大事な時、本当に頼りになるリーダーとは?
2020.10.24
今月の研修:災害時・緊急時の対応
周りをいかに見られるか、活かせるか、
様々な災害・事故を分析すると、発生時にマニュアルを見る余裕のない緊急事態が存在します。その中でも遭遇率の高い「地震」に焦点を当て、私たちは避難訓練を行いました。マニュアルを見ずともマニュアル通りに動き、かつ想定外にも対応するトレーニングです。
私は今回、避難行動を主導するリーダーの補佐役として避難訓練に臨みましたが、その中で以下の学びを得ました。
「緊急時に本当に頼りになるのは、A:常に先頭に立って動くだけのリーダーではなく、B:全体を見渡す視野も合わせ持つリーダーである」
もう少し具体的にご説明します。Aのリーダーは第3者的に見ると、いかにも頼りがいのあるリーダーという風に映るかもしれません。しかしAのリーダーには、緊急時において大きく2つの欠点があると考えます。
まず1つ目が、優先順位を正しく判断して行動に移す必要のある緊急時において、最初から1人で全てをやり切ろうとすることは、最善とは言えません。すべての判断・行動を1人で抱え込むよりも、必要に応じて周囲のメンバーに効果的にサポートを求め、協力して対応する方が、よっぽど効率的かつ低リスクではないでしょうか。
例えば地震が発生した際、身の安全の確保・建物や避難経路の安全確認・顧客の人数確認等々、確認事項はたくさん存在します。これらを確実かつスピーディーに実施していくには、周囲のメンバーから頼りになる存在を的確に見極め、彼らに効果的に指示を与え、同時進行で取り組むことが不可欠です。こうした行動をとれるのは、常に視野広く全体を見渡すこともできる、Bのリーダーでしょう。
実際私はリーダーの補佐役として訓練に臨んだ際、リーダーが私自身に具体的な指示を出してくれる(と同時にリーダー自身が何をするかを共有してくれる)ほど、避難行動自体がスムーズに進む、かつ想定外の事象にも落ち着いて対処できるように感じました。
そして2つ目が、周囲のメンバーに与える心理的影響です。Aのリーダーは、常にこれから取るべき行動にばかり目が行ってしまい、その瞬間の周囲の状況把握が疎かになりがちです。こうしたリーダーの姿は、周囲の顧客にとってみれば、今の状況を掴めていないように映り、焦りや不安を与える存在になってしまいます。
ここでも地震を具体例に挙げますが、先述のようなマニュアルとして定められている確認事項以外にも、状況によって取るべき行動は発生します。例えば周囲にひどく気が動転しているメンバーがいた場合を考えてみてください。ただひたすらに緊張感を全面に出して行動していては、さらなるパニックを招きかねません。そんな状況を察知し「落ち着いて。自分の指示取りに行動すれば安心です」という一言があるだけで、周囲のメンバーからは、周りが良く見えている、信頼できる存在に映るのではないでしょうか。
ここまで、緊急時にリーダーシップをとる人間にとって、いかに全体を見渡すことが大切かということを述べてきましたが、大前提、自分1人でもマニュアル通りにすべての行動をとれることが必要です。ここの基本が出来てこそ、周囲のメンバーをうまく活かし、最善の選択をできるようになることは、言うまでもないでしょう。
これから研修を受ける方々へ
頭にインプットした通りに完璧に行動する。言葉にすることは簡単でありながら、なかなかできないことでもあります。今回の研修では、地震という緊急時を想定した訓練を行いましたが、さらに考える対象を広げれば、私たちが普段何かしらの形で「学んでいる」こと全てに対して、今回の研修は問題提起をしているのではないかと感じます。インプットしたことを、どんな状況下でもいかに正確かつ臨機応変に発揮できるか。こういった視点を持ち参加することで、研修の価値は何倍にも膨れ上がるのではないでしょうか。
研修で学んだこと
- 責任を持つとは、想定外の事にも対応できる状態でいること
- マニュアルを頭に浮かべながら動くのでは、実際の緊急時には対応しきれない
- 緊急時こそ、周囲に自分の取る行動を事前に共有することが大切(黙って一人で行動していては、十分な連携が取れない)
- 緊急時のリーダーの落ち着いた行動により、周囲のメンバーに安心感を与えることが出来る
佐藤幹太 早稲田大学大学生