災害時にリーダーとして動けるようになる避難訓練のすゝめ
2020.11.16
今月の研修:災害時・緊急時の対応
はじめに
皆さんの多くが、小学生の頃に避難訓練を経験していると思います。あの頃、避難訓練に真面目に取り組んでいたでしょうか。隣の友達と喋ったり、早く終わらないかなと退屈していたり、このようにあまり真剣に取り組むことができなかった人もいると思います。
今回の研修では、地震が起きた時を想定してロールプレイをすることを通し、災害時・緊急時の対応について学びました。とても緊張感ある中で一人一人実践していったので、研修に参加した誰もが実際に地震が起きた際に、リーダーとしてその場の人を安全に避難させることができるようになったと思います。この記事では、研修内容を深く分析し、実際に災害が起きたときに動ける人になれるような避難訓練がしたいと思っている人に向けて作成しました。そのため、
①なぜ地震が起きた時を想定したのか
②地震を想定した際の訓練として、重要な点は何か
③なぜ実りのある(実際に地震が起こった際にリーダーとして動けるレベルにまで個々が到達できた)研修になったのか
について、書いていこうと思います。
場合分けと優先順位が重要
①なぜ地震が起きた時を想定したのか:地震はマニュアルを見る余裕がない、かつ他の災害に比べて私たちは地震にあう可能性が高いため
地震や火災、交通事故がおこった際に、マニュアルを見ながら行動する時間はあるでしょうか?いいえ、ありません。そのような時には、時間をむやみに消費する行為は命取りとなります。それゆえ、自分または他人の命を守るために瞬時に動くことが必要です。これらの自然災害や事故は発生時においてマニュアルを見る余裕がありません。一方で洪水や台風などの自然災害は、マニュアルを見る余裕があります。災害時・緊急時の対応の訓練をするにしても、このように大きく種類が分かれてくるので、まずは起こりうる災害や緊急事態がこの二つの場合(すなわち、マニュアルを見る余裕がある場合と無い場合)のどちらに含まれるのかを分けることが重要です。下の表は、研修で用いられた表です。
上の表からもわかるように、マニュアルを見る余裕があるか無いかは、緊急性により分けられます。緊急性の高い、マニュアルを見る余裕のないものの方が、より事前から想定し、準備しておく必要があります。
場合分けした上で、マニュアルを見る余裕のないものを全てやるのかというと、そういうわけにもいきません。時間は有限です。まずは起こる確率が高く、かつ被害が甚大なものに対しての訓練をすることが、最も効果的です。下の表は、今後30年以内にそれぞれの災害・事故・事件にあう確率を比較するために研修で用いられた表です。
上の表から、私たちは今後30年以内に大規模な地震にあう可能性が極めて高いと言えます。他の災害などに比べても地震にあう確率が圧倒的に高いので、地震に向けた対策をするのが最も効果的です。このような理由から、私たちは地震が起きた時を想定してロールプレイをしました。
私たちは、東京都千代田区の飯田橋にあるオフィスで研修をしています。この場所では、地滑りや河川の氾濫は起きる確率が低く、優先的に訓練をする必要がありません。しかし、地域によっては河川の氾濫などの地震以外の災害が起こりやすい地域もあると思います。そのような地域では、地震の避難訓練だけをするのではなく、地域の特性に合わせた避難訓練をする必要があります。
地震対策5行動
②地震を想定した際の訓練として、重要な点は何か:地震対策5行動の項目全て(特に1~4)
地震を想定して避難訓練をするにあたって、リーダーとして周囲の人々を安全に避難させるために特に重要な行動が5つ挙げられます。研修ではそれを「地震対策5行動」とよび、私たちはこれを頭に入れた上で塾の教室であることを想定してロールプレイに取り組みました。地震対策5行動は、以下の通りです。
- 安全確保、出口確保
生徒に机の下に隠れるように指示。この際、「私がリーダーとして、指示を出します」のように発言して現場責任者となるか、または他の人が現場責任者となるかを決める。
〜地震がおさまる〜 - 安全確認
焦らず大きな声で安全かどうかを問い、全員の安全確認をします。大きな頼りがいのある声を聞くことで、人々は安心します。 - 情報収集・避難準備
インターネットなどを用いて地震の情報を調べるとともに、必要があれば屋外に避難する準備を始めます。この際に、自分達やスタッフが何をしているかを生徒に伝えると、生徒達は安心して準備することができます。
〜建物倒壊・近隣火災の恐れありの場合〜 - 一次避難(ひらけた屋外へ)、点呼、(行方不明者がいれば捜索班の設置)
- 二次避難(避難所などへ)、点呼、役割分担・マニュアル確認
上の1から5のうち、地震が起きた際に緊急性が高く、マニュアルなしで責任を持って行動しなければならないものは1から4です。そのため、今回の研修では1から4についての訓練をしました。
本気で訓練に取り組めた秘訣
③なぜ実りのある(実際に地震が起こった際にリーダーとして動けるレベルにまで個々が到達できた)研修になったのか:参加者のそれぞれが、地震が起きた時を本気で想定し責任を持って行動したから
身を入れて訓練にのぞむためには、なぜ訓練をするのかを理解することがまず大事です。その上で、災害時・緊急時には自分の命を守るだけでなく、周囲の人々の命を守らないといけないと自覚し、自分が「慣れていない」や「想定できていなかった」ことが理由で人命を奪ってしまうわけにはいけないと考えることが、研修を受けている人達を本気にさせた要因だと思います。また、研修参加者が自分を高みに持っていきたいという強い向上心の持ち主であることも要因の一つかもしれません。
これから研修を受ける方々へ
今回の研修では、災害時・緊急時の対応について、地震が発生しそれに伴い火災が発生したという想定のロールプレイを通し、やるべき行動を学んでいきました。自分が生徒達を守るために地震が起こった瞬間にどのような声かけをし、揺れがおさまった後にどのような指示を出せば良いのかを考えました。また緊張感のある中で考えたことを実践してみた経験は、小学生のころ行っていた避難訓練の経験と比べ物にならないほどためになりました。私自身もこの研修で身につけたことを活かし、もしこの先災害が起こってしまった際には積極的にリーダーとして動こうと思います。この研修を受けることのメリットは、真剣になって本番を想定したロールプレイに取り組むことを通して、災害時・緊急時にも慌てず行動し、安全に避難場所まで連れて行けるような存在になれることです。読者の皆さんもぜひ参加してみてください。
研修で学んだこと
- 優先順位をつけてトレーニングする
- 地震対策5行動
- 指示を待つのではなく、自分からリーダーになるまたはリーダーの補助をできるよう動く
- 緊急時にリーダーとして指示を出しているとき、スタッフ側が何をしているか生徒や顧客に伝えることが大切
- AEDの場所を予め調べておく
川瀬 響