メンバーがリーダーのために行動する組織を作るには?

今月の研修:サービス理論(基礎2)

はじめに

私は、キャリア支援団体にて1年間ある部署のリーダーとして活動していました。その中で何度もぶつかり、当時の自分には解決が難しかった状況がありました。それがこちらです。

会議やチャットツールでメンバーに意見を求めても全く意見が出てこない。

リーダーにとって、メンバーの主体性ほど有難いと感じることは他にないと思っています。しかし自分のチームにはそれが欠けていて、リーダーの自分1人で考えて進めていく状態になっていました。

その時、私はメンバー各個人のやりがいを高めることが主体性向上につながると考え、以下の施策をとりました。

メンバーの理解を深めるために1対1の面談をする。
その上で各自に合った仕事を渡し、やり甲斐を感じてもらって主体性をあげる。

しかしメンバーの主体性はなかなか上がっていきませんでした。

改めて振り返ると私は、「メンバーに要望を汲み取ってもらえる状態を作る」という意識を持ち続けることができていませんでした。

そこで本記事では、リーダー目線で、メンバーにリーダーの要望を汲み取ってもらえる状態を作ることの意義、そして実現する方法を考えていきます。

皆さんのメンバーは、リーダーである皆さんのことをよく考えてくれていると断言できますか?

断言できない方は是非先を読み進めてください。

メンバーに要望を汲み取ってもらえる状態とは?

メンバーがリーダーを「学習」する関係

改めて、メンバーにリーダーの要望を汲み取ってもらえる状態は、別の言葉でメンバーがリーダーを「学習」する関係がある状態と言い換えられます。

  • メンバーがリーダーを学習する関係:「メンバーがリーダーの要望を認識するために行動し、リーダーが活動しやすいように努力する関係
    (以後、単に「学習する関係」という場合にはこのことを指します)

「学習」は、一般に何かを学ぶことを指しますが、ここではその意味だけではありません。相手の要望を認識するために行動し、満足度を高めるために努力をすることを意味します。

学習する関係が実現されている具体例としては、例えばリーダーである皆さんがキャパシティオーバーし、助けを求めたい状況だとしましょう。このような時に、リーダーの危機的状況を察知して、メンバがサポートを提案してくれるならば、メンバーが学習する関係ができていると言えます。

メンバーが学習する関係を構築するメリット

学習する関係を構築することのメリットは、メンバーが「リーダーのため」にという活動目的を持つようになることです。

メンバーはどんな活動であれ、はじめに組織に属する時に自分のため、もしくは顧客のためにという目的を持っています。そのモチベーションはもちろん大事ですが、それだけでは活動を継続するには十分でないことがあります。

しかし、「リーダーのために」という目的を生めれば、メンバーは活動に対して新たな意義を持ち、主体性を持ちやすくなります。

学習関係を構築するには?

メンバーがリーダーを学習する関係を構築するためにリーダーはすべきことは、以下2つの重要なポイントに集約されます。

  1. メンバーからの信頼を高め続けること
  2. メンバーに学習する関係の重要性を伝えること

それぞれ詳しく理由と実現方法を説明していきます。

1. メンバーから信頼を高め続ける

学習関係を築くための根幹は、メンバーから信頼を常に高め続けることです。

信頼を高めるためには、相手のためを想った行動を継続することが重要です。

誠実な人であれば、自分のために何かしてくれたら恩を返そうと思うでしょう。これはチーム内でも同じです。常にメンバーのために行動すれば、メンバーはリーダーのために行動しようとします。

リーダーにとってメンバーを想った行動を取るというのは大変なことに聞こえるかもしれません。しかし、やることはシンプルです。それは、「メンバーと積極的に約束し、それを実行すること」です。

メンバーとの約束を守ることは、相手のために行動することと等しいです。それを継続し続けることで信頼を高められます。(さらに高度な方法として感動を生むというやり方もあります。興味のある方はこちらの記事「リーダーは感動を作り出せ」へ!)

信頼回復の難しさ

一点皆さんに心に留めておいてほしいことがあります。

それは、信頼を落とすのは一瞬であり、回復するには時間がかかるということです。

これには私の実体験があります。

私ははじめに述べたようにキャリア支援団体にて、企業イベントを学生に届けることに責任を持つ領域のリーダーを務めていました。通常時は、メンバーが忙しい時に積極的に「カバーに入る」と約束し、実行することで信頼を高めていました。しかし一時期キャパオーバーになり、リーダーとして当時宣言していた「カバーに入る」「メンバーの業務を効率化する」という責務を果たせず、メンバーから「やると宣言したことをやってくれないリーダー」という感情が湧き上がる状況を作ってしまいました。これにより、メンバーからの信頼が一気に落ちた実感があります。

一般に、信頼が十分にないと、いくらメンバーのために行動しても、メンバーがリーダーのために行動するという状況を作ることは難しいです。導入の具体例で、私は相手のためを想って以下のアクションをとりました。

メンバーの理解を深めるために1対1の面談をする。
その上で各自に合った仕事を渡し、やり甲斐を感じてもらって主体性をあげる。

この行動は相手のための行動に違いありません。しかし、信頼が十分でなかったため、メンバーが「リーダーのために」という目的を持つ学習する関係に移行しませんでした。

相手が自分のために行動するときは信頼が前提です。そして信頼を落とすのは一瞬であり、回復するには時間がかかります。メンバーがリーダーを学習する関係を築くためには、常に信頼を高めるための行動を継続しましょう。

現在、私は二度と同じ経験をしないために、全員との約束を必ず守り、信頼を積み重ねることを継続しています。簡単なようで難しいです。時に言い訳して楽をしたくなります。それでも約束を守り続けるのは、信頼を落とすのは一瞬で、回復するには時間がかかるからです。

2. メンバーに学習する関係の重要性を伝えること

信頼関係が前提ではありますが、それだけではメンバーがリーダーを学習する関係は実現されないことがあります。なぜならメンバーが「リーダーの要望を汲み取る重要性」を認識していないことがあるからです。

例えば、キャリア支援団体における私の直属のリーダーは、私を含むメンバーから信頼されていた一方で、メンバーに「要望を汲み取る重要性」を認識してもらえていませんでした。

そのリーダーは確かに仕事をこなす能力が高く、どんな課題も回収し自分で対応していました。責任を全うするという行動により、信頼は絶大でした。一方で、キャパシティを超えて仕事をしてしまい、体調を崩すことが多くありました。

この時、本来であればメンバーは危機状態を認識し、事前にサポートに入るべきでした。しかしその必要性にメンバーは気づけておらず、そういった行動が事前に生まれることはほとんどなかったというのが実情でした。

このように、メンバーから信頼されていてもメンバーがリーダーを学習する関係を築けていないことがあります。したがって多くの場合において、メンバーに対して学習する関係を築くためのコミュニケーションをとる必要が出てきます。

学習する関係を築くためのコミュニケーション

具体的には、以下の手順でコミュニケーションをとると学習する関係に繋げやすいです。前提として、メンバーから信頼されていることが必要です。

  1. 現在リーダーとして抱える課題で、メンバーに助けを求められる内容を考える。
  2. メンバーに対しての要望を具体的に言語化する。
  3. メンバーと話す場を設け、丁寧に課題と要望を伝える。
  4. 最後に、学習する関係の重要性を伝える。

手順1-3では「リーダーに共感してもらうこと」を、手順4では「学習する関係の構築を加速すること」を目的としています。それぞれについて取り上げていきます。

リーダーに共感してもらう

手順1-3では、いきなり学習関係の必要性を伝えずにリーダーに共感してもらうことを狙いとします。

1-3の手順がない場合、メンバーに対して学習する関係の重要性を伝えても、相手に対して「自分のために行動してほしい」と押し付けている状態になります。こう一方的なコミュニケーションでは、学習する関係の必要性を受け入れてもらえる可能性は高まりません。皆さんも突然「リーダーのためにもっと考えてくれ」と言われたとしたら、納得できないでしょう。これと同じことです。

解決するためには、事前に共感してもらえる状況を作る必要があります。その方法として、現在抱える課題を共有し、メンバーとともに解決することを手順1-3で実施します。

先ほど挙げた私の企業イベント領域であれば、1-3の手順は具体的に以下のようにとることができます。(メンバーとの信頼関係を前提とします。)

  1. 現在リーダーであるヤマザキが抱える課題は、「企業イベント数が増加し、それに伴った業務改善の仕事に時間を割いているため、全イベントの集客目標に目を配りきれないこと」である。そこで、メンバーの1人(メンバーA)に助けを求めたいことは、「いくつかの企業イベントの集客数値管理」である。
  2. メンバーAに対しての具体的な要望は、「企業イベントのうち、毎週末時点で目標に対して50%以上未達のイベントについて数値向上施策を自発的に取ってほしい」である。
  3. メンバーAと1対1で話す場を設けて、以下の会話のように丁寧に課題と要望を伝えていく。

ヤマザキ(リーダー):「A、お疲れ様!いつも任せた仕事を確実に実行してくれて助かっています。ありがとう!」
メンバーA:「こちらこそ、ヤマザキがとても頼れるから私にとっても仕事がしやすい!」
ヤマザキ:「それなら良かった。今日話したいのは、リーダーとして感じている課題をAと一緒に解決していきたいということなんだ。」
メンバーA:「なるほど。どんな内容なんだろう?」
ヤマザキ:「Aも感じているように、今企業イベント数が急増しているよね。急増するイベントに対して対応できるように業務改善に取り組んでいるのだけど、それによってどうしても全ての企業イベントの集客目標に目を配ることが難しくなっているんだ。(課題を伝える)
メンバーA:「確かに、ヤマザキが抱える業務範囲は広がり続けているね。」
ヤマザキ:「そうなんだ。そこで、人一倍責任感があるAに、いくつかの企業イベントの数値管理を任せたいんだ。協力くれるだろうか?(要望を伝える)
メンバーA:「全然大丈夫だよ!ヤマザキのお願いにはもちろん協力したい。具体的にはどんなことをすれば良いかな?」
ヤマザキ:「ありがとう!具体的には、毎週末時点で目標に対して50%以上未達のイベントについて数値向上施策を自発的に取ってほしいんだ。いかがだろう?(具体的な要望を伝える)
メンバーA:「良いと思う!了解しました。今週から取り組みます!」

このようにメンバーとコミュニケーションを取りながら、課題解決を試みます。これによりメンバーは、「リーダーは実は多くの課題を抱えている」という認識を持つことになり、リーダーに共感します。その上で「4. 最後に、学習する関係の重要性を伝える。」へ移ります。

学習する関係の構築を加速する

リーダーへの共感がある状態で学習する関係の重要性を伝えていきます。これにより、メンバーがリーダーを学習する関係の構築がより一層促進されます。

では、メンバーがリーダーを学習する関係が重要である理由とは何でしょうか?今一度考えてみてください。

一言で言うと、学習する関係のメリットは、「メンバーがリーダーの要望を認識するために行動することで、リーダーが活動しやすくなるから」です。

既に信頼されているリーダーであれば、「学習する関係があるとリーダーは活動しやすい」と伝えればメンバーはそれを意識して行動してくれるはずです。

具体的には、手順3の会話の続きとして以下のような話ができます。

(先ほどの会話の続き)
メンバーA:「良いと思う!了解しました。今週から取り組みます!」
ヤマザキ(リーダー):「助かる!Aはいつも頼り甲斐があるよ。実は最近、企業イベント領域では、今日話した内容だけでなく各所で課題が発生していると強く感じているんだ。私もリーダーとして課題に対処しているのだけど、どうしても手が足りていないときもある。そんな時に、Aにはリーダーが必要としていそうなことを想定して、積極的に行動を起こしてほしいんだ。そうすると、領域にとって良いのはもちろん、私も活動しやすくなるんだ。
メンバーA:「そうだよね。私の力で領域にとってもヤマザキにとっても良いことなら積極的に課題に対して行動していくよ!」

この手順を基に、是非メンバーがリーダーを学習する関係を築いていってください。学習する関係は、必ずリーダーにとって活動しやすい組織づくりに繋がります。私自身、導入で話したようにメンバーの主体性が上がらずリーダーの自分1人で考えて進めていく状態を作ってしまい、苦労しました。他のリーダーが私と同じような経験をしないことを心から祈っています。

学習する関係を構築するには、あえて重要性だけを伝える

学習する関係においてメンバーがすべきことは伝えなくていいのか、と思われる方もいるかとは思います。この疑問に対しての答えは、「具体的に決めなくてよい」です。あくまでメンバーの主体性に任せることで、学習する関係を構築します。具体的に決めるということは義務になり、リーダーのためを想った行動にならず、学習する関係の構築に繋がらない可能性が高いです。

最後に

ここまでメンバーがリーダーを学習する関係を築くことの意義と方法について考えてきました。以下にまとめます。

  • メンバーがリーダーを学習する関係は、メンバーの「リーダーのために」という活動目的を生み出す。
  • 学習する関係の構築には、信頼を高め続けるアクションが重要である。
  • 信頼を落とすのは一瞬であり、回復するには時間がかかる。
  • 学習する関係の構築を加速するには、「リーダーは実は見えないところで課題を抱えている」という認識を持ってもらうコミュニケーションをはじめにとり、その上で学習する関係の必要性を伝える。

この記事で皆さんに何より覚えてほしいことは、「メンバーがリーダーのために行動する組織を作るためには、信頼を高める行動を取り続けるしかない」ということです。私自身もこれを肝に命じて社会人として邁進していきます。

研修で学んだこと

  • One to Oneマーケティングは顧客内シェアを高めることである。
  • 顧客内シェアを高めるための前提として、顧客識別を適切に実施することが重要。
  • カスタマイゼーションの本質は、顧客と学習関係を構築することである。

この記事の著者/編集者

山嵜晴貴  早稲田大学 先進理工学部 

事業家志向の早大理系4年生。
大学1年次にインドへ渡航し、新興国での社会課題解決に興味を持つ。
2年次の経営コンサルインターンと起業家講座の学びから、ビジネスを通じた課題解決を志向。
将来は新興国で社会インフラとなる事業を創ることを夢見る。
現在は、その一歩として日本の学生の自立支援を志し、キャリア支援団体に所属。企業イベント領域のリーダーを務める。

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