組織においてのマズローの欲求5段階説

今月の研修:コーチング理論(基礎1)

マズローの欲求5段階説について、聞いたことはあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?人間の欲求を5段階のピラミッド構造に表したものです。

今回の記事では、一般的に言われるマズローの欲求5段階から発展させて、組織においてのマズローの欲求5段階説を考えました。そして、それを活用したコーチングについても含め、私がリーダーを務める歯学部生プロジェクトを例に述べています。

組織内でのコーチングに今回の記事が参考になれば嬉しいです。

組織においてのマズローの欲求5段階説とは

まず一般的には、生存欲求とは、生きていくための本能的な欲求(食事・睡眠・排泄)のこと、安全欲求とは、身体的・経済的に安定した環境を求める欲求のことです。

私がリーダーを務める歯学部生プロジェクトのメンバーは、基本的には当たり前にこの二つの欲求は満たしているので、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求のいずれかの段階にいるといえるでしょう。

しかし、歯学部生プロジェクトという組織の中で、という限定的な状況で考えると、欲求段階の定義を捉え直して、もう少し細かく分類できるのではないかと考えました。

そこで、そのように捉え直すと、各欲求段階にいるメンバーはどういう状況であるかを以下に示します。

  • 生存欲求:プロジェクトに参加したからには取り組まないといけないという強迫観念で、プロジェクトに取り組んでいる。
  • 安全欲求:プロジェクトのメンバーに怒られないように、プロジェクトに取り組んでいる。
  • 社会的欲求:プロジェクトに所属することで、メンバーと関わることができる、歯科医院、歯科医師と関わることができるから、プロジェクトに取り組んでいる。
  • 承認欲求:プロジェクトのメンバー、プロジェクトに関わる人に認められたい、すごいと思われたいから、プロジェクトに取り組んでいる。
  • 自己実現欲求:プロジェクトのコンセプトを自分の将来と結びつけ、主体的にプロジェクトに取り組んでいる。

欲求段階に合わせてコーチングをする

プロジェクトに参加するメンバーには、自己実現欲求の段階にいてほしいという願いが私にはあります。しかし、相手の状況を考えず、いきなり「そうあるべきだから、それが求めていることだから」というように話しても、メンバーは自己実現欲求の段階にすんなりといくとは限らないでしょう。今メンバーがいる欲求段階に合わせて、それより上の欲求段階を視野に入れさせるように、コーチングする必要があります。

生存欲求の段階にいるメンバーには、プロジェクトへの参加は強制されるものではないということを示し、プロジェクトに参加する意義をメンバー自身が見つけられるように導く必要があるでしょう。

安全欲求の段階にいるメンバーには、「怒るのはなぜか」と考えさせましょう。怒るのは、相手の将来を考えて成長を促しているからこそでしょう。それがわかったときに、そのような怒ってくれるメンバーとの関わりに目が向くのか(社会的欲求)、そのメンバーに認められたいと思うのか(承認欲求)、自分の将来を考えるのか(自己実現欲求)で、次のアプローチが変わります。(それぞれ以下の文章で説明)

社会的欲求の段階にいるメンバーには、メンバーとの関わり、歯科医院、歯科医師との関わりの先に何があるのかを考えさせるコーチングが有効でしょう。「その人たちに認めてもらいたい」だと承認欲求へ、「将来のために」というのなら、将来自身がどうなりたいのかをモチベーションに結びつけられると、自己実現欲求へと、欲求段階を上げられます。

承認欲求の段階にいるメンバーには、「誰かに認められたら自分も満足なのか」というように問いかけるとよいのではないでしょうか。このように問いかけることで、相手が将来のための自分の成長にモチベーションをもてれば、自己実現欲求へと、欲求段階が上がります。

自己実現欲求の段階にいるメンバーは、その欲求が満たされるということを、遥か遠くの目標(例えば将来開業したとき)に設定していることがあります。そうすると欲求が満たされることがないことで、今のモチベーションが保てず、欲求段階を下げてしまう可能性があるでしょう。そうならないように、身近な目標(年間計画など)をモチベーションと結びつけるコーチングが有効になります。

これから研修を受ける方々へ         

今回の研修では、コーチングの理論を学ぶだけでなく、制限時間を決めて、コーチングが必要な状況を考え、ロールプレイをすることで、より実践的に学びました。

頭で理解しても、いざ決まった時間の中でそれを最大限に発揮し、相手が主体的に取り組めるように導くコーチングをするには、こうしたトレーニングが欠かせないと実感しました。

マズローの欲求5段階説について知っていた方もいらっしゃるでしょうが、それを日々の生活で考えて活用したことはありましたか?研修を通して、日々の生活で実践しトレーニングする大切さを実感してもらえたら嬉しいです。

研修で学んだこと

  • マグレガーのXY理論
  • マズローの欲求5段階
  • コーチングの領域(家庭環境、体調不良、モチベーション)
  • コーチングとは:目的・目標とモチベーションを結びつける・目標に向かって主体的に取り組めるよう導く
  • コーチングでなく、カウンセリングが必要なケースがある

この記事の著者/編集者

上野美叡   

歯科クリニック開業を目指す歯科大学生。
予防歯科の考え方を浸透させ、健康に長生きできる社会づくりをしたい。
学生のうちにできる準備はしたいと考えA&PROに参加。
歯科学生プロジェクトのリーダーを務める。

するとコメントすることができます。

新着コメント

最新記事・ニュース

more

そもそもプロジェクトとは何か。それを知ることによって、あなたが現在取り組んでいる活動をもっと豊かにすることができるはずです。プロジェクトの基本を学び、そのプロセスについて考えてみましょう。

大庭彩 上野美叡 2Picks

タスクには明確に優先順位が存在し、正しい優先順位でタスクに向き合うことが締め切りへの余裕につながります。緊急度と重要度のマトリックスを用いて改めてタスクへの優先順位をつけることを意識したいです。

大庭彩 1Picks

皆さんがリーダーを務める組織にはMVVやスローガンと言ったメンバー全員が認識している「共通目標」はありますか? そして、今その「共通目標」を何も見ずに口ずさむことができますか? もし、一度決めたことがある共通目標が形骸化してあまり浸透していない場合は私と同じ苦悩を経験するかもしれません。

大庭彩 1Picks

たとえ意見が対立しても、プロのコンサルタントやコーチは相手を導くことができる。 基礎1~3を通じて、科学的なメカニズムから築き上げた実践型コーチングについて、ロールプレイを中心に活用方法をトレーニングしていきます。 現場の活動と有機的に結びつける知恵と、今後のプロジェクトに活かす行動力。 これらを大切にするリーダーのための研修です。

たとえ意見が対立しても、プロのコンサルタントやコーチは相手を導くことができる。 基礎1と基礎2を通じて、科学的なメカニズムから築き上げた実践型コーチングについて、ロールプレイを中心に活用方法をトレーニングしていきます。 現場の活動と有機的に結びつける知恵と、今後のプロジェクトに活かす行動力。 これらを大切にするリーダーのための研修です。

「自分と仕事をしたいか」と思われているかどうかは他者の言動を大きく変化させます。相手方の時間を頂いているという認識があなたの評価を変えるでしょう。適切な準備を行うことで周囲と豊かな関係性を築きたい方に必見の記事です。

大庭彩 香山 渉 谷口 宗郁 3Picks

たとえ意見が対立しても、プロのコンサルタントやコーチは相手を導くことができる。 基礎1と基礎2を通じて、科学的なメカニズムから築き上げた実践型コーチングについて、ロールプレイを中心に活用方法をトレーニングしていきます。 現場の活動と有機的に結びつける知恵と、今後のプロジェクトに活かす行動力。 これらを大切にするリーダーのための研修です。

「周りの声を意識して思っていることを伝えられず、自分だけが辛い思いをしている...。」「それもあって、周りに対して愚痴が溜まっている...。」この悪循環を引き起こすコミュニケーションを、A&PROではPassive(受身的)なコミュニケーションと捉えます。そして悪循環を解決させるには、「Passive(受身的)」を「Assertive(自己主張的)」へ変容させていくことが重要です。

矢後慶樹 前田佳祐 大庭彩 3Picks