組織の目的を完遂するための記憶メカニズム

今月の研修:記憶のメカニズム

あなたはリーダーとして、記憶のメカニズムを理解してメンバーへ記憶の定着を図れていますか。何となくや経験則の方法に頼るのではなく、確実に覚えてもらえる仕組みを、リーダーが作っていくことが重要だと考えます。

身に付けること。短期記憶から長期記憶へ

今回の研修では、記憶の種類やメカニズムについて学びました。

記憶が身に付いているとはどういった状態でしょうか。これは、短期記憶として憶えたことが、長期記憶として実際の行動に結びつけることのできる段階に移った状態だと考えられます。

脳の海馬に保管された短期記憶は、必要と判断されると大脳皮質に移動し、長期記憶となります。この際、記憶が情動的な出来事に関連すると、扁桃体が長期記憶の形成・貯蔵を促進します。情動的なことの例としては、主体性があること、楽しむことなどがあります。
例えば文化祭において、クラスの一員として受け身で参加した際よりも、自らが積極的に発案するなどして参加していた場合の方が、時間が経っても体験は本人の記憶に残っているでしょう。

あなた個人では、このようなことを意識せず何となくで記憶できている場合もあるかもしれません。しかしながら、リーダーがメンバーに業務を伝える際には、記憶のメカニズムを理解して活用していることが重要となります。メンバーが記憶を定着させる能力が自分と同等であるとは限らない一方で、必要なことを覚えてもらうことはリーダーの責任でもあるからです。「私はこれで覚えられたから」といった経験則ではなく、正しい方法でメンバーに記憶してもらう工夫をする必要があるでしょう。

クレドが身に付く仕組み

組織に所属して仕事をする場合、各メンバーには、組織の目的を完遂するという使命があります。日常の業務においてそのような視点を失わないためにも、目的が何であるかを各自が理解し、それに沿った行動を意識することが求められます。つまり、組織の目的を記憶していることが重要です。以下では、メンバーにそれらを定着させる機会についてA&PROでの取り組みを挙げ、更に自分の今後の取り組みについても述べていきます。

私が参加しているA&PROでの毎週の研修では、理念や行動指針について記憶し、それに沿って行動できるよう設計されています。A&PROでは、どのような価値を提供するか、わたしたちの存在意義を示す理念と、どのような人物が価値を提供できるか、行動指針を示すクレドを掲げています。
毎週の研修の日は、メンバーでこの理念とクレドを読み合わせます。そして、特定のクレドについて価値提供できるエピソードがあれば共有します。更には、クレドについて自分の行動を省みて、今後どのような行動をとるかについての記事を毎月執筆しています。このように、繰り返し、エピソード記憶の共有、そして行動に移す主体性までつなげることで、クレドに沿った行動を目指しています。

目的に沿って主体的に行動する

A&PROにおいては先ほどのように、理念や行動指針を身に付ける仕組みがあります。一方私自身としては、今回の研修までは記憶のメカニズムについて理解できていませんでした。

私はキャリア支援団体に所属しており、大学1、2年生向けに記事やSNSで情報発信をするセクションのリーダーを務めています。セクションでは、使命、理念、行動指針にあたるMVV(Mission Vision Value)を、一年でメンバーが入れ替わるというこの組織の性質上、その年ごとに掲げています。しかしながら、そのように設定しているMVVをメンバーに浸透することはできていないのが現状です。これは、セクション内で確実にMVVを定着させる仕組みや機会を作ることができていないからだと考えます。

今後は、セクションのMVVをメンバーが記憶しているほど活動の目的を理解している状態を目指します。「記憶しているほど」というのは、単に覚えること自体に意味があるわけではないので、結果的に文面を覚えてしまうほど定着させるということです。具体的には、メンバーがMVVを覚え、これを意識してセクションの業務にあたってもらうために次の2つの機会を設けます。

1.MVVを実践できているか振り返り時間を作る

まず、現在の活動をよりMVVに沿ったものとするための議論の時間を設けることです。ただMVVを読み合わせるのではなく、各自が考え実際に活動を改善することには主体性が求められるからです。また、単に読み合わせるのではなく、実際の活動と結び付けてMVVに沿った行動ができるよう変化を生む取り組みの方が、より導入の実現性が高いと考えるからです。

例えば以前セクションの会議で、大学1,2年生向けの記事執筆に関し、大学4年生だけでなく社会人の方へもインタビューするという新たな取り組みの案が挙げられました。これは、ミッションにある「選択肢を提示する」という部分においてロールモデルの解像度を上げることや、行動指針にある「自分たちにも学びにする」という部分につながります。今まで、偶然このような案が挙がることは確かにありました。今後は、偶然に頼って改善するのではなく、仕組みとして意図的にそのような機会を設けることで、確実な改善を図っていきます。

2.MVVを考え直す機会を設ける

MVVに沿う行動を実践していても、時にはMVVそのものを見直す機会も必要でしょう。自分たちがターゲットとするのはどのような顧客か、顧客に対してどのようなアプローチができるかの指針となるのがMVVです。よって、組織やサービスのあり方に関して方針転換をする場合には、MVVをどのように変えるべきか検討することが必要です。組織は何を目指しているのか、そして各メンバーはどのような人にどのような価値を提供したいのかを、各メンバーが自身のモチベーションと結びつけて考える。新メンバーを迎える際や数ヶ月に一回の節目などに、セクションでMVVを見直す機会を設けていきます。

これらのように、MVVを記憶に定着させる機会・仕組みを設けて実践することを通して、メンバーが無意識にMVVに立ち返って行動できる状態を目指していきます。

これから研修を受ける方へ

研修では、記憶の種類や記憶が定着するメカニズムを学び、今までどのようなことが実践できていたか、これから何が実践できるかについて考えます。記事でも述べましたが、メンバーに記憶を確実に定着させる仕組みをリーダーが作り上げるためにも、メンバーでいるとき以上に記憶について理解する姿勢が必要でしょう。

自分だけでなくメンバーの立場に目を向け、かつ実践していきたい人におすすめです。

研修で学んだこと

  • 記憶の種類(感覚、短期、長期)とメカニズム
  • 記憶の種類(意味、エピソード、手続き)
  • 相手の主体性の重要さ
  • 感情へのアプローチの重要性

この記事の著者/編集者

田村稔行 早稲田大学 基幹理工学部 情報通信学科  

高校時代から英語の部活、サークルでの活動を続けており、大学では理工学部生向け英語サークルの代表を務めました。
更に、大学1、2年生がキャリアついて考える機会を提供すべく、大学生向け就活支援の学生団体「エンカレッジ」で活動。記事執筆やSNSの運用を行っています。

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