自分を理解してもらえないのは、自分が相手の「真」の姿を理解していないから

12月の研修:社会人の持つべき習慣(前半)
1月の研修:社会人の持つべき習慣(後半)
2月の研修:コーチング理論(基礎1)

はじめに

リーダーを務める自分のことを周りの方が理解してくれるのは当たり前だと思っていませんか??

学生時代100人以上の団体の代表を務めたことがあり、代表の私に合わせてくれることが当たり前だと思った節に何度か失敗をしたことがあります。立場や経験に関係なく、豊かな人間関係を築くためには「相手を理解すること」、「自他にとってWin-Winであること」が大切です。

本記事で相手の「真」の姿を理解するコミュニケーション方法をお伝えします。コミュニケーションはあらゆる分野で成功したり、人生を豊かにする基礎スキルです。自分本位の人間関係を脱却し、豊かな人間関係を構築したい方にお薦めの記事です。

理解してから理解される

塾講師が生徒の学力や志望校、勉強に対する動機を理解してから、指導を行うように理解されるためには、理解することから始めることが大切です。相手を理解することが自分本位のコミュニケーションを脱却する近道でしょう。

あなたはどれくらい相手のことを理解していますか?

正論であっても相手の状況や特徴を理解したコミュニケーションを取らなければ、相手に伝わらないことは多々あります。同じ問題に躓いていたとしても、ゲームばかりしている生徒と勤勉な生徒ではどの観点から指導をするかは異なるでしょう。相手に正しく伝え、正しく理解してもらい、目標に向かって主体的に導くためには相手のことを知る必要があります。

仕事がうまくいかない原因は仕事に関係するものばかりではない

皆さんは部下が仕事が上手くいかなかった際に、その原因は何だと考えるでしょうか。私であれば経験不足、仕事のやり方を知らない、想定外のことが生じた、など本人の取り組み方に原因があると考えてしまうと思います。もちろんこの場合もあると思いますが、実際のところ、家庭内の問題、睡眠不足、会社の業績不振への不安など、仕事とは関係ないことが原因であることも多いようです。この事実を知ると助言やアドバイスの仕方が変わるでしょう。

例えば部下が定例MTGで議事録を書いていなかった際に、本人に議事録の書き方を教えるという解決策だけではなく、本人の私生活や職場での人間関係にも問題があるのではないかと、解決の引き出しを増やすことが出来ます。顕在的な問題ではなく、潜在的な問題にアプローチする姿勢が、相手の「真」の姿を理解するヒントになります。相手の「真」の姿を理解するためには、相手の様子を伺うだけではなく、時には相手に一歩踏み込むコミュニケーションが必要なのかもしれません。

仕事が上手くいかない原因が仕事外のことにもあるように、様々な観点から相手の真の姿を理解することが大切。その上で顕在的な問題だけでなく、潜在的な問題にも勇気を持って対応していく。

あなたは相手のことをどのように理解しますか?

相手のことを理解するために過去の経験や価値観、プライベートの過ごし方など、様々な話をするのではないでしょうか。しかし、多くの方とコミュニケーションを行う場合、その方の全ての話や気持ちを覚えておくことは実際に難しいですよね。それ故、相手の欲求や特性を理論に基づいて理解することが大切だと思います。例えば、相手の特性を理解する上ではマグレガーのXY理論が大変役に立ちます。

マグレガーのXY理論
●X理論
→人間は本来なまけたがる生き物で、責任をとりたがらず、放っておくと仕事をしなくなる
●Y理論
→人間は本来進んで働きたがる生き物で、自己実現のために自ら行動し、進んで問題解決する

マグレガー理論は管理職の方などが部下へのマネジメントの手段を検討する際に役立ちます。例えばX理論であれば、命令や強制で管理し、Y理論であれば、力を発揮できる機会を渡してみるなど、仕事の渡し方、管理の仕方が変わります。相手の状況に合わせながら相手を導くことが出来ます。マグレガー理論の他にも、下記の写真のようなマズローの5段階欲求、過去に執筆させて頂いたリーダーシップパワー理論を用いて、相手の欲求や何に影響されやすいかを分析してみると、相手のことをより理解できるでしょう。是非ご自身で学びを深めてみてください。

理論に基づいて、相手の「真」の姿を理解する

相手の「真」の姿を理解することは本当に難しいことだと思います。現在私が代表を務めるエンカレッジ早稲田支部にて、採用面談や配属面談、リーダー選抜を担当しています。一見、誠実で自信があるメンバーが実は依存(他責にする状態)傾向が強く、人のせいにしてばかりの場合や、消極的で主体性がないように見えるメンバーが、チームの問題を解決するために何度も提案してくれる(自分だけでなく、顧客・チームに対し責任を持つ)場合もありました。

人財育成、組織創りは一朝一夕で叶うものではありません経験則ももちろん大事ですが、まずは理論に基づいて、相手の「真」の姿を理解することが豊かなコミュニケーションの第一歩になると思います。また、理論を学ぶことで再現性のある力が身につき、あなた自身も成長していくでしょう。そして、相手を理解する姿勢があるからこそ、あなたも理解してもらえるのでしょう。

相手の欲求特性を理論に基づいて理解することが、相手の「真」の姿を理解し、相手の状況に合わせながら導くコミュニケーションに繋がる。

理解しあうために必要な”会話状態のリセット”

ここまで、相手を理解することの重要性をお話しましたが、それだけで上手くいくほど人間関係は単純ではありません。私自身その人や組織のことを深く理解したつもりでしたが、それ以前の私の取り組み方が相手にとって良くないものであり、なかなか話を聞いてもらえないことがありました。豊かな人間関係は信頼の積み重ねで出来上がることは理解しながらも、苦しい状況でした。その際に私が大切にしたことは”共通点”を意識することです。

対立ではなく目的を果たすための議論に導くために

例えば、中長期的な成果を大切にする私と短期的な成果を大切にする上司で仕事の進め方や方針が異なり何度も対立関係になったことがあります。しかし、以下のよう伝えた所、相手の気持ちも落ち着き、建設的な議論が出来たことがあります。

「〇〇さんの行動の背景にある気持ちは組織のために今出来ることをやりきりたいというものなのでしょうか?その気持ちは僕も大切にしたいと思っています。その上で、1番組織の成功に繋がる方向を一緒に考えてませんか?

組織の成功を大切にするという共通の気持ちと、相手の気持ちを自分の言葉で置き換えるほど理解する(短期的な成果を、今できることをやりきりたいという言葉に代弁)ことで、対立を続けるのではなく目的達成のために互いが歩み寄る対話を行えました。

自分と相手のコミュニケーションの質を互いに高める

世の中には理念や説得力のある意見を大切にする組織と、物事を好き嫌いで判断する組織があります。どちらが良いという話ではありませんが、議論において対立ばかりおきてしまう瞬間があるでしょう。そんな時に以下のことを大切にしてみてください。

”会話状態のリセット(会話の目的を整理し、相手の気持ちへの共感と共通点探しにより、対立ではなく目的を果たすための議論に導くこと)”を行い、自分と相手のコミュニケーションの質を互いに高めることが大切。

理解しあうだけでなく、双方が満足する結果を

コミュニケーションにおいて、相手を理解することの重要性をお伝えしました。ただ、理解するだけで良いわけではありません。例えば以下のようなことを言われたらどのような気持ちになるでしょうか。

「あなたのことはこれ以上にないくらいに理解しました。でも私達も~~という事情がありますので、あなたには損になるかもしれませんがこのような形で契約できないでしょうか?」

私は、理解しているのは口先だけであり、誠実そうに見えて自己中心的に動いている様子に残念な気持ちになります。相手を理解した上で自分の利益と他人の利益を同時に確保出来るWin-Winな状態を模索することが大切です。相手だけ、自分だけ損をする形で不平不満も多く、続かないでしょう。

合意しないことも互いにとってWin-Winになることもある

互いに合意しなくてもWin-Winになる場合をご存知でしょうか。先ずWin-Winを求め解決策が見つからない場合は合意しない”No-Deal”という形です。合意しないことからあまり良い形に見えないかもしれませんが、これはWin-Winであり、互いのことを本当に大切に思った決断になります。片方でも不平不満がある状態では、互いが望む結果は手に入らず、むしろコストを出し合うものの結果が出ないという最悪の状況になることもあるからです。

具体的な場面としては、組織同士で契約を交わして進行していたプロジェクトが一区切りし、今期も契約を交わすかを相談している際にNo-Dealの考え方が生まれます。両組織は今季以上に来季も互いにとってWin-Winな形でプロジェクトを進められるか検討した上で決断します。その上で互いに満足出来なければ合意はされません。

No-Dealは互いの発展を願う誠実な取り組み

全てに対して言えることではありませんが、現状維持は衰退であり、組織活動には常に進化が求められます。合意を検討する中で、組織の中長期的な戦略など様々な観点から互いの組織に利点があるかを分析します。また、契約時に交わした約束が守られていなければ、考えるまでもなく、来期の契約は結ばれないでしょう。

これらを踏まえると、No-Dealは互いの過去・現在・未来を見つめ、互いの発展を願った上で行う誠実な取り組みなのではないでしょうか。足を引っ張り合ったり、片方が損をするのではなく、互いのことを思った上で互いが手を取り合わないほうが良いという選択肢だからです。豊かな人間関係を構築するためにリーダーシップを発揮し、Win-Win、No-Dealなど、双方にとって満足する形を是非目指してみてください。

相手を理解することに加え、常に自分と相手が満足する形を目指すことが重要である。

最後に

私がリーダーを務める際、周囲の方が自分を理解してくれることが当たり前だと思っていた時期もありました。しかし、振り返ってみるとそんな自分をメンバーが受け入れてくれ、合わせてくれていたように感じます。本記事を執筆する中で、リーダーこそ立場に甘えず、理解してもらうためにまずは自分から理解することの重要性を振り返ることが出来ました。

コミュニケーションは私達が思う以上に、非常に奥が深いものだと思います。どんな方とも仲良くなれる方に対して「コミュニケーション能力が高い」と言ってしまうこともあると思います。しかし、コミュニケーションの奥深さを理解すると、それだけで「コミュニケーション能力が高い」と形容することは残念に思います。

コミュニケーションはあらゆる分野で成功したり、人生を豊かにする基礎スキルであり、コミュニケーションを学ぶことは人生の可能性を大きく広げるのではないでしょうか。普段なんとなく行う対話ですらも、理論を学ぶと様々な発見を得られることに気付きます。経験則ももちろん大事ですが、理論の学習を進め、再現性を高め、相手の「真」の姿を理解できるように日々努力したいと思います。

研修で学んだこと

  • 状況を変えたければ、まずは自分たちを変えなければならない
  • 第一の習慣「主体性を発揮する」
  • 第二の習慣「目的を持って始める」”リーダーシップとマネジメントの違い”
  • 第三の習慣「重要事項を優先する」”緊急中毒から逃れるコツ”、”第二領域を守る”
  • 第四の習慣「Win-Winを考える」”双方の利益や満足を求める姿勢の習慣化”
  • 第五の習慣「理解してから理解される」”相手の真の姿を理解する”
  • 第六の習慣「相乗効果を発揮する」”創造的な協力。妥協と、第三の案の違い”
  • 第七の習慣「刃を研ぐ」”肉体、精神、社会/情緒、精神を磨き続ける”
  • 人間心理を理解して相手の状況に合わせた成長のきっかけを与えることの重要性

この記事の著者/編集者

須賀渉大   

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。大学3年時までは海外インターンシップ事業の運営、国内外ボランティア、教育系の長期インターンなど様々な活動に尽力。大学4年時には日本最大のキャリア支援団体の早稲田支部長として100人を超える仲間と、事業・組織共に持続的な成長を遂げる団体の基盤創りに挑戦。ボランティアで深刻な社会課題を目の当たりにした経験から「日本を課題解決先進国にしたい」と考えている。社会人では金融とデジタルの分野で専門性を磨き、将来は社会的価値と企業的価値を両立した事業、組織創りに携わり、社会問題の解決及び日本の変革への貢献を志す。

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 須賀渉大

    2023年03月08日

    香山さん、いつもコメントして頂き誠にありがとうございます。コメントから学ばせて頂くことも多く、感謝しています。また、読んで頂けていること自体も大変嬉しいです。

    守破離の”守”、まさにその通りだと思います。まずは基礎の型を堅実に守り、徐々に良いものを取り入れて発展させていく流れが大切だと思います。

  • 香山 渉

    2023年03月06日

    """
    経験則ももちろん大事ですが、理論の学習を進め、再現性を高め、相手の「真」の姿を理解できるように日々努力したいと思います。
    """

    まさに、守破離の"守"に相当する部分だと感じ、自己流に拘りすぎないために必要な考え方だと思いました。

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