サービス向上に繋がるヒアリング方法とは

サービス開発において重要なことは何でしょうか?それは顧客のニーズを正確にとること、だと思います。そこで顧客のニーズをとる方法として有力なのはヒアリングです。しかし、一見顧客のニーズを正確に取り切れるように感じるヒアリングも、やり方を失敗すれば間違った方向にサービスを進めていくリスクがあることはご存じでしょうか?今回の記事ではリスクの具体的な説明や回避するための方法をご紹介していきます。

今月の研修:プロジェクトマネジメント(基礎2)

サービス開発と潜在ニーズの関連性

顧客へのヒアリングというのは2種類あります。一つ目は顕在ニーズを聞き取るヒアリング。二つ目は潜在ニーズの仮説検証をするヒアリングです。

そもそもなぜ潜在ニーズを知る必要があるのか

顕在ニーズとはいわば氷山の一角です。根本的な原因やボトルネックは目に見えない深層にあります。つまり目に見える課題を解決しようとしてもその原因を対処できているとは限りません。顧客が求めていることではなく、気づいていない潜在的な課題にアプローチすることで顧客の体験価値は向上するでしょう。

見えている部分が全てとは限りません。解決しなきゃいけないのはその奥にあります。

皆さんが普段使っているもので潜在ニーズと結びつくことで躍進したプロダクトがあります。それは『自動車』です。有名な自動車メーカーであるフォード・モーターの創設者であるヘンリー・フォードの言葉に以下のようなものがあります。

「何が欲しいかと尋ねれば、人は皆『もっと速い馬』がほしいと答えるだろう」

当時の主な移動手段は車ではなく、馬でした。そうなるとより良い移動手段を求めた場合、より速い馬が欲しいというのは必然です。しかし、フォード氏は顧客が本当に求めていること(潜在ニーズ)は『より速く目的地に着くこと』と捉え、当時それほどメジャーではなかった自動車の製造に注力しました。

フォードの逸話から分かる重要なこと

このエピソードからは顧客の心理とサービス開発の関連性が見えてくるのではないでしょうか。顧客は課題に対して自分の知っている範疇でしかアプローチできないのです。顧客に提供するべきサービスとは、顧客の範疇で行うものではなく、顧客の一歩先、二歩先の提案をすることです。顧客の求めるさらに上の価値を提供することで顧客の満足を超えた感動につながるでしょう。

潜在ニーズを知るためのヒアリング方法

次の章では実際に潜在ニーズを知るための方法をご紹介致します。初めに申し上げると顧客なしにはサービスは成り立たないので、顧客に対するアプローチを前提としています。

ヒアリングの前のチェックポイント

今回ご紹介するヒアリング方法に欠かせない要素としては、顧客の理想状態です。つまり顧客に自分たちのサービスを通してどうなって欲しいのか、を言語化する必要があります。皆さんが作ろうとしているサービスは本当に顧客のためになっていますか?この理想状態で悩むようでしたら顧客の潜在ニーズには寄り添えてないかも知れません。

また、理想状態を考えるためには結局現状をどれだけ把握しているかが関わってくるでしょう。思考のプロセスを紹介は以下の通りです。

  1. 顧客へのヒアリングを通して現状を把握する(現状分析)
  2. 得た情報(顕在ニーズ)を元にそれがなぜ問題なのか、その先にある顧客の想いや理想を想像する。
  3. 考えた仮説に対して先ほど紹介したヒアリング方法を用いて潜在ニーズを検証する

枕詞でニーズを深掘る

さて、表にでてこない潜在ニーズをヒアリングで聞き取るにはどうすれば良いでしょうか?それは枕詞で相手と理想状態を共有することです。実際に私が行っている就活生との面談の場面をご紹介致します。私はメンターという立場で就活生と面談をしています。

就活生に対してより良いメンターになりたい、という目的の元、就活生に対してニーズの聞き取りをしている場面を想像して下さい。この時率直に「どんなメンターが良い?」と聞けば多くの人が「優しい人、寄り添ってくれる人、助けてくれる人」という言葉を口にしました。これはもちろん就活生のニーズに違いはありませんが、この言葉を鵜呑みにして優しく接することは本当に彼らのためになるのでしょうか?

次に枕詞を用いて理想状態を共有してみましょう。今回における理想状態というのは、就活生が入社後後悔しない就活、自信をもって決めたと思える企業選びが出来ているという状態です。
これを質問に置き換えてみると、「○○が入社後に後悔しない就活にするためにメンターにどうしてほしい?」という質問になります。こう聞くと多くの就活生の答えは「ちゃんと向き合ってくれる人、気づきや学びをくれる人」という具合になりました。

就活生の回答から分かるように、自分たちの提供したいサービスに沿った質問をすることで、本当に顧客の潜在ニーズにマッチしているか計ることが出来ます。顧客へのヒアリングは聞くだけで終わらず自分なりに仮説を持つことが重要です。

質問回答ニーズ
メンターにどうなって欲しい?優しい人、寄り添ってくれる人、助けてくれる人顕在ニーズ
入社後に後悔しない就活にするためにメンターにどうしてほしい?ちゃんと向き合ってくれる人、気づきや学びをくれる人潜在ニーズ

最後に

今まで顧客に対して十分なヒアリングは出来ていたでしょうか?本文中でも書きましたがサービスには必ず顧客の存在が必要です。裏を返せば顧客のニーズを図り違えばサービスの失敗につながります。自分たちのヒアリング内容は本当に聞きたい情報が取れるのかどうか、一度見直すきっかけになれればと思います。

これから研修を受ける人へ

今回の研修はプロジェクトの進歩が芳しくない人に参加してもらいたい内容です。一生懸命やってるのに上手くいかない、しっかり計画立てて進めているはずなのに成果がでない、といった悩みを解決できる内容です。顧客が求めているモノは何か、自分たちのサービスの正当性を振り返るきっかけになるかと思います。

研修で学んだこと

  • ヒアリングはただ聞くだけでは意味がない
  • 顕在ニーズと潜在ニーズ
  • 各ステークホルダーのニーズと施策
  • マトリクスで施策のカニバリをなくす

この記事の著者/編集者

信宗碧 早稲田大学 文学部 美術史コース  リーダーズカレッジ リーダー 

就職活動を通して就職後のキャリアを楽しみにしている学生が少ないことに課題感を覚え、大学生に向けたキャリア支援を行うNPO法人『エンカレッジ』に加入。
納得したキャリア選択のためには視野を広げることや自分の中のバイアスに向き合うことが重要だと考え、学生に考えるきっかけを提供できる企業案件の担当するセクションのリーダーを務める。

現在10人規模のメンバーのマネジメントと支部のブランドイメージ構築に向け、活動しています。

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