主体的に動くメンバーを育成するには

今月の研修:リーダーシップパワー理論

「なぜメンバーは主体的に動いてくれないのだろう…」

リーダーならこのような悩みを抱えたことがあると思います。

その答えはとても簡単で当たり前です。

それは"メンバーが主体的に動きたいと思っていない"からです。

主体的に動くメンバーを育成するためには、メンバーに対して影響力を持ち、メンバーが自ら主体的に動きたいと考えるように導く必要があります。

「影響力」とは相手の欲求に依存する

影響力とは、「他人に働きかけ、行動変容を促す力」のことを指します。

人に何かを言われて行動が変わるときには何かしらの影響力を受けています。

この際に"相手の欲求に合った影響力"を与えることで効果的に人を導くことができます。反対に、"相手の欲求に合わない影響力"を与えようとするとうまく導けない可能性があるのです。

つまり、「影響力」とは相手の欲求に大きく依存するのです。

影響の与え方は自分の過去に引っ張られてしまう

一方で、自分が与える影響力というものは、過去に自分がされたものに引っ張られてしまう傾向があります。

塾講師としてアルバイトをしていた頃、私は無意識に自分の成功体験を持ち出していました。勉強方法に関しても、私の恩師が教えてくれていた勉強法を踏襲していました。

皆さんも無意識に自身の成功体験や、影響を受けた人に引っ張られているのではないでしょうか。

これと同様に、皆さんがよいと思っているリーダー像というものも、相手によっては欲求に応えておらず、効果的にメンバーを導けていないかもしれません。

そこで私は"マズローの欲求5段階"の中の社会的欲求承認欲求自己実現欲求に着目しました。

これらを意識し、メンバーの欲求をより高次元に導くことが、主体的に自ら動きたいと考えるメンバーを育てることに繋がると考えます。

実はあなたが気づいていないだけで、あなたが思っている以上にメンバーは羽を伸ばして活躍したいと思っているかもしれません。

第三段階:社会的欲求

「友人や家庭、会社から受け入れられたい」という欲求

組織に参画したばかりのメンバーは社会的欲求が満たされていない可能性があります。そのため、メンバーとして歓迎するためにプロジェクト単位でのアサインをすることで組織に所属している実感が湧き、社会的欲求は満たされていきます。

第四段階:承認欲求

「尊敬している他者から尊敬されたい、認められたい」という欲求

仕事に慣れてくると、より大きな裁量で組織に関わりたいと考えるメンバーが出てきます。そのようなメンバーは負荷が軽いと「暇疲れ」してしまいます。そのため、領域単位でリーダーを任せ、その過程を誉めることで承認欲求は満たされていきます。

第五段階:自己実現欲求

「自分の世界観や人生観に基づいて『あるべき自分』になりたい」という欲求

組織の中で役職を全うできるようになると、自分自身や組織をより良くしていきたいと考えるメンバーが出てきます。そのようなメンバーは実は組織の課題に気づいているが、発信していない可能性があります。そのため、組織の内部の話を腹を割って相談し、課題について一緒に考えることで自己実現欲求は満たされていきます。

組織の成長と欲求

メンバーを導き、主体的なメンバーに育てるために、まずはメンバーの欲求を1段階上げてみませんか?

私は戦略的にメンバーの欲求を上げるために欲求ごとにアプローチ方法を考えてみました。

欲求を1段階上げるためにできることは何か。実際にメンバーの顔を思い浮かべると考えやすくなります。

皆さんも自分の組織だったら表はどのようになるか考えてみてください。

メンバーの欲求を上げることは大変なことではありますが、欲求が上がった人は必ずあなたの力強い協力者になってくれるはずです。

自身のセクションにおける成功と失敗

社会的欲求を満たす部署を実現

私はキャリア支援の学生団体で大学1、2年生を対象としたイベント部署のリーダーを務めていました。

当時の私が意識したことは、「仲がいい部署」です。

これは欲求5段階の中の、社会的欲求にあたります。

そのために、アットホームな雰囲気を作ることを心がけました。週次ミーティングのアイスブレイクを毎回楽しみ、毎月行われる全部署が集う総会では、オンラインで各自が受ける他の部署とは異なり、オフラインで集まっていました。

これらの取り組みにより、私の部署は「仲がいい部署」という意味で上手くいったと思います。

これは大学4年生になって社会人になっても仲良くできるような友達を作りたいというメンバーの社会的欲求に応えることができたからです。

メンバーの主体性をあげることができないという悩み

その後、より良い組織にしたいと考えた私はメンバーがよりリーダーに近い視点で課題を解決できるようになればいいと考えました。

そのために私が意識したことは、「メンバーが主体的に取り組む組織」です。

これは欲求5段階の中の、自己実現欲求にあたります。

これを実現するために、目安箱を設置して意見を募ったり、ミーティングごとにもっと意見や質問を発信するように頼み続けたりしました。しかし、目安箱への意見はなく、ミーティングでの活発な議論行われることもあまりありませんでした。

私がメンバーを導けなかった理由は、適切なメンバーの承認欲求を満たす前に、自己実現欲求を満たそうとしてしまったためです。すなわち、メンバーの欲求に応じたアプローチが取れていなかったのです。

承認欲求を満たすために、協力的なメンバーに対しては業務を領域で分け、リーダーを任せることで視座を着実に高めることをするべきだったと後悔しています。

主体的なメンバーを育てるためには

メンバーの欲求は組織に所属してから次々に変化していきます。一般的には所属してから時間が経ち、できることが増えるほど高次元の欲求に変わっていきます。

そしてもう一つ重要なこととして、メンバーの活動を承認することも、メンバーが自分で考えて解決することも、効果はすぐに出ないことです。

そのため、メンバーに主体的に動いてほしいと考えるならば、着実に欲求を高めていくしか方法はありません。組織のピンチになってから焦っても遅いのです。

やる気にさせるのではなく、その気にさせる

「やる気にさせるのではなく、その気にさせる」

私が大切にしている言葉です。"その気にさせる"には、こちらからメンバーのやる気を掻き立てるだけでは実現されません。メンバーを観察し、メンバーが持つ欲求を捉え、欲求ごとに適したアプローチをし続けることで実現されるのです。

そのためには様々な属性の人間、欲求にも対応し、リーダーシップを使い分ける必要があります。それがまさに真のリーダーシップなのではないでしょうか。

これから研修を受ける方々へ

A&PROではビジネスの理論を学ぶだけではなく、自分の経験と結びつけて実践できることを目指します。今回の研修では自身のリーダーシップの取り方と向き合い、改善点も多く見つかりました。学生、社会人を問わず、リーダーを目指している方々にぜひ受けてほしい研修です。

研修で学んだこと

  • 人は欲求に応じて影響を受ける人は欲求を満たすものに対して影響を受け、それは人それぞれ異なる。そのため、自身が今まで当たり前だと感じていたリーダーシップは人に応じて柔軟に変える必要がある。
  • 信頼残高を意識する自身が関わる人全てに信頼の口座があると考える。それはコツコツとしか預金を積み重ねられないが、失うときは一気に失う。それと同様に身近なことには約束をコツコツ守り、信頼を積み重ね、約束を破り信頼がガタ落ちすることを防ぎたい。

この記事の著者/編集者

中都智仁 早稲田大学 教育学部数学科 

早稲田大学在籍。サークルとバイトだけの大学生生活を送っていたが、コロナ禍になり自分のキャリアを見つめ直し、ビジネススクールに入校。
『もっと早くからキャリアを考えればよかった』という後悔からキャリア支援団体のen-courageで早稲田生のキャリア支援をしている。1、2年生向けのイベントを企画する部署のリーダーを務めたり、メンバー採用の最終フェーズの担当者を務めたりしていた。
メンバーの成長を促進する一流のリーダーになるべく、リーダーズカレッジに参画。

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 星野歩華

    早稲田大学 文化構想学部 2022年02月25日

    メンバーが主体的に取り組む組織というのは、私も同じように目指してなかなか上手くいかずに悩んでいた点でもありました。
    研修および中都の記事から、段階を飛ばして相手に高次の欲求をいきなり求めるのではなく、一歩一歩着実に欲求を高めていく必要があることがよく理解できました。
    マズローの5段階欲求と紐づけていたことで、着実にアプローチする必要性もより伝わってくる記事でした。

    「その気にさせる」コミュニケーション、私も意識していきたいと思いました。

  • 信宗碧

    早稲田大学 文学部 美術史コース リーダーズカレッジ リーダー 2022年02月25日

    メンバー育成の段階的なイメージがつく内容でした。
    リーダーという立場であるがゆえに、メンバーを育てなければという思いに駆られる事があります。しかし、そのような場合リーダーの理想とメンバーの理想にギャップが生まれ、マイナスに働いてしまうことも少なくありません。

    今回の中都の記事では、まず相手の求めている仕事、やりがいを感じられる業務に的確に配置し、そこからさらに高次元の欲求や影響力に結びつけていくことでメンバーは成長していくという事を学べました。

    メンバーの現状を認識し、段階的な成長のロードマップを組めるようなリーダを目指していきます。

  • 原駿介

    早稲田大学 商学部 2022年02月25日

    「主体的なメンバーを育成する。」
    その難しさは、リーダー経験者ならば皆経験したことがある困難だと思います。
    中都さん自身のセクションでの経験は、自分自身も身近で見ていたからこそはっとさせられるものでした。
    そして、メンバーを「その気にさせる」ために私も日々奔走していこうと決意できる、そんな記事でした。ありがとうございました!

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