周囲からの報連相に満足できていますか?    -報連相からチームの水準を高める-

今月の研修:報告・連絡・相談

はじめに

仕事とは「他者と約束」で、その責任を期限内に果たす必要があります。そして仕事には報連相が非常に重要です。仕事内容が他者からのニーズを満たしているか、進捗は適切であるかなど、適当な相談や報告は、仕事を効率的、効果的に進めるために有効だからです。

一方で、皆さんにはこんな経験はありませんか??

  • 同僚・部下に仕事を頼んだが、作ってくれたものが求めていたものと違う
  • 報連相をいつすれば良いか分からない
  • 上司・部下と適当なコミュニケーションが取れず、プロジェクトチームを好きになれない

1つでも当てはまると思った方には是非この記事を読んで頂きたいです。

今回の記事では報告・連絡・相談の使い分けやタイミングについて考えます。この記事を読むと以下のことがわかります。

  • 報告・連絡・相談の違い
  • 報告・連絡・相談を有効活用してプロジェクトを効率的・効果的に進める方法
  • 報告・連絡・相談はメンバーの育成に繋がること
  • 報告・連絡・相談などの大切だけど運用されないメカニズムをメンバー・チームに徹底させる方法
  • メンバーが主体的に取り組みつつ、目標達成するために、プロジェクト開始時に抑えるべきポイント

メンバーとのコミュニケーションを豊かにすることで、メンバーの成長・プロジェクトの成功を実現できると、私は思います。とはいえ、私もメンバーとのコミュニケーションが上手くいかず、理想の組織を実現できず、常に悩んできた1人です。未だ正解を探し続けていますし、皆さんと一緒に考えて改善していければと思います。本記事はメカニズムと実践の双方を学べる記事になっているので、気になる箇所から御覧ください。

ポイント① 報連相と判断・決断の関係

後半で記載する報連相からチームを作り、プロジェクトを成功させた経験は本研修で習ったメカニズムを有効活用したものになります。実践しやすくなるように、適宜ポイントを解説しながら進めます。

報告・連絡・相談と判断・決断の説明は以下の通りです。

  • 報告:相手に決断を求める行為。
  • 連絡:決断も判断も伴わない、伝達行為。
  • 相談:相手に判断を求める行為。
  • 判断力:頭・心の活動、つまり行動に移す前に正しい選択が出来る力。
  • 決断力:判断材料をもとに行動する、実行できる力。

言葉だけではよく分からないですよね。具体例を使って確認してみましょう。
A課長は経験も豊富で能力もあるエリート社員、B部下は右も左も分からない新入社員だと考えて下さい。

B部下「課長!来週のC社への営業資料ですがどのような構成にすれば良いでしょうか?
A課長「おお、そうか。C社への提案か!ちなみにC社はどんな会社なんだ??」 

(B部下からC社の説明)

A課長「良し!そしたらDEFという構成で、3パターンの提案内容を作ってくれるか?」
B部下「了解しました!頑張ります!」

赤は相談を示しています。少し解説をしましょう。

B部下は資料作成という行動に移す前に方針などの判断をA課長に求めています。これによって、共通認識を持ち、部下も安心して仕事を進められます。また、相談をする際には判断材料を持ち合わせるべきです。判断材料がないと的確なアドバイスが出来ないからです。B部下がC社の説明をして、A課長に判断材料を提供したことで、B部下に的確な指示を出すことが出来ました。

(その後・・・)

B部下「C社への提案資料を作成できました!X・Y・Zパターンどれにしましょうか?××という観点から私はXパターンが良いと思っています。」
A課長「よし、Xパターンでいこう!この内容で商談を進めるね。よく頑張った!今日はとことん飲みに行こう!」
B部下「え、本当ですか!ありがとうございます!でも明日の9時からの営業会議を忘れないで下さいよ!


緑は報告、青が連絡を示しています。少し解説をしましょう。

まず、報告に関してです。
B部下は3つの提案パターンのどれにするか、という決断をA課長に求めています。正確な判断力と決断力を有するA課長の決断をもって、提案資料が決定します。まだ決断出来るほどの経験や能力を有していないB部下にとっては、A課長の考え方を学ぶ良い機会にもなります。

次に、連絡に関してです。
B部下はA課長に対して、会議の時間を伝えてくれています。これは判断も決断も伴わない、事実の伝達です

いかがでしょうか。次に実践編として、報連相を私がプロジェクトでどのように活用するかをお伝えします。なんとなくわからない、わかるけど実践ができない報連相をこの機会に身に着けましょう!

メカニズムの実践Part1

メカニズムを「分かる」から「出来る」ことにすることこそ重要です。ここからは私が受け持った組織にて報連相を実践した話をお伝えします。

私はキャリア支援団体のユーザー獲得部署のリーダーを担っています。最初からリーダーではなく、組織再編成によって途中から就任しました。

本部署は以下のような問題を抱えていました。

  • メンバーとのコミュニケーション量が僅かで報連相のタイミングも遅い。
  • 目標、メンバーの役割、目標に対するスケジュールが不明確である。

組織体制が未熟で、チームのように見えて実際は個の集まりでした。

組織のスタンダードを高め、目標達成のためにメンバーが適切な行動を能動的に行う状況を目指しました。

決断が出来る組織体制への一歩として、議事録を改変

就任後、10人が集うMTGで決断が出来ていなかったことに強い問題意識を持っていました。決断をする上で必要な判断材料もメンバーからあがっておらず、MTGをしても何も進まないという状況です。

MTGの時間を有効活用してプロジェクトを前進させるために、事前課題である議事録の書き方を徹底することにしました。そして判断と実行ができる組織を目指しました。議事録はいわば私が決断をするための判断材料を収集する場でした。

議事録のフォーマットは活動内容にもよりますが、大体以下の項目を書き入れています。下記項目があることで、正確に決断ができると考えたからです。

  • プロジェクトのゴール
  • 事実:ゴールに対する現状の成果
  • プロジェクトのスケジュール
  • 課題:ゴールと事実の乖離から予測されるリスクや対応すべき事象
  • 解決策の提案
  • ネクストアクション:日付・担当者も記入
  • その他共有事項

議事録を通じた報連相で、決断をするための判断材料を収集する

議事録では報連相の要素を組み込み、プロジェクトの成功を導けるように工夫しています。

項目用途議事録の該当箇所具体例
報告決断を伴う解決策の提案・ネクストアクション△△に対応するために××という行動をしても良いでしょうか?
連絡決断も判断も伴わない事実今週の結果は〇〇でした。
相談判断を伴う課題結果からみて、△△という課題に対応すべきだと思いますがいかがですか?
メンバーからリーダーへのコミュニケーションを想定した報連相

メンバーが議事録を通じて報連相を使い分けることで、リーダーは必要な判断材料を得て、決断をすることが出来ます。これにより、話し合っても何も決まらない状況や不必要な施策の実行を回避出来ました。また、ネクストアクションを日付・担当者まで記載すること、定量的なデータから事実分析をして顕在的・潜在的な課題に対処することを意識してもらいました。メンバーが考え、自分なりに判断・決断できる機会を提供し、メンバー・チームの成長を狙いました。以下は議事録の一部を切り取った写真です。ぜひご覧ください。

ポイント② メンバーのレベルに合わせながら水準を高める

ここでは一旦、本研修で習ったメカニズムのポイントを解説します。報連相の使い分け、判断力・決断力の向上は一朝一夕で習得できるわけではなく、練習が必要です。また、チームの中で使いこなせる人とそうでない人がいる場合もあると思います。様々なメンバーで構成されるチームでどのようにメカニズムを徹底させるかについて、本章から考えていきます。

私は報連相の仕組みを作る、議事録を徹底させる際などに以下のことを気をつけていました。

  • メンバーの行動や能力によってメカニズムを使い分ける

経験や能力によって任せる仕事がかわります。先程の例では判断力と決断力を有するA課長はプレゼン内容の決断と商談が仕事で、まだ判断力と決断力が乏しいB部下はAの助言を得ながら資料作成に尽力しました。

このように経験や能力などによって任せる仕事はかわり、反対にその人のレベルにあっていない仕事を与えることは成長を妨げてしまう可能性があります。また、B部下はA課長の決断の仕方を学ぶことで成長し、A課長はB部下の成長を見守りながら、B部下に合う仕事内容を与えていくことで順調に成長していくでしょう。

リーダーとしてメンバーの成長も目指すのならば、能力に応じたメカニズムの使い分けは非常に重要です。実は先程の議事録に対するFBもメンバーによって使い分けています。

この考え方は様々な場面で応用することが出来ます。
では、再び実践的な話に戻りましょう。

メカニズムの実践Part2

チームの水準をメンバーと共に創り上げ、実践する

リーダーが求める水準がメンバーに浸透しないこと、実践できないことはよくあることだと思います。ここではチームの現状やレベルを踏まえつつ、リーダーが求める水準をチームに浸透させていく方法を記載します。

先述した議事録の改変は最初から出来たわけではありません。リーダーの私が求めているものとメンバーが作成してくれたものがすれ違う状況は良くありました。お互い頑張っているのに、頑張れば頑張るほど目指すものがずれていく。そんな状況を打開するために2点だけ意識していたことがあります。

  • リーダーが求める水準をメンバーと共に協議し、お互いが納得できる状態にすること
  • メンバーに「手本」を見せ、共に「実践」し、「出来る」状態にすること

先述した議事録では具体的な書き方が分からないメンバーが多発して、最初は全く機能しませんでした。私の伝え方のミスでもあり、これでは私の求める水準をメンバーに押し付けているだけです。故にメンバーと共に創っていく、そしてお互いが納得しながら水準を高めることが重要です。

複数名の記入担当者と1on1をする機会を設け、MTGのあり方、必要な情報・見やすい書き方などを共に考え、時に期待を伝え、時に要望を聞きながら、共に水準を高めました。以下が変化の様子です。

MTG前に事前課題として出している議事録ですが、メンバーは毎回妥協せず誠実に取り組んでくれています。そのおかげもあり、メンバーと共通認識を取りながら、効率的かつ効果的にチームとして目標に挑めている実感があります。

プロジェクトの体制を整え、チームを自走状態にする

メンバーと共に、水準を高めることの重要性は分かるが、実際にどうすれば良いか分からない、そんな方もいると思います。目標達成するために必要であるチームのルールや体制を整えるために、プロジェクト開始時に抑えるべきポイントをお伝えします。

私が決めた内容は2点あります。

  • 明確な定義づけを行うこと
  • 報連相のタイミングを事前に決めておくこと

まず、明確な定義づけを行うことです。プロジェクトの途中で、「これはリーダの役割だと思ってた」というように明確な役割分担がされてないことで生じる仕事のヌケモレがあると思います。プロジェクト開始時にゴールや具体的な計画、担当者などを明確に決め、メンバーが動きやすい状況を作ります

次に報連相のタイミングを事前に決めておくことです。本来、報連相はリスクヘッジが出来るタイミング、相手にとって必要なタイミングで行うものですが、最初から出来る人は少ないと思います。故に、行動計画をもとに、相談・報告してほしいタイミングを伝えるようにしています。これによって仕事のズレを防ぎます。

明確な定義づけ、報連相のあり方に関して、今は私が提案する形です。一方で、それではメンバーの成長につながらないので、メンバーの能力に合わせて与える仕事や報連相のタイミングを変動させる必要があります。最終的にメンバーから提案出来るチームにしていきたいです。

最後に

最後に本記事のポイントを要約します。気になったところを振り返ってみて下さい。

  1. 報告・連絡・相談の違い
    報告:相手に決断を求める行為。
    連絡:決断も判断も伴わない、伝達行為。
    相談:相手に判断を求める行為。
  2. 判断・決断できる環境を整えることでプロジェクトは前進する
  3. メンバーの能力や経験に応じたメカニズムの使い分けが人を育てる
  4. チームに仕組みを浸透させるためには、メンバーと共に創っていく、そしてお互いが納得しながら水準を高めることが重要
  5. メンバーの能力に応じて託す仕事、報連相のタイミングは変動し、プロジェクト開始時にメンバーとルールを設定することが重要

これから研修を受ける方々へ

この記事を読んで、報連相を使いこなせていないと感じ方は是非研修を受けて頂きたいです。適切な報連相は仕事のパフォーマンス向上、気持ちの良い人間関係の構築に繋がると思います。一方で、報連相を使いこなせていないと、上司や部下の時間や力を無駄にしてしまうことがあります。私自身、報告と相談の使い分けが不十分だったり、タイミングが遅く、人に迷惑をかけてしまっていたことを実感しました。研修を終えた今では、自分だけでなく周りのメンバーと共に実践できるように努力しています。

大切だけどなかなか使いこなせない報連相、この研修で是非皆さんにも学んで頂きたいです。

研修で学んだこと

  • 報告・連絡・相談の違い
  • 報連相などのメカニズムを人によって使いわけることで「人の成長を促す」ことに活用できる
  • 報連相やプロジェクトにおける責任・権限・義務を実践に落とし込む方法

この記事の著者/編集者

須賀渉大   

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。大学3年時までは海外インターンシップ事業の運営、国内外ボランティア、教育系の長期インターンなど様々な活動に尽力。大学4年時には日本最大のキャリア支援団体の早稲田支部長として100人を超える仲間と、事業・組織共に持続的な成長を遂げる団体の基盤創りに挑戦。ボランティアで深刻な社会課題を目の当たりにした経験から「日本を課題解決先進国にしたい」と考えている。社会人では金融とデジタルの分野で専門性を磨き、将来は社会的価値と企業的価値を両立した事業、組織創りに携わり、社会問題の解決及び日本の変革への貢献を志す。

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