無形サービスの価値を顧客に自然と伝えるには?
2023.04.18
無形サービスを購入する際の判断基準
■今月の研修 サービス理論(基礎1)
皆さんは新しいサービスを選ぶとき、どういう基準で選びますか?形があるサービスだったら実際に見たり触ったりすることで購入するかどうかを決めることができると思います。しかし、形がないサービスの場合はどうでしょうか?この記事では無形サービスを新規ユーザーに使ってもらう方法を考えていきたいと思います。
無形サービスとは?
無形サービスは簡単に言うと文字通り、形がないサービスです。
例えば、家庭教師やコンサルティング業は形がないものを提供しているため、無形サービスに当てはまります。
無形サービスには、「無形性」「非分離性」「変動性」「即時性」という4つの特徴があります。
- 無形性:サービスは形がなく、目に見えない。そのため、購入前に見たり、触れたり、味わったりするができない
- 非分離性:サービスの生産・消費が同時である。そのため、生産後の品質管理ができない
- 変動性:サービスは提供者、時間、場所によって大きく左右される。そのため、顧客が特定の提供者を好むと提供者の保有する時間が供給を制約
- 即時性:サービスは在庫を持てない。そのため提供できるサービス量に限界がある
この中でも今回の記事では「無形性」に焦点を当てるので、詳しく説明したいと思います。
上の説明でも書いた通り、無形サービスは形がないため、事前に試すことができません。そのため、サービスを使ってもらうためには品質判断の手がかりを提供し、管理しなければいけません。品質判断の手がかりには
- 量的手がかり
- 質的手がかり
の2種類の手がかりが挙げられます。
私は大学1,2年生の時に大学受験塾で講師をしていたのでそれを例に当てはめてみます。塾の授業は形がなく、無形サービスです。サービスを使ってもらうための品質判断の量的手がかりとして大学の合格者数等があげられます。実際に私が所属していた塾では、東大に〇人合格、早慶に〇人合格といったような形で量的手がかりを提供していました。質的手がかりとしては、わかりやすい授業、実力講師在籍などがあげられます。下の画像を見てください。
右と左どちらの塾の話を聞きに行きたいと思うでしょうか?右の人が多いと思います。極端な例かもしれませんが、左側はなにも判断材料を提供していないのに対し、右側では合格者数という量的手がかり、東大出身の実力講師がわかりやすく丁寧に教えてくれるという質的手がかりを提供しています。左側の説明を見ても何もわかりません。右側の説明を見れば
- 過去の実績
- どんな講師が教えてくれるのか
がわかるので、それをもとに判断することができます。量的手がかり、質的手がかりを消費者に提示することが、無形サービスを使ってもらうカギです。
上記の説明を踏まえて、今私が所属しているキャリア支援団体の活動について考えていきたいと思います。
1年生向けのキャリア支援面談
私は今キャリア支援団体の大学1年生向けのキャリア支援をしている部署に所属しています。今までは就活生(3年生)向けのサービスがメインでしたが、今年から新しく1年生向けのサービスを立ち上げました。そのサービスの中に面談サービスがあります。この面談サービスはメンバーと1年生が1対1で話し、少しでも将来のことを考えてもらうという趣旨のものです。面談の目的は「将来に向けてこれからどのように行動すればいいのかわかっている状態にする」ことでした。面談サービスは先に述べた4つの特徴に当てはまる「無形サービス」です。
「大学1年生からキャリアについて考え、人生でやりたい事やなりたい姿を設定できれば、より有意義な大学生活を送れる。加えて就活が終わった同じ大学の4年生と話せるのはいい機会だし、面談を申し込んでくれる人は多いのでは?」と思い、集客をしていました。しかし、思うように面談に申し込んでもらうことができませんでした。
- 大学1年生向けの面談サービスは前例がない
- サービスを受ける1年生側も何をするのかわからない部分があった
等の理由から申し込みが少なかったのだと思います。面談サービスを始めたのが今年からだったので、「納得して就活を終えた早稲田の4年生と面談できる」等の質的判断材料は提供していましたが、量的判断材料を提供することができませんでした。
無形サービスを受け入れてもらうためには
前半の説明でも書きましたが、無形サービスを受け入れてもらうためには、品質判断の手がかりを量的側面・質的側面の両面で提供する必要があります。1年生向けの面談でいえば、質的判断材料だけでなく、去年は〇人が申し込み、そのうち〇人が新しい行動を始められた・〇人が面談に満足したという量的判断材料があれば申し込んでくれる人数は確実に増えると思います。サービス開始1年目だったため、実績に基づいた品質判断の材料を提供することができませんでしたが、来期は今年行った約100人との面談の記録があるのでそれを品質判断の材料として提供し、サービスを拡大していってほしいと思っています。そのために、来期のメンバーに今期のナレッジや、どのような想いで活動していたかをしっかりと引き継ぎたいと思います。
これから研修を受ける人へ
今回の研修では無形サービスについて学びました。私は春から有形サービスを扱う会社に入社します。しかし、
- リーダー自身が無形サービスであること
- 有形サービスは無形サービスと組み合わせて提供されること
から今回の研修は非常に学びの多いものでした。
1点目に関しては、リーダーの存在自体が無形サービスとしてとらえることができるということです。これに関してはこちらの記事に詳しく書いてあるのでぜひ読んでみてください。
2点目に関しては、店舗での接客を思い浮かべるとわかりやすいと思います。家電量販店での接客を例に説明します。家電量販店で買い物をすると多くの場合定員の方が商品別のメリットデメリット、おすすめの商品はなにかを教えてくれます。この場合、家電自体は有形サービスですが、家電の特徴について教えてくれている接客は無形サービスであるといえます。
以上のように、有形サービスを扱う人でも、無形サービスの特徴から多くのことを学べます。無形サービスの特徴、無形サービスの主な決定要因をディスカッションを通して自分たちで学びを深めることができました。無形サービスを扱っている、扱う予定がある人だけでなく、リーダーを志す人全員にお勧めの研修です。
研修で学んだこと
- 無形サービスの4つの特徴。無形性・非分離性・変動性・即時性
- リーダー自身が無形サービスだということ
- 有形サービスは無形サービスと組み合わせて提供されること
小川勇 早稲田大学 政治経済学部