豊かな想像力で、仕事時間を有意義に

6月の研修:記憶のメカニズム

あなたは記憶力が良い方ですか?

私はこのように問われた際に解答に困ってしまいます。なぜか長期記憶している思い出はある一方で、学習塾などでは自分が忘れてしまう内容をずっと記憶している学生がいたからです。皆さんにも良く覚えている経験や中々思い出せずに苦悩した経験があるのではないでしょうか。

この違いはどうして生まれてしまうのでしょうか。

本記事は長期記憶できている経験の特徴を振り返り、この違いを明らかにします。そして、思い出せない状態から忘れない状態にするためのポイントをお伝えします。後半ではメカニズムを仕事で有効活用する方法を考えます。今回は一見、つまらないと思える仕事をこなす時間を有意義に過ごすためのポイントを考えてみました。

長期記憶している思い出を振り返る

記憶に残る経験とそうでない経験。記憶に残る実体験を振り返りながら、記憶のメカニズムを学んでみましょう。是非読みながら、なぜ長期記憶している経験なのかを考えてみて下さい。

記憶に残る国語の授業

高校で国語の講師が解説してくれたジブリ映画の謎に関する授業です。授業ではジブリ映画を視聴した後、時間軸や登場人物の発言から物語の謎や矛盾点を見つけ、その意義について考えます。当時の私は誰よりも早く謎を見つけたいと思い、前のめりになって映画を視聴していました。映画は当然のごとく複数回視聴しましたし、先生の些細な言葉がヒントではないかと疑い、一言一句聞き取りました。見つけた謎や矛盾点に正解はないので、自由な発想で考察することにも楽しさを感じていました。また、不定期で授業中指名されることもあったので一定の緊張感もありました

実体験を振り返った時に長期記憶に残っている経験には特徴があると思います。それは情動的な出来事であることです。経験の中で楽しさ・悔しさ、緊張感など様々な感情を持っています。また、自分自身が主体的に取り組んだ経験であることも特徴でした。

長期記憶のメカニズムを知り、記憶力をコントロールする。

長期記憶のメカニズム

先程、長期記憶できた経験の共通点を考えました。本章では記憶のメカニズムについて学びます。聞き慣れない単語があるため、集中力が途切れてしまうかもしれません。是非、記憶のメカニズムを学び、どのように活かしたいかを考えながら読んでみて下さい。(これも長期記憶するためのヒントです!)

私たちは生活の中で得た多くの情報は、大脳皮質などを通じて処理されます。そして、海馬と扁桃体によって情報の整理がされます。それぞれの機能を紹介しましょう。

【海馬】
大脳皮質に入った情報を必要か不必要か判断し、必要と判断された情報のみを保存する

【扁桃体】
情動的な出来事に関連付けられる記憶の形成と貯蔵を促進する
*情動的とは先ほど説明したような、楽しい・悔しいなどの様々な感情で、特に一時的で急速な感情を示します。

私達が長期記憶をする上でのポイントは2点だと考えられます。先程の国語の授業の話を私の視点で振り返ってみると以下のようになると思います。

  • その情報が必要であること
    →ジブリの謎や矛盾点は考えたこともなく、周囲の人も知らないため価値の高い情報だった
  • 情動的な出来事であるか
    →自由な発想で議論できる楽しさや指名される緊張感があった

メカニズムを使う側へ ”記憶力のコントロール”

大事な情報を思い出せない…

あのとき、〇〇先生がなんて言っていたか思い出せない、、

そんな状況は誰しもが体験したことがあるのではないでしょうか。もしその情報が本当に大切であるならば「思い出せないこと」は非常に残念だと思います。「思い出せないこと」によって様々なチャンスを逃すのはもったいないですよね。

本章ではメカニズムを有効活用して、思い出せない状態⇒忘れない状態にするためのポイントをお伝えします。

賢い読者の方はメカニズムの活用法に気づいているかもしれません。もしまだ気づいていない方は海馬と扁桃体の特徴を振り返ってみて下さい。

同じ情報でも、〇〇によって記憶に残る時間が変わる

長期記憶する出来事の特徴はその情報が必要であること、情動的な出来事であるかでした。私はこの考えを聞いた時に、海馬と扁桃体の特徴を活かせれば、長期記憶するべき情報をコントロールできるのではないかと考えました。具体例を使って解説しましょう。

先程の国語の授業を振り返ります。

ジブリ好きな先生が、物語の謎や矛盾点を詳細に解説してくれています。先生と生徒はお互いにアイディアを出して、謎を解明するので、授業は大盛りあがりです。

ジブリに興味のないA君は授業中が非常に退屈に感じており、授業に耳を傾けません。一方、B君は毎回のジブリの授業を非常に楽しみにしています。前回の予習をして、どんな話が聞けるか楽しみながら聞いています。

2人の授業態度によって、2人が持つ歴史への知識量、理解力は大差がついているでしょう。

この差をつけたのは2人の能力ではなく、授業に取り組む姿勢でした。同じ情報でも、情報の受け取り方によって記憶に残る時間は変わります。

記憶力は才能ではなく、コントロールできる力

主体的に取り組む姿勢や楽しむ姿勢、時には覚えないとどんなリスクがあるかを想像しながら危機感を持って取り組む姿勢などを持つこと、「取り組む姿勢や感情をコントールすること」で「忘れない仕組み」を創ることが出来ます。一見、つまらない講義でも、前向きに考え、何か役立つことがあるのではないか、という姿勢で取り組んでみてはいかがでしょうか。そこで得た情報がいつかあなたにとって役立つかもしれません。

”想像力を豊か”に、仕事時間を有意義に過ごす

皆さんは仕事でミスが続いた経験はあるでしょうか?特にいつも当たり前にできている仕事でミスをした経験はありますか?

実は先日、私にはいつも当たり前にできていることに対して何度も似たようなミスを繰りかえす期間がありました。その期間は睡眠不足や疲れも溜まっていて、当時はそれが原因だと考えていました。しかし、本当に疲れだけが原因でしょうか??

結論、その仕事の目的を考えず、頭を使わず機械的に取り組んでいたことが原因でした。そして、この機に私は普段の仕事に対する自身の取り組み方を見直すことにしました。

一見、つまらない仕事の意義を考える

決まった手順のある型にはまった仕事にどんな意義があるかを考えてみました。例えば、勤怠報告を考えてみましょう。

労働者は勤怠管理システムに出勤時間や退勤時間を入力します。報告者にとっては入力して終わりの仕事かもしれません。しかし、勤怠報告を受けて企業は業務時間が正常であるか、割増賃金が必要であるか、を精査する必要があります。勤怠管理は労働基準法で定められた企業の義務であり、仕事環境の整備や経営改善にも繋がります。つまり、報告者にとっては入力して終わりの、「一見、つまらない仕事」が企業にとっては「非常に重要な仕事」です。

一見、何も価値が無いように思える勤怠報告ですが、これを完遂しなければ本人は当然ですが多くの人が迷惑を被ることになります。組織の中で日々行うルーティンワークも、豊かに想像力を働かせることで大きな意義を持っていることに気付くでしょう

想像力を豊かに仕事時間を有意義にする

現在、私が所属するエンカレッジ早稲田支部の活動にも決まった手順のある型にはまった仕事があります。例えば、ユーザーである24卒と面談した後にアンケートを送信して解答してもらうことです。一見、作業のような仕事に見えるかもしれませんが、ユーザーからのFBは非常に励みになるため、私にとっては楽しみな仕事の1つです。また、この仕事はサービスの質を向上させるために非常に重要です。私達が行う1つ1つの仕事には意義があります。記憶のメカニズムで取り組む姿勢の重要性を述べました。つまらない仕事を創っているのは何者でもなく自分の取り組む姿勢です。仕事の意義や自身が楽しめるポイントを想像力豊かに5分で良いので、1度考えてみてはいかがでしょうか。つまらなかった仕事時間が有意義な時間に変わるかもしれません。

これから研修を受ける方々へ

本記事は研修で学んだ内容を全て記しているわけではありません。もし本記事で興味も持たれた方は実際に研修を受けることを薦めます。より具体的な実践方法を学べると思いますし、本記事では触れていない、忘れない記憶にするための復習のメカニズムなども研修で学ぶことが出来ます。記憶のメカニズムを有効活用して、皆さんの人生がより豊かになることを祈っております。

研修で学んだこと

・海馬→必要と判断された情報のみを保存する
・扁桃体→情動的な出来事に関連付けられる記憶の形成と貯蔵を促進する
・記憶力は才能ではない
・主体的に取り組む姿勢を持ち、記憶力をコントロールする
・記憶と忘却
・睡眠と記憶の関係

この記事の著者/編集者

須賀渉大   

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。大学3年時までは海外インターンシップ事業の運営、国内外ボランティア、教育系の長期インターンなど様々な活動に尽力。大学4年時には日本最大のキャリア支援団体の早稲田支部長として100人を超える仲間と、事業・組織共に持続的な成長を遂げる団体の基盤創りに挑戦。ボランティアで深刻な社会課題を目の当たりにした経験から「日本を課題解決先進国にしたい」と考えている。社会人では金融とデジタルの分野で専門性を磨き、将来は社会的価値と企業的価値を両立した事業、組織創りに携わり、社会問題の解決及び日本の変革への貢献を志す。

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