記憶力がぐんぐん上がる!5分で分かる記憶の仕組み
2020.08.19
今月の研修:記憶のメカニズム
記憶力の良し悪しは生まれつきの才能で決まると思っていませんか?
もし、あなたが「自分は記憶力が悪い」と思っているなら、あなた自身の能力ではなく、記憶の仕方に問題があるのかもしれません。
記憶のメカニズムを正しく活用することによって「話が頭に残らない」、「以前より記憶力が落ちた」という方でも簡単に記憶力を鍛えることができます。実際、記憶の定着率が3~4倍上がったという研究結果も!
また、後半では記憶力強化に効果的な食べ物をご紹介。5分間で楽しく簡単に記憶力アップを目指しましょう!
記憶力が良い人、悪い人
最初に述べた通り、記憶力は先天的なものではありません。では、記憶力が良い人と悪い人を分けるのは何なのでしょうか。それは記憶の仕組みに則った覚え方をしているかどうかです。
そもそも記憶とは何かというところから探っていきましょう。記憶とは、一言でまとめると過去の経験です。また、過去の経験を覚えておき、後で思い出すことでもあります。そしてご存じの通り、記憶を保持・想起する引き出しの役割を果たすのが脳です。しかし、すべての記憶が脳内の一か所に集まっているわけではありません。記憶には数種類あり、それぞれ異なるプロセスで形成されるため、保管される場所も違うのです。
記憶には大きく分けて短期記憶と長期記憶の2種類があります。この長期記憶として保存できる人は、記憶力が良いというわけです。そして、短期記憶から長期記憶への移行を促す重要な役割を果たすのが、情動・感情に反応する「扁桃体」。つまり、感情が伴った記憶ほど忘れることがないということ。記憶力を高める秘密は感情のマネジメントだというわけです。
よく分かる記憶のメカニズム!
長期記憶には「エピソード記憶」、「意味記憶」、「手続き記憶」の3種類があります。
①エピソード記憶
個人が経験した事柄や、社会的な出来事に関する記憶。内容そのものだけでなく、経験の背景となる付随情報も含まれる。経験した内容を、物語のように言葉やイメージで表現できるのが特徴。
例:昨日の夕食をどこで、誰と、何を食べ、どう感じたか
②意味記憶
学習によって得た知識全般。内容そのものだけを記憶しているため、いつ、どんな状況で知った・覚えたかは消去されている。人に説明できる記憶。
例:人の名前、歴史の年号、挨拶
③手続き記憶
思考するまでもなく再現できる、体に染みついた記憶。繰り返し行うことで獲得できる技能や技術を指し、言葉による説明が困難。
例:自転車の乗り方、楽器の弾き方、箸の使い方
それぞれの記憶は密接に関係しているため、意味記憶がエピソード記憶になることもあれば、その逆もまたあり得ます。エピソード記憶の内容が手続き記憶になることも。これらの特徴を踏まえたうえで記憶すれば、長期的に記憶を定着させることが可能になります。手続き記憶は反復が必須なので、ここではエピソード記憶と意味記憶の観点から考えてみましょう。
意味記憶は子どもが得意とするものです。小さな頃はただひたすらに周りを観察して学習し、真似ることで生きるために必要な知識を覚えます。一方でエピソード記憶は発達が遅く、機能し始めるのは4歳頃からだそうです。ほとんどの人が乳幼児期の記憶を持っていない理由は、エピソード記憶の未発達によるものだといわれています。
また、成長していくにつれて経験も溜まっていくので、大人になるほど意味記憶よりもエピソード記憶の方が優位になると考えられます。「昔より暗記が苦手になった」、「記憶力がない」と感じるのは当然のことなのです。それは意味記憶の分野なのですから。したがって、エピソード記憶の活用こそが私たちに合った記憶する方法になります。知識として覚えたい内容も、その時の状況や感情などと合わせて記憶することで、効率よく記憶の定着が図れるのです。
参考:公益社団法人日本心理学会「子どものときのことを覚えていないのはなぜ?」
記憶のツボを刺激する食べ物3選
記憶のメカニズムが分かったところで、ここからは記憶力強化に効果のある食べ物をご紹介します。日常の中でも簡単に記憶力を鍛えたいとは思いませんか?
食事は生きていくうえで欠かせないものなので、毎日の生活で実践していくにはぴったりです。記憶中枢である脳に働きかける食べ物や栄養素について分かりやすく解説していくので、ぜひ今後の食生活に取り入れてみてください。
するめ
記憶力の鍛え方として「脳トレ」を思い浮かべる方も少なくないでしょう。脳トレというと一般的には手を動かしたり、パズルを解いたりすることを連想すると思いますが、実は普段の食事の中でも脳トレができるのです。それはゆっくりとよく噛むこと。よく噛んで食べるとその刺激が大脳に伝わり、記憶を司る海馬や、海馬に働きかける扁桃体を活性化させることができます。よく、ひと口につき30回噛むと良いといわれますが、消化の促進や満腹感を得ることだけが目的ではなかったことが最新の研究から明らかになりました。するめはよく噛む必要がありますし、噛めば噛むほど味が出るので、噛むトレーニングにぴったりの食品です。
しかし「噛むだけならガムでも良いのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか。確かにガムを噛むことで記憶力アップはできますが、ガムには多くの添加物が含まれており、健康被害を起こす恐れがあるといわれています。その点、するめならば無添加のものが多く販売されていますし、たんぱく質や亜鉛、ナイアシンなどの身体に嬉しい栄養素が豊富です。勉強や作業のお供として、間食にはするめを食べることをおすすめします。ただし、するめはナトリウムやリンの含有量がかなり多いので、塩分の摂りすぎに注意しつつ、カルシウムを多く含む乳製品や小魚なども意識して食事に取り入れると良いでしょう。
参考:Reduced Mastication Impairs Memory Function. Journal of Dental Research
参考:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
青魚
「魚を食べると頭が良くなる」という話を耳にしたことはありませんか?
それはEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)という2つの栄養素の効果によるものです。これらは体内での生成が難しく、食品から摂取する必要のある必須脂肪酸であり、医学的にも健康の維持・促進に効果があるとして注目を集めています。EPAは血液をサラサラにしたり、炎症を抑えたりする栄養素です。一方、DHAは脳や神経系の機能を維持したり、中性脂肪値を低下させたりする栄養素で、EPAから変換されることもあります。特にDHAは子どもの知能指数上昇やアルツハイマー病の予防など、記憶や学習に大きく関係していることが分かっています。
これら2つの栄養素を豊富に含むのは、サバやイワシなどの青魚です。とはいえ、試験前に食べれば良いというわけではありません。即効性はないので、長期的に食べ続けることが大切です。
参考:一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所「EPA・DHA」
卵
記憶が生まれるのはニューロン(神経細胞)同士が繋がった時。このニューロンの結合部分をシナプスと呼びます。短期記憶から長期記憶に移行するためには、シナプスの恒久的な増強が欠かせません。そしてシナプスを増強させる役割を持ち、記憶の形成や強化に関わるのが神経伝達物質アセチルコリンです。この物質の材料となるのがレシチン(フォスファチジルコリン)であり、卵黄に多く含まれています。
要するに、記憶を維持する原料となるのが卵黄だということです。レシチンは、認知症やアルツハイマー病の予防も期待されています。加えて卵は体内で生成できない必須アミノ酸をすべてバランスよく含んだ優秀な食材です。アミノ酸はたんぱく質の材料であり、私たちの身体を構成する重要な栄養素なので、健康的な生活を送るうえでも普段から積極的に卵を食べると良いでしょう。
参考:一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所「レシチン(フォスファチジルコリン)」
これから研修を受ける方々へ
これは研修レポートではないので、実際の研修で学んだ内容をすべて記しているわけではありません。むしろ、独自で得た知識と関連付けて紹介しているため、研修の内容はごく一部です。それでも要点は押さえているつもりですが、実用的な内容や応用編は実際に受けた方がよく理解できると思います。普段の生活や個人での学びでは得られない発見があるはずです。まずは一度参加してみることをおすすめします。
このブログやA&PROの研修が、あなたに新たな気づきと成長を促す一助となれますように。
研修で学んだこと
・感覚記憶→短期記憶→長期記憶の仕組み
・長期記憶の種類
・記憶と忘却
・記憶の固定化
・シナプスの可塑性
・睡眠と記憶の関係
・相手の記憶に残す方法
矢後慶樹 早稲田大学 商学部