メンバーの成熟段階を想定して適切な影響を与えられるようになる

今月の研修:リーダーシップパワー理論

あなたは普段どのような点に注意してメンバーや後輩に影響を与えたり説得を行ったりしていますか?

感情と論理の両立が重要だと思いながらもどちらか一方に偏ってしまっている、ということもあるのではないでしょうか。組織内には様々なタイプのメンバーが存在し、彼らを導く方法についてもいくつかの視点に細分化して考えることができます。

今回は、メンバーに合わせた影響力の与え方・導き方をリーダーが身につける重要性についてお伝えします。

人や段階に応じた影響力の種類

今回の研修では「リーダーシップパワー理論」について学びました。人が他人から影響を受ける際には段階に応じたいくつかの影響力の種類があり、具体的には以下のような内容になります。

  • 専門性の力:リーダーとしての判断力・決断力が高い人
  • 人間的魅力:コミュニケーション能力が高く、相手の心理に共感を示す人
  • 情報力:情報を提供できる、いわゆる物知りの人
  • 社会的地位:社会的地位の高い「偉い」人
  • 人脈力:偉い人との人脈がある人
  • 報酬を与える力:報酬を与えることのできる人
  • 懲罰を与える力:従わなければ懲罰を与える人

メンバーによりどれが効果的であるかは異なりますし、一つだけを満たせば相手に影響力を与えられるとも限りません。例えば、金銭的報酬を得られるかどうかに影響されやすいメンバーに対して「このプロジェクトは有名な○○さんと行えるからやってみないか」と人脈の要素で訴えても効果的ではないかもしれません。また、同じ人であっても所属する組織ごとやその組織での立場などによっても影響されやすい欲求が異なることもあるため見極めが重要です。

同様に重要なのが、自分が相手に影響を与えようとする際は、自分が影響されやすい欲求を使って行動する傾向にあるということです。例えば、あなたが人間的魅力という要素に影響されやすいとすると、自身が周囲のメンバーを説得する際にも、そのメンバーの重視する欲求に関わらず無意識的に人間的魅力に寄った説得になりやすいということです。

しかし、冒頭でもお伝えしたように組織は様々なメンバーを抱えており、同じ欲求に影響されやすい人だけでは成り立っていません。よって、リーダーは自分がどのような要素に影響されやすいのかを把握した上で、どの欲求を通してでもメンバーを動機づけできるよう全体的に対応できることが望ましいです。

組織内での欲求の変化

例えば私が大学で所属していた英語サークルについて例にとります。

私達は4月になると1、2年生の新メンバーの入会を募集します。この際は、入会すると学科について知っている先輩を紹介してもらうことができる(人脈)ことや、同学年の友人ができる(報酬)ことなどを新入生が求めていると想定してアピールを行います。

そのメンバーが実際に入会して数ヶ月が経ち、活動にも慣れてきたとします。最初は学科の先輩がいるという理由から入会したものの、サークルの活動領域である英語でのディスカッションをより有意義に行いたいという欲求を持つようになりました。そうした場合には、上級生はメンバーがまだ参加していないものの興味を持つだろう活動を紹介する(情報力)ことや、ディスカッションの司会進行を任せたりアドバイスを与えたりする(専門性の力)ことで更にサークル活動を充実してもらうことができるでしょう。このように、同じメンバーでも欲求の成熟度合いで段階的に効果的な取り組みは変化します。

自分が影響を受けやすい欲求を用いた行動

自分の影響されやすい欲求に応じて行動することが多いという自覚もあります。私の場合であれば、合理や理屈といった専門性の部分に比較的影響されやすいと考えています。私はサークルにて代表を務めていたのですが、そうした際に活動における自分を振り返ると、イベントや新入生の勧誘などの計画について、必要な取り組みを列挙して理由などを併せて合理的にメンバーに説明することで納得してもらえるよう心掛けていました。

このようにサークルとして行うこと自体が決定しているイベントや新入生向けの活動などにおいては、必要性を合理的に、専門性の力の部分を用いて説明する傾向があり、この場合はそれがちょうど効果的なアプローチでした。しかし、場合によってはそれ以外の要素を用いることができればより活動を充実させることができたのではないかと思います。

リーダーはどの欲求でも影響力を与えられるように

例えば、活動に慣れた2年生にサークルの活動を任せていく際、メンバーによっては既存の活動に少しの物足りなさを感じ、新たな活動をしたいと考えているかもしれません。そうした際には、自分が知っている他の大学の英語サークルはディスカッションだけでなくスピーチの活動を行っているなどと候補を挙げたり(情報力)、他大学の友人を直接紹介したりする(人脈力)ことが、今後2年生が主体的に活動領域を広げることを促すのに効果的だと想定できます。

今後の活動においては、同じことを提案するにも各メンバーが組織においてどのような段階にあってどのようなアプローチが効果的かも考えて行動していきます。

これから研修を受ける方々へ

今回の研修では、実際の活動において自分が適切に影響力を与えることができていたか、相手が求めているものはどの欲求なのかについて分析し、信頼残高についてもグループで深めました。他のプロジェクトに取り組むメンバーの状況を聞くことで、学んだことの理解が深まるだけでなく、このようにすると良いのでは、などとお互いにアドバイスすることもできます。メンバー同士でお互い深め合いたい方はA&PROの研修を体験してみてください。

研修で学んだこと

  • 影響力には成熟度に応じた種類がある
  • 人は、自分が影響されやすい欲求をもとに行動してしまう傾向にある
  • 信頼残高

この記事の著者/編集者

田村稔行 早稲田大学 基幹理工学部 情報通信学科  

高校時代から英語の部活、サークルでの活動を続けており、大学では理工学部生向け英語サークルの代表を務めました。
更に、大学1、2年生がキャリアついて考える機会を提供すべく、大学生向け就活支援の学生団体「エンカレッジ」で活動。記事執筆やSNSの運用を行っています。

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