絵本『ぐりとぐら』で考えるプロジェクトマネジメント

今月の研修:プロジェクトマネジメント(基礎1)

ぼくらの なまえは ぐりとぐら
このよで いちばん すきなのは
おりょうりすること たべること
ぐり ぐら ぐり ぐら

ぐりとぐら/中川李枝子・大村百合子/福音館書店/1963.12.1

50年以上にわたって愛される名作絵本の『ぐりとぐら』。幼い頃に読み聞かせをしてもらったり、自分で口ずさんでみたり。ほとんどの方はこのフレーズに覚えがあるのではないでしょうか。

老若男女問わず知る人はいないほど有名な絵本ですが、『ぐりとぐら』はプロジェクトマネジメントを理解するうえで役立つ教本でもあります。今回は「大人」の視点から『ぐりとぐら』を読み解いていきましょう。

ぐりとぐらの一大プロジェクトとは

ぐりとぐら
引用:福音館書店

この絵本は、ぐりとぐらの2匹が大きな卵を見つけるところから話が動き出します。これがプロジェクトの始まりです。

そもそもプロジェクトとは何なのか、一度おさらいしておきましょう。米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)によると「プロジェクトとは独自の製品、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務である」と定義されています。つまり、今までに無かったものを新しく生み出すために一定の期間内で行われる仕事のことです。

ぐりとぐらは誰も見たことがないような大きな卵を見つけました。それを使って今までに作られたことがない新しい料理を作ります。もちろん、卵は生ものですから新鮮なうちに使わなければいけません。

どうです?「創造性・独自性・有期性」という3つの要素がしっかり含まれているでしょう。大きな卵を料理することは立派なプロジェクトなのです。

プロジェクトの進め方

プロジェクトを上手く進めていくためには、上の図にある5つのプロセスに沿った進行が大切です。各プロセスをもっと分かりやすく言い換えたものが以下になります。

①企画する
②段取りを組む
③実際にやってみる
④計画と実際の差を把握する
⑤より良くするために反省する

先ほどよりも具体的にイメージできたのではないでしょうか。それではこれらのプロセスを『ぐりとぐら』と照らし合わせて考えてみましょう。

①目的・目標の設定

「大きな卵を料理する」というプロジェクトの目的・目標は何でしょうか。

いろいろ考えられますが、一つは「楽しむため」というのが挙げられるでしょう。ぐりとぐらは料理をするのが好きです。料理をすること自体に楽しさを感じており、今まで調理したことがない大きな卵を使うことにわくわくしていたのだと思います。

②計画の立案

目的・目標をはっきりと持つ2匹は、大きな卵で何を作るかを計画しました。

お月様くらい大きな目玉焼き。
ベッドより厚くてふわふわの卵焼き。

どれも魅力的な案でしたが、ぐりとぐらは朝から晩まで食べてもまだ残るくらい大きなカステラを作ることに決めました。

そうと決まれば早速準備です。2匹の家にはたくさんの調理道具や材料があります。ですから、まずは大きな卵を家に運ぶことにしました。しかし持って帰るための上手い方法がなかなか思いつきません。うんと悩んだ末に、2匹は卵を運ぶのではなく、調理道具や材料を森へ持ってくることに決めました。

③実行

ぐりとぐら
引用:福音館書店

準備が整ったので、いよいよ実行段階です。カステラを作るため、最初に卵を割ります。ぐりは拳骨で卵を叩きました。

④実績の測定

叩いた卵はちっとも割れませんでした。それどころか、ぐりは手を痛めてしまいます。2匹が思っていたよりもずっと分厚い殻だったのです。別の方法に変える必要があります。

⑤分析・改善

卵が割れなかったのは、普通の卵よりも殻が分厚くて硬かったからです。ぐりの手は殻よりも柔らかかったので上手くいきませんでした。それなら、もっと硬いもので叩けば割れるはず。ぐらは石で叩くことを提案しました。ぐりは言われた通りに石で叩いてみます。すると卵を無事に割ることができました。

これから研修を受ける方々へ

ぐりとぐら
引用:福音館書店

その後、2匹のプロジェクトがどうなったかは、皆さんご存じの通りです。

各プロセスをしっかり設計して取り組み、やるべきことを後回しにせずに挑戦しつづけられるかどうかが、プロジェクトの成功を左右します。小さなプロジェクトでも大きなプロジェクトでも、この原則は変わりません。身近なところから学びを広げ、実生活に役立てていきましょう。

ところで、A&PROの研修では本の内容を引き合いに出して進められることもありますが、さすがに児童書が取り上げられた例はありません。ではなぜこのような記事になったのかというと、私が理解するのに『ぐりとぐら』がうってつけだったからです。

最初は「④実績の測定」の理解が曖昧で、5つのプロセスとPDCAとの違いも把握できていませんでした。ですが、絵本の具体的かつ簡単なストーリーに当てはめて考えることで、「PDCAは定期的な評価を行うが、5つのプロセスは常時モニタリングし即対応に繋げる」と正しく自分の中に落とし込むことができたのです。

同じ研修に参加しても、受け取り方や活用の仕方は人それぞれ。その人に最適な十人十色の価値が生まれます。あなたが研修に参加した時、どのような価値が生まれるのかとても楽しみです。研修に興味のある方はぜひ一度足を運んでみてください。

研修で学んだこと

  • プロジェクトの定義
  • プロセスを後回しにしない
  • 不確実性をコントロール
  • 振り返り時には翌月分(未来)を意識
  • 課題リストの活用(期限を明確に設定)

この記事の著者/編集者

久保井美愛   

上智大学外国語学部卒。社会人として仕事に必要なノウハウや心構えを学ぶためにA&PROの研修に参加。大の読書家で、のべ5,000冊以上の本を読んできた本の虫。かつて「図書室の門番」という異名を付けられたことも(笑) 本から得た知識や自身のスキル・経験を活かして、皆さんに価値あるものをお届けします。

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 長谷川拓志

    2022年01月23日

    プロジェクトマネジメントを説明するのにぐりとぐらが使われるとは思いもよらず、心を惹かれました。

    やるべきことを後回しにせず挑戦し続けられるかどうか

    本当に大切なことだと思います。私も常々自分の行動を振り返り、後回しにしていないか確認していこうと思います。

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