下のことを常に胸に刻むべきだと感じました。
私がどう考えるかは誰からも干渉されないが、同様に、相手がどう考えるかにも、私は干渉することはできない。
目を向けるべきは、自らの考えの正しさ、ではなく、両者の考えをいったん受け止めあった上で、同じチームとしていかに合意を取るか、なのだと思います。実際当時の私は、最初から私の考えをいかに主張しようか、通そうか、とばかり考えていました。これでは、たとえ私の意見の方が筋が通っていたとしても、相手はなかなか素直に応じてはくれないでしょう。
最後に、現在実践中の「棲み分け」を意識したassertiveなコミュニケーションが、冒頭の経験談を例にとるとどうなるのか、具体例を示します。1つ1つの言葉を、どのような「狙い」を持って使い分けているのか、意識しながらお読みください!!
私:議事録共有が期限を過ぎていたけど、まずその事実は間違いないかな?
相手:そうだね、間違いない。
私:分かった。俺は、議事録共有は会議の効率化のために重要だと思う。
私:加えてこの状況からして、○○は今回の件をあまり深刻に捉えていないんじゃないかとも思ってしまう。この点、○○はどう考えているかな?
相手:議事録共有は確かに重要だと思う。でも期限に遅れてしまうことに対しては、そこまで重大なことだとは考えていなかったかな。
私:なるほど。共有すること自体が大事だと思っているのは、お互い同じなんだね。となると、○○は先週決めた約束の期限にあまり納得していないんじゃないかと思うのだけど、そのあたりはどうだろう?
相手:うん、実際丸1日前って期限は少し早い気がしているかな。
私:そうなんだね、わかった。そうしたら、事前共有の期限のタイミングについて、今一度みんなも含めて話し合ってみるのはどうかな?
相手:確かにそうだね!きちっと俺も含めて納得したルールを決めよう!!
これから社会人になるからこそ・・・
私と同じく今後就職をする方々にとっては、企業の中の1メンバーになった際に今回の内容が活かされるのではないかと考えます。学生以上に立場や役職が明確化する企業では、やはり私たちはpassiveになりがちです。逆に言えば、時にはaggressiveな上司に遭遇することもあるかもしれません。そんな時にはぜひぜひ、今回の記事を思い出してみてください。
この上司は「事実」と「推測や感情」を混同していないか?あるいは上司自身の当たり前を普遍的なものとして捉えてはいないか?こう考えることができれば、建設的な議論をするためのヒントが見つかるかもしれません。
もちろん、私を含め読者の皆さんが上司という立場になった際には、aggressiveなコミュニケーションではなく、assertiveに。議論の際には事実をベースに話を進め、場合によっては上司である私たち自身の非を素直に認められる、そんなかっこいい上司になりたいですね!!
小川勇 早稲田大学 政治経済学部