連載ビジネス基礎研修 -実体験に結びつける-

【応用編】信頼口座・信頼残高の考え方

今月の研修:リーダーシップパワー理論

信頼口座・信頼残高について、皆さん知っていますか?
簡単に説明すると、信頼口座・信頼残高とは、相手からの信頼を自分の行動をもとに可視化する方法です。

信頼口座・信頼残高について初めて聞いたという人、どういうものかよくわからないという人には、ぜひまずは私の前回の記事を入門編として読んでいただきたいです。
前回の記事では、信頼口座・信頼残高の基本的な考え方と、それに基づいた部下から信頼される方法を紹介しています。(前回記事:部下から信頼されるリーダーになりたい)

今回の記事では、信頼口座・信頼残高の応用的な二つの考え方を紹介したいと思います。前回の記事を読んで、信頼口座・信頼残高の考え方を活用している方がいれば、ぜひ今回紹介する考え方も習得していただきたいです。

信頼は二度と戻ってこない

口座からお金を引き出して使ってしまい、口座の残高が少なくなりました。残高を増やしたいと思ったら、どうすればよいでしょうか?

皆さん、新たにお金を預け入れるという答えになりませんでしたか?
まさか、口座から引き出して使ってしまったそのお金を、使ってしまった先から何とか取り返して、口座に戻すという人はいないですよね。

しかし信頼となると、後者のように、なんとか失った信頼を取り戻そうとしてしまいませんか?信頼を損ねてしまった行動にばかり目が向き、なかったことにしようと相手に働きかけていませんか?

信頼口座から引き出してしまった信頼そのものは、お金と同じで頑張っても取り戻せません。この考え方が今回私が紹介したい信頼口座・信頼残高の考え方の一つ目です。

信頼を損ねる行動をしてしまったときは、もちろん反省するべきですし、謝罪もするべきです。しかしそれは、失った信頼を取り戻そうと行うのではなく、新たに信頼を預け入れる行動となるよう行いましょう。

例えば、会議に遅刻してしまったとき、あなたはどのように行動しますか?

この答えとして、遅刻した理由を必死に説明するという人もいるかと思います。これは遅刻を仕方のないことだと相手に認めさせることが目的である、つまり失った信頼そのものを取り戻そうとしている、誤った行動だと捉えることができます。
そうではなく、新たに信頼を積み立てる行動をすべきです。この場合は、自分の非を認めきちんと謝罪をすること、会議の中で自分に与えられる時間を短くできるよう動くこと、遅刻した原因を分析し今後の対策を示すことなどが、挙げられるでしょう。

一度行った行動は、なかったことにはできません。失敗してしまったときは、ついつい焦って行動してしまい、さらに信頼を失う行動をしてしまうこともあるでしょう。マイナスの行動をしてしまったときほど、まずは落ち着いて、次に相手にどうプラスの行動ができるか考えましょう。

信頼口座は相手も開設している

信頼残高を確認する、つまり相手に今までしてきた行動を振り返れば、相手からどれくらい信頼されているかどうかを相手に聞かずともわかる、というのが信頼口座・信頼残高の基本的な考え方でした。

今回私が紹介したい考え方の二つ目は、相手も自分と同じように、信頼口座を開設しているから、相手が信頼に足る人物であるか判断するには、その信頼残高を確認するとよいというものです。

つまりは、相手が信頼に足る人物であるか判断するために、これまでの行動を振り返るとよいということであり、これは一見当たり前のように感じる方もいるかもしれません。しかし、ここで私が強調しておきたいのは、好き嫌いと信頼できるか否かは異なるという点です。偏見や思い込みを排除し、信頼に足る人物かを判断するのに、この信頼口座・信頼残高の考え方が活用できます。

まず、好き嫌いと信頼できるか否かは異なるということについて、例を示します。
例えば、きつい物言いをするから苦手だと思っている人が、実はその人の行動を振り返ると、言い方はきついが正しいことを言っていたり、約束はきちんと守っていたり、信頼に足る人物であるということはありませんか?
逆に、いつも褒めてくれて嬉しい気分にさせてくれる人が、実は時間にルーズだったり、口が軽かったりなど、約束を破ることが多く、その人には信頼を置くことはできないということもあるでしょう。
このように、苦手だが実は信頼できる人、好きだが実は信頼できない人が存在します。好き嫌いで信頼できるか否かをを判断することは危険だと思いませんか?そうならないように、この信頼口座・信頼残高の考え方が活かせるのです。

次に、この信頼口座・信頼残高の考え方はどのようなときに活用できるかについて、私が実践していることを具体例として示したいと思います。
私は今、新しくプロジェクトを立ち上げようとしています。その手始めとして、プロジェクトの立ち上げメンバー集めに取り掛かっています。自分の好き嫌いでメンバーを構成したくなく、実力のある人、志が高い人に参加してもらいたいと考えていましたが、そもそも信頼できるメンバーを揃えたいという前提があります。信頼できるか否かについて、反応的にならずに考えるために、相手が自分との間に開設した信頼口座の残高を確認、つまり今まで相手がどのような行動をしてきたかを思い出すことで、声をかける相手を選びました。信頼口座・信頼残高の考え方を活用したことで、信頼できるプロジェクトメンバーを揃えることができそうです。

これから研修を受ける方々へ

今回の研修で、信頼口座・信頼残高について学び、信頼を可視化するこの概念に私は強く興味を持ち、今回の記事で紹介した応用的な活用法まで考えるに至りました。皆さんにも、研修で学んで終わりではなく、自分でさらに発展させて考えてもらいたいです。ぜひ価値を受け取る側でなく、価値を提供できる側へとなってください。

研修で学んだこと

  • どんな人に従うか:懲罰・報酬を与える人、人脈がある人、社会的地位がある人、情報を与えてくれる人、人間的魅力がある人、専門性の力を持つ人
  • 自分の欲求の傾向を他者とのコミュニケーションで用いることが多い
  • 相手の欲求を理解し合わせるべき
  • 相手の欲求を知るために今後の期待を話す、過去の話を聞くことができる 
  • 信頼残高:自分がどれだけ信頼されているか相手に聞かずとも自分の行動でわかる
  • 預け入れ=信頼される行動、引き出し=信頼を損ねる行動
  • 積極的に約束をして守ることで、信頼を積み重ねることができる
  • うまくいかないことを相談することも信頼を積み立てられる

この記事の著者/編集者

上野 美叡 日本歯科大学・生命歯学部  

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