個々の状況に最適なアプローチを

今月の研修:コーチング理論(基礎1)

人から相談を受けた時、人が困難に直面している時、

「このアドバイスで間違っていないか…」

「どうも相手が腑に落ちていない…」

このようにモヤモヤ感じている方、意外と多いのではないでしょうか。では、どのようにしたら相手にとってポジティブなアプローチができるでしょうか。

 的確なアドバイスをするためには相手の状態を知ることが重要です。

根源的な問題を探し、それに対してアプローチをかけよう

原因は仕事だけとは限らない

 実際に相手にコーチングをする際にどのように対処すべきでしょうか。ここで押さえておきたいのは相手の困難の理由は仕事上における問題だけとは限らず、根源的にもっと別のところにある場合があるということです。

 例えば営業成績が振るわない部下がいたとします。仕事上の表面的な部分しかみていなければこの原因が、彼の勤務態度であったり、能力の問題であるであると判断するのが普通でしょう。しかし、中には違うケースも想定できます。具体例を挙げると、体調不良・家庭における問題・介護などが挙げられます。このような問題を抱えている部下に仕事の効率化、能力の向上、勤務態度に対してのコーチングをしてしまっても効果は出ません。

 このように、きちんと相手が直面している根源的な問題を浮き彫りにして、それに対して直接アプローチをとることが大切になります。

あらゆる原因を想定しておく

 理論は理解できても、領域別のアプローチを・即座に相手に提供するのは難しいと思った方も多いのではないでしょうか。

 自身の頭の中に「この領域ではこのコーチングをしよう」というような想定ができているとスムーズな対応に繋がるのではないでしょうか。相手の状況を予測し準備しておくことで、冷静に、即座に適切なコーチングを取ることができます。

 では、仕事ではなく別の例を挙げてみます。例えば、あなたは塾の講師だとします。宿題をやってこない生徒に対して取るコーチングを考えた時、どのような原因が考えられ、それに対してどのようなコーチングを取れば良いでしょうか。このようなことをあらかじめ自分の想定できる範囲で以下のように書き出しておくと、実際の場面に直面した時に役立ちます。

  • 宿題をやってこない生徒に考えられる原因とそのアプローチ
    • 部活が忙しい
      • →部活がない休日や、学校の昼休みなど、部活がない時間の過ごし方を聞いてみる。→時間を有効活用できないか考える。
    • 睡眠不足
      • →睡眠不足の原因が何か聞いてみる。→時間を有効活用できないか考える。場合によっては分量を減らす。
    • やる気が出ない
      • →塾に来ている目的・志望校へのモチベーションを深堀る。→その目的を達成するための手段としての宿題であることを説く。
    • 家庭内での問題
      • →家庭内と塾の問題を分けて考えさせる or →家庭内の問題を解決するために生徒の親族と面談を提案する。
    • 体調不良
      • →体調あっての勉強であることを説く。→なぜ悪化してしまったのか考える。体調管理を徹底させる。分量を減らす。
    • 成績不振の不安
      • →なぜその不安に陥ったか考えさせる。→どうしたら不安が解消できるか考える。

頭では分かっていても実践はできていない

 ここで、私の実体験を例にあげて、私の現状と課題点について述べようと思います。私は現在、キャリア支援NPO法人のエンカレッジで、1・2年生向け長期インターン分野における、企業と学生のマッチング事業の立ち上げを行うチームに所属し、リーダーを務めています。

 毎週、メンバーに次週までの課題を課し、ミーティングで共有する形で仕事を進めていました。メンバーも複数在籍しているため、当然個々のクオリティにもばらつきが生まれます。私から見て不十分なクオリティのものは改善するように毎週のミーティングでコミュニケーションを取っていました。今思えば、そのような仕事だけの表面上のやりとりしかできなかったことに対して、私は深く反省しています。

 仮に課題のクオリティの改善を求める相手がAさんだったとしましょう。私はAさんの仕事の面しか見ようとせず、その背景を見ていませんでした。しかし、Aさんの仕事のクオリティが低くなってしまった原因は仕事にあるのではなく、もっと他の部分にあったことが後々分かりました。Aさんはサークルで新歓係を任されており、4月は新歓活動の繁忙期でした。この場合、私は仕事の部分に焦点を当てるのではなく、課題とサークルの両立や、時間の使い方、課題の量に着目をして、根本的な問題を改善に向けてアプローチをするべきでした。私が表面的な部分しか見えていなかったがために、Aさんが抱えている、根源的な問題は解決せず、むしろ悪化させてしまったかもしれないのです。

 今後このような場面に直面することは多々あると思います。その際にこのような失敗を繰り返さぬよう、自身の頭の中で、できる限りの想定をしておきたいと思います。いつこのような場面に遭遇しても慌てず、的確な対処を取るべく、メンバーの心情を想像すること、また状態を理解するよう努めたいと思います。

最後に

 これまで、相手の問題や困難にアプローチする際には相手の状態を把握することが大切であると述べてきました。そのため、コーチングをする際には相手の直面している問題の根源的な理由を究明し、適切なアプローチを取ることが必要になることも書きました。

この記事の著者/編集者

小川勇 早稲田大学 政治経済学部  

サークルの後輩や同期のキャリアの関心度が低いことを課題に感じ、それを変えるべくキャリア支援NPO法人『エンカレッジ』に加入。現在は1・2年生に向けてオンラインイベントを通してキャリア支援を行なっている。加えて、長期インターンの分野で学生と企業のマッチング事業の立ち上げのリーダーとしても活動している。

するとコメントすることができます。

新着コメント

最新記事・ニュース

more

「メラビアンの法則」や「真実の瞬間」と向合い、各メンバー自身がブランド形成の重要要素であることを自覚していきます。 「目配り」「気配り」「心配り」の各段階を理解し、「マナー」「サービス」「ホスピタリティ」「おもてなし」の違いについて研究。 「マニュアル」「サービス」を理解・実践するのは当然。 「ホスピタリティ」「おもてなし」を顧客・メンバーに提供したいリーダーのための研修です。

島元 和輝 荒 諒理 川瀬 響 3Picks

行き過ぎた完璧主義は仕事を停滞させるだけでなく、自分自身を苦しませてしまいます。本記事ではプロジェクトマネジメントを題材に、自分の良さをかき消さず、最大限発揮する仕事への取り組み方を考えます。完璧主義で悩んだことのある皆さんに是非ご覧になって欲しい記事です。

左貫菜々子 藤井裕己 谷 風花 大庭彩 4Picks

プロジェクトマネジメントを機能させる土台となるのが『理念のマネジメント』 プロのリーダーは、「権威のマネジメント」を避け、「理念のマネジメント」を構築し、維持し続ける。 「好き・嫌い」や「多数決」ではなく、説得力ある提案を互いに尊重する文化を構築したいリーダーのための研修です。

荒 諒理 木藤 大和 島元 和輝 川瀬 響 4Picks

復習回数を闇雲に増やしたり、ノートいっぱいに何度も書かせる記憶法は、社会に出てから通用しない。 多忙なリーダーは、重要事項を一発で覚える。 たとえそれができなくても、復習回数を最小限にし、効果的・効率的に記憶することが大切。

「やばい、キャパオーバーしていて仕事を回しきれていない・・・。」成果を生み出すためにリーダーを務め、多くの責任を引き受けたのはいいものの、こうした悩みを抱く方は少なくないと思います。本記事は、リーダーの方の中でも、「仕事を回しきれていない。」と実感している方、経験した方、キャパオーバー対策したい方に届けていくことを想定して進めていきます。キャパオーバーは解決できます!

そもそもプロジェクトとは何か。それを知ることによって、あなたが現在取り組んでいる活動をもっと豊かにすることができるはずです。プロジェクトの基本を学び、そのプロセスについて考えてみましょう。

大庭彩 上野美叡 2Picks

タスクには明確に優先順位が存在し、正しい優先順位でタスクに向き合うことが締め切りへの余裕につながります。緊急度と重要度のマトリックスを用いて改めてタスクへの優先順位をつけることを意識したいです。

大庭彩 1Picks

皆さんがリーダーを務める組織にはMVVやスローガンと言ったメンバー全員が認識している「共通目標」はありますか? そして、今その「共通目標」を何も見ずに口ずさむことができますか? もし、一度決めたことがある共通目標が形骸化してあまり浸透していない場合は私と同じ苦悩を経験するかもしれません。

大庭彩 1Picks