相手だけでなく、自分の時間も大切に出来るリーダーへ

クレド5.時間の有限性を理解する

限りある時間を有意義に活用するために、準備を徹底していきます。自分の時間を大切にしなければ、他者の時間も大切にすることはできません。他者(顧客・提携先・メンバー)の立場に立ち、一歩先行くサービスを提供します。

はじめに

「自分の時間を削ればどうにかなる」

 プロジェクトが上手く行かなかったり、リーダーや責任ある立場になった時ほど、自分の時間を削ることでどうにかすればいい。周りの人から頼まれた仕事を引き受けていたら、いつの間にか自分の時間がなくなっていた。そんな自分の時間を犠牲にして組織活動を成立させようとする、時間における「自己犠牲」に陥ってしまう人は、案外多いのではないでしょうか。

 私もこの時間おける「自己犠牲」の傾向が強く、何度も悩まされました。仕事や組織活動は好きでやりがいもあって始めたはずなのに、何だか自分の時間を擦り減らしているような感覚で、勝手に仕事や組織活動が辛くなったり、いつしかやりがいを見失う結果も招いてしまったほどです。

 そこで今回は、自他ともに有限な時間において、組織や相手のために自分の時間を削ればいいという、自己犠牲的な思考に陥ってしまう人に相手の時間だけでなく自分の時間も大切にするための方法についてお話ししたいと思います。

自分の時間を大切にする一歩 ~自分の「身体の声」と「心の声」を聴く~

時間の使い方を蔑ろにしてしまった経験

 みなさんは今までの自分の時間の使い方を振り返った際、「戻りたい、やり直したい」と思うような時間の使い方をしていた時期はありますか。

 私にはあります。それは大学1年生の時です。

 当時の私は、大学生活に対する期待を体現するかのように、大学の授業、アルバイト、ダンスサークル、ボランティア活動などあらゆる活動に手を出し、予定を目一杯詰める形で時間を使っていました。酷い日の一日は以下のようなスケジュールだったほどです。

  • 朝5時:起床
  • 6~10時:カフェバイト
  • 10時半~16時:2・4限の授業 (空き時間にはダンスサークルの練習)
  • 18~22時:ボランティア団体のミーティング
  • 23時:帰宅
  • 翌日朝5時:起床→カフェバイト

といったいわゆる”限界生活”を送っていたのです。

 こんな生活は誰が見ても分かるほど、時間の使い方に問題がある状態ですが、具体的に何が問題なのでしょうか。みなさんも問題点を出来るだけ考えてみてください。

 私は大きく分けて、2点が問題点があると考えます。

  1. 休息時間がしっかり確保されていない点
  2. 時間に対して予定を詰め込んでいるだけになってしまっている点

 まず1点目に関しては、自分の身体をメンテナンスする時間を確保できていないということです。どんな活動や仕事をするにしても身体が資本です。自分の健康を第一に大切にすることが、自分の時間を大切にする第一歩でしょう

 次に2点目は、予定を詰め込むことが先行しており、時間の使い方にメリハリがないということです。これは時間を有効活用するための工夫不足、とも言い換えられます。例えば、授業を重要視している人であれば、授業の合間に予習復習をしたりと、大切にしている時間に向けて、準備や振り返りの時間が必須のはずです。しかし、上記の予定では、時間に対して予定を詰め込むだけで、どの活動を一番大切にしているかが分かりませんし、その上、準備や振り返りの時間は設けられておらず、時間を消費しているに過ぎません。時間を使うからには、目的意識を持ち、その時間の価値を最大化するために工夫(準備と振り返り)をする。そんな目的意識と工夫が重要なのではないでしょうか。

 そして、これらの問題点に薄々気づきながらも、私がようやく自分の時間の使い方と向き合うことが出来たのは、大学2年生になったばかりの年。コロナ禍が始まり、自粛期間で予定が全て消え、時間の使い方を見直すきっかけを得た時でした。

 コロナ禍で半ば強制的に余裕があるスケジュールに変化し、今まで休息が足りていなかったという自分の「身体の声」に耳を傾けられるようになりました。また、自分は本当はどの活動を一番大切にしたいのか、どんな目的を持って時間を使いたいのか立ち止まって考えることで、自分の「心の声」を聴くことも出来るようになったのです。

 その上で、本来はコロナ禍といった外的要因に左右されずに、自分自身で自分の時間の使い方を見直すきっかけを作ることも大切です。そのため今となっては、月末に自分の時間の使い方を振り返ったり、時間の使い方が上手な人から学び、自分の時間の使い方を客観視する機会を意識的に設けています。

 どうしてもみなさんも日々の生活に追われ、忙しい日々を送っている時こそ、自分の時間の使い方を蔑ろにしてしまう瞬間があると思います。だからこそ

身体が無理をしていないのか”という「身体の声」と
”自分は本当はどんな時間の使い方をしたいのか”という「心の声」に意識的に耳を傾けること

が重要であり、そして「身体の声」と「心の声」に耳を傾けるきっかけを自ら作ること。それが時間を豊かに使うために不可欠だと思うのです。

組織の中で"自"他の時間を大切にする

 先ほどは個人視点で、自分の時間を大切にするために重要なことについてお話ししました。ここからは、組織や相手を意識した視点で、相手だけでなく自分の時間を大切にする方法について、私の失敗経験を基にお話ししたいと思います。

責任感が空回りし、自分の時間を犠牲にした経験

 同じく大学1年生の秋。私は所属していたボランティア団体のあるプロジェクトで、初めてプロジェクト幹部のような役職に就きました。今までメンバーとしての活動経験しかなかった当時の私は、自分の責任を全うしなければいけないという強い責任感に駆られていました。

 しかし、慣れない幹部の仕事は大変で、かつプロジェクト内で想定外のトラブルも起こり、思った通りにいかないことも多かったです。そんな時、私は遊びや休みに使うはずだった時間を、幹部の仕事の時間に充てることで、責任を全う出来ると思っていました。しかし、そうやって自分の時間を犠牲にしていくうちに、楽しいはずのプロジェクトの仕事は、「自分の遊びや休みの時間を奪うもの」に見えてきてしまったのです。

 結果的にも、体調を崩したり、プロジェクトに対するモチベーションが上がらなかったりと良いことはありませんでした。そんな私の様子を見かねた、プロジェクトのヘッドは

「厳しいことを言うようだけど、自分の時間を犠牲にすることが頑張っているとは言えないよ。本当に頑張っている人は、自分の時間もちゃんと大切に出来るように、試行錯誤して頑張ってる。自分の時間も大切にできない人が、他のメンバーの時間も大切にできるとは思えないこれから上級生になるんだから、まずは自分の時間を大切にしてくれないと後輩の教育は任せられないよ」

 という言葉をかけてくれました。

 この言葉を聞いて私は初めて、「自分の時間を犠牲にしてこそ、周囲への貢献できる」という自身の考えは間違いだと気がつきました。そしてその後、自分の時間を犠牲にしないためのスケジュール管理や時間の使い方を自分なりに試行錯誤していくうちに、プロジェクトの仕事が楽しく進むようになっていったのです。

 また、自分の時間は、仕事の質も向上させる可能性もあると思います。実際、リラックスして身体を休めながら自分の頭を整理したり、親しい友人と腹を割って話す時間を設けることで、焦りや不安ではなく、前向きなモチベーションで仕事や組織活動に向き合えるようになりました。自分の「身体の声」と「心の声」を聴く自分の時間を大切にしてこそ、相手や組織との人が関わる時間の貴重さや、その楽しさを改めて知るきっかけにもなると思うのです。

 そして、上記の経験を基に、私は以下の2つのことを意識して組織活動と自分の時間の両立を心がけるようになりました。それは

  • 相手の時間も、自分の時間も大切にするために、知恵を働かせること
  • 自分の時間を適度に作り、相手との時間の質を上げていくこと

の2点です。相手の時間を大切にするためには、まずは自分の時間を大切に上手に扱えるようにする。それが案外、相手の時間を大切にするための近道なのではないでしょうか。

自分の時間と相手の時間の関係性

 とは言っても、自分の時間を大切にし過ぎるあまり、相手や組織活動の時間を大切にしていない人になってしまうのではないか。そんな危機意識を抱く人もいるのではないでしょうか。そこで、ここからは、自分の時間と相手の時間の関係性についてお話ししたいと思います。

 そこで組織の中で見受けられる、自分の時間を犠牲にしやすい人の特徴から、周囲の人や組織にどんな影響を与えるのかを考えてみましょう。

特徴①:仕事を引き受け過ぎる、抱え込み過ぎる

 このパターンは結構、見たことある方も多いのではないでしょうか。仕事を引き受け過ぎてしまい、自分のキャパシティー以上のタスクを抱え込んでいる状態です。これは、周囲のメンバーから見ると「重要な仕事を任せにくい人」になり得ると思います。いつも仕事を抱え込んでいて、これ以上頼んでしまうと逆に仕事に遅れが生じる可能性が高いからです。長期的な視点で見れば、周囲のメンバーは仕事を抱え込みがちな人のフォローやマネジメントが必要になってきてしまいます。その意味で、仕事を引き受けすぎることは、結果的には周囲の時間を奪うことになる可能性もあるでしょう。

 また、仕事を引き受け過ぎることは、「自分が優先して取り組むべき仕事が何か」を判断する基準を持っていないことも意味します。そのため、本来であれば他のメンバーが行った方がメンバーの成長に繋がるような仕事も引き受けてしまっていたりと、メンバーや組織としての成長を止めてしまっているかもしれません。これは相手の時間を豊かにする可能性を奪ってしまっているとも考えられるでしょう。

 そしてこれらの対策として、組織視点で自身の責任を考え、どんな仕事に何の責任を果たすために取り組むべきなのかの優先順位をつけるべきだと思います。自身の責任を全うするために、YESマンにならない気概が大切なのです。

特徴②:常にかつかつな、余裕のないスケジュール

 このパターンは、上記の仕事を引き受けすぎるYESマンでなくても、見られる傾向だと思います。自身の責任や仕事の優先順位も整理されている。けれど、スケジュールに余裕がなく常にかつかつで、トラブルが起きたら大変なことになりそうなスケジュールを立てているパターンです。

 この場合、ご察しの通り、想定外のトラブルが起きると、機能不全に陥る可能性が高いです。そのため、その人だけではトラブルには対処できず、上司や管理者がトラブル対処に当たらざるを得なくなえくなり、彼らの時間を使ってしまうことにもつながります。

 また、これは部下視点で見ると、「質問しにくい先輩」にもなるでしょう。分からないことや疑問点が出てきたけれど、あの先輩、いつもかつかつで忙しそうだから、聞くに聞けない。部下にそう思わせてしまう可能性は高いです。そして、そんな状況を見かねた他の先輩たちが、本来教育係ではないけれど、その部下のフォローに回ってくれる。そんな風にして知らず知らずのうちに、周囲が割くべきではなかったことに時間を割かせる結果を招く可能性は大いにあります。

 その意味で、予定に余裕(バッファ)を持たせることは、自分の責任をどんな想定外においても対応するため、そして周囲のメンバーのために、不可欠なのです。

 そしてこれらの2つの特徴と相手との時間の関係性を考えると、自分の時間と思っていることでも、それらは組織や周囲のメンバーに影響を及ぼすと考えられます。それは、組織に属している以上、自分の時間は自己完結しないからです。だからこそ、相手の時間だけでなく、自分の時間も豊かにしてこそ、組織を進化させることができる。そんな「自他の時間を大切することが組織でどんな意味を持つか」といった、俯瞰的な視点で自他の時間の価値を大切にすることが重要なのです。

おわりに

 私は現在、en-courageというキャリア支援団体でコアサービスの部署責任者として活動しています。その中では期日に追われ、時間が惜しく、自分の時間を犠牲にして組織活動の時間を捻出したくなる瞬間も正直、多々あります。

 ですが、しっかり自分の時間も大切にしながら、顧客や組織・メンバーの時間を大切にするようにすると、胸を張って楽しく活動出来ていると言えている気がします。メンバーに「ちゃんと自分の時間も大切に出来ている?」そう聞かれたとき、自信を持って「自分の時間も仕事の時間もどちらも大切に出来ているよ」。そう答えられるような自他の時間を大切に出来るリーダーを目指して、日々、知恵を働かせながら有限な時間を上手に使っていきたいです

この記事の著者/編集者

本田花   

早稲田大学文化構想学部卒。大学3年時までは、中高生の留学支援団体であるAFS日本協会神奈川支部の学生代表として、コロナ禍の組織再生に奮闘。大学4年時には、日本最大のキャリア支援団体en-courage早稲田支部において、面談部署の責任者としてキャリア面談サービスの設計・研修体制の改善に挑戦。
上記の経験における多くの人や価値観との出会いを糧に、社会人としては、総合コンサルティングファームにて「他者に還元出来る知見や経験に溢れた利他的なコンサルタントになる」ことを志している。

するとコメントすることができます。

新着コメント

  • 谷 風花

    2022年09月23日

    この記事を読んで、予定を詰め込みすぎることは、時間の有効な使い方を考えることを放棄している状態であると気付かされました。他者に余裕を持って接し、対応力を身につけるためにも、工夫を忘れずに自他の時間をコントロールできる存在でありたいと思いました。

  • 藤井裕己

    2022年09月30日

    自分の時間を犠牲にしてプロジェクトを回すような体制は、長続きしないと感じました。

    私も周囲のためと思って自分の時間を蔑ろにしてしまった経験があります。案の定そのプロジェクトは上手くいかず、プロジェクトリーダーとしての責任を果たすことができませんでした。

    自分自身のためにも、組織のためにも、自分自身の時間を大切にする。
    そのために最善の努力をし続けていきたいと思います。

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