指示を出す側としての準備、できていますか?

今月の研修:災害時・緊急時の対応

突然ですが、皆さんに質問です。

今、あなたはあるプロジェクトのリーダーを任されているとします。プロジェクトの会議中、突然大きな地震が起きました。

あなたはリーダーとして、この状況にしっかりと対応できる自信がありますか?

はいと答えられる方は、そう多くはいないかもしれません。

特に大学生の方々の多くは、今までの学生生活で避難指示を受ける側の経験はしてきたものの、指示を出す側としての経験はないのではないでしょうか。

研修中、指示を出す側として実際に避難訓練を行いました。恥ずかしながら、私はどのように自分が動き、かつメンバーを動かせば良いか分からず至らない点が大変多くありました。

そこで今回は、特に私が研修で新たな気づきを得た「災害時におけるコミュニケーションの使い分け」について紹介していきます。

地震対策5行動

まず、地震が起きた時にとるべき行動を5つに分けてご紹介します。

  • 安全確保、出口確保
    • 「全員机の下に隠れろ!」など周囲に指示を出し、可能であれば出口を開けて逃げ道を確保。
  • 安全確認
    • 周囲にケガ人がいないかを確認。大きな声で行うことで、安心させることができる。
  • 情報収拾・避難準備
    • 周囲の火災発生・建物倒壊の確認を行い、避難に備える。
  • 一次避難
    • 近隣火災や建物倒壊の可能性がある時、危険性が少ない避難場所へと避難する。
  • 二次避難
    • 一次避難場所でも危険な可能性がある場合、二次避難を行う。

ここからは、災害時に働く脳のメカニズムと場面ごとにとるべきコミュニケーションを説明します。

災害時に働く脳のメカニズム

人間は、予期しない事態に直面した時「あり得ない」という先入観やバイアスが働き、物事を正常の範囲だと自動的に認識してしまいます。これは「正常性バイアス(normalcy bias)」と呼ばれる脳のメカニズムです。

何かあるたびに反応していると精神的に疲れてしまうため、ストレスを回避すべく自然と脳が働き、心の平安を守るのです。

しかし、一刻も早くその場を立ち去らなければならない緊急時においても、正常性バイアスによってその認識が妨げられてしまうことがあります。そうすると、「どうせ大したことない、大丈夫だろう」と楽観的に考えてしまい、逃げ遅れて命の危機に晒されてしまいます。

東日本大震災においても、「津波が来るぞ!」という警告に対して、多くの住民が聞く耳を持たなかったという体験が報告されています。これはまさに、正常性バイアスが原因で状況を甘く見てしまった結果だと考えられます。

コミュニケーションの使い分け

上記のことから、地震発生時、あなたが穏やかな声で「机の下に隠れましょう」「逃げましょう」と指示をしても、正常性バイアスが働きすぐには従わない人がいると考えられるでしょう。

そのため、緊急時においては、「机の下に今すぐ隠れろ!」というように、まずは大きな声を出して命令口調で指示をすることが大切です。普段は人を驚かせてしまったり傷つけてしまったりする可能性があるため、強いコミュニケーションをする機会はあまりないかもしれません。しかし災害時は、強いコミュニケーションこそが人を守ってくれるのです。

一方、全員が事の深刻さを捉えた後は、大きな声で落ち着いて指示出しをすることが大切です。大きな声を出す事で、メンバーたちは安心し気丈に振る舞うことができるからです。

つまり、地震が発生した直後(5行動の①)においては強いコミュニケーション、地震がおさまった後(5行動の②から⑤)においては大きな声で落ち着いたコミュニケーションが有効だということです。

ここからは、東日本大震災時の私の体験談を具体例として挙げていきます。

東日本大震災時の経験

私は小学校5年生の時にこの大地震を経験しました。当時私のクラスは図工の授業中でした。机がカタカタと揺れ始め、初めは「またいつもの地震だね」と特に誰も気にしていませんでした。ところが途中からだんだん揺れが強くなってきました。私含めみんな「なんか地震強くない?」「机の下に隠れた方がいいかな?」と言いつつ、自ら机の下に隠れた児童はいませんでした。正常性バイアスが働き、地震なんて何回も経験しているし今回も大丈夫だろう、という思いがどこかであったのだと考えられます。

その時先生が「全員今すぐ机の下に隠れて!!!危ないから早くしなさい!!」と大声で叫びました。普段穏やかな女性の先生が、真剣な表情で大声を出して指示をしたことに驚き、全員が反射的に身を守りました。

机の下に隠れていると、自分達が制作していた作品や使用していた彫刻刀が容赦なく落ちてきました。想像をはるかに超える状況に全員が恐怖に怯える中、地震がおさまった後も先生は落ち着いた口調ながら大きな声で的確に避難指示を出してくれました。私立の小学校に通っていたため、1時間以上かけて登校している児童が多く、私もその1人でした。家族と連絡が取れなかったり、交通手段が遮断されてしまい家に帰れなかったりという状況でしたが、頼もしい先生の姿に児童たちも落ち着きを取り戻して指示に従いました。

地震発生直後、先生が強く命令する形で指示を出してくれていなかったら、間違いなく怪我人が出ていたと思います。また、先生が不安そうにしていたら、私たち児童にもその不安が伝播して迅速で冷静な避難ができていなかったかもしれません。

このように、指示をする側は状況に応じてコミュニケーションの取り方を変えることが重要です。

起きるか分からないからこそ準備せよ

災害はいつ起こるか分かりません。しかし、「今回の対応は上手くできなかったけれど次回に活かせばいいや」では決して済まされないのが災害です。上記のようなコミュニケーションを取れるようにするためには、まず地震対策5行動のような対応方法が自分の頭の中にしっかり入っていて、動くイメージができていることが前提となります。

自分やメンバーたちの身の安全を守るために、常に「準備ができている」リーダーになりましょう。 

これから研修を受ける方々へ

この記事を読んで、自分にはリーダーとしての準備がまだ足りていないなと感じた方は是非研修を受けていただきたいです。リーダーシップ研修と聞いて、災害時の対応を思い浮かべる方は多くないと思います。しかし今回研修を受けてみて、リーダーは災害時においてもメンバーたちの安全を守る責任があるのだということをとても強く感じました。そして、リーダーという立場を何度も経験していたにも関わらず、危機管理ができていなかったことが恐ろしくなりました。研修を終えた今では、実践的な避難訓練によっていざという時の動き方が明確にイメージできるようになりました。

メンバーに指示をする側としての避難訓練を、この研修で是非皆さんにも経験していただきたいです。

研修で学んだこと

  • 普段起こらないことだからこそ、準備が大切
  • 災害・事故は遭遇率と重要性に応じて「瞬時に動くこと」と「マニュアルを見て動くこと」に切り分け、優先順位をつけてトレーニングをすることが重要
  • 責任を持つこととは、起こりうることを想定し、想定外にも対応できる状態でいること
  • パニックになった時こそ、ステップを踏んで対応する
  • 災害発生時は「強いコミュニケーション」と「落ち着き安心を与えるコミュニケーション」を使い分ける

この記事の著者/編集者

星野歩華 早稲田大学 文化構想学部  

早稲田大学文化構想学部複合文化論系所属。
大学1年次から3年次まで、下駄を履いて踊るという唯一無二のパフォーマンスをするダンスサークルの活動に熱中。広報部長を務め、コロナ禍だからこそできる新たなパフォーマンスを企画・発信した。
現在はキャリア支援団体にて1学年下の就活生の支援をしつつ、一緒に活動するメンターたちが一人前になれるようサポートを行っていくエントランス・育成に携わるセクションのリーダーを務めている。

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まさに想像を超えてくる研修だと思います。 日常では気づけないことにたくさん気づくことができます。当たり前のように使っているコミュニケーションの奥深さに気づくこともできます。 これまで数多くの会社のインターンに行きましたが、ここまで自分と向き合い、実際のビジネスにおける視座でコミュニケーションを取れる機会はありませんでした。間違いなく貴重な経験となるので、自身の弱みは隠さず、全てを吸収するという覚悟を持って臨むことをお勧めします!

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地震が起きた際、コミュニケーションを使い分ける必要性があります。最初は強いコミュニケーションで身の安全を守ることを命令し、その後は大きな声で落ち着いて指示を出すとよいでしょう。いつ起こるかわからないからこそ、準備ができているリーダーになりましょう。

誰しもが受けたことがあるはずの避難訓練。しかし、それも生活様式の変化によって変わってきているはずです。今回の記事では、テレワーク下における避難訓練についてお話します。

早稲田大学の星野歩華と申します。大学生活ではダンスサークルの活動に注力しており、広報部長を務めていました。最後の1年はコロナの影響で普段の活動ができませんでしたが、逆境を成長のチャンスと捉え「今しかできないこと」に取り組み乗り越えました。